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遺言を書いておいた方が良い3つの理由

遺言がないと相続の名義変更はどうなるの?

土地、建物、マンションなど不動産の場合

▷遺言があるとき

原則は遺言の内容の通りに手続きを進めます。【指定相続】

▷遺言がないとき

法が定める基準で分けます。【法定相続】

でも、具体的にはどうするの?

法律で決めているのはこれだけです。

法律で決めているのはこれだけ

☑ 誰が相続人か
☑ 相続できる割合はどれだけか

まずは、亡くなった方の生まれてから亡くなるまでの全ての戸籍を集めて相続人を調べます。※配偶者・子以外が相続人になる場合は調べる戸籍は増えます

次に権利証・登記事項証明書等で亡くなった方の不動産を探します。

☑権利証
☑登記事項証明書
☑納税通知書
☑名寄帳

次に誰が何を受け取るのかを相続人全員で話し合って合意をする必要があります。この話し合いのことを遺産分割協議といいます。

もし話し合いがまとまらなければ…遺産分割調停へ。

遺言がない場合の名義変更は順序立てて進めていくことになります。

  1. 相続人の確定
  2. 遺産の確定
  3. 遺産分割手続き
  4. 名義変更

遺言がないと、相続人全員で遺産分割協議をする必要があるので遺言がある場合に比べて手間と時間がかかること傾向があります。中には遺産分けの話し合いが非常に困難になるケースもあります。

次に相続人全員を把握する方法や遺産分けの話し合いではどんなことをするのかについて解説します。ここを読んでもらうと多くの方が遺言を書いておいた方がよいと思われるかもしれません。

遺言を書いておいた方が良い理由①

遺言が【ない】と戸籍を集めて相続人全員を調べる必要がある

遺産分割協議は相続人全員で行う必要がありますが、相続人全員を把握するにはどうすればいいのでしょうか?

誰が相続人になるのかは法律で次のように定められています。この順番で相続人になります。配偶者は他の相続人がいるかいないかに関わらず必ず相続人になります。

  • 第1順位|子
  • 第2順位|直系尊属
  • 第3順位|兄弟姉妹
相続人の順位

誰が相続人になるのか?は、戸籍を集めて該当する人がいるかいないかを順を追って確認していく必要があります。相続人を見落とさないために注意しなければいけないポイントをまとめました。

①まずは配偶者を確認します。配偶者がいれば配偶者は必ず相続人になります。

②次に確認するのは子供です。

  • 前婚での子供
  • 認知をした子供
  • 養子

すべての子供が相続人になるので見落とさないように注意しなければいけません。 仮に被相続人(亡くなった方)よりも先に亡くなった子供がいる場合、その子供(孫)が相続人になります。

③子供、孫など直系卑属がいなければ、次に相続人になるのは直系尊属なので、両親(両親が亡くなっていれば祖父、祖母)が相続人になります。

仮に養親(普通養子縁組)がいれば、血のつながりのある親と養親ともに相続人になります。高齢で亡くなるほど直系尊属が相続人になる可能性は低くなります。

両親が亡くなっていれば父方母方双方の祖父母というようにさかのぼって戸籍を集めていきます。さかのぼるほどに確実に古い戸籍になるので内容を読み解くことが難しくなります。

④被相続人より先に直系尊属が全員亡くなっていれば兄弟姉妹が相続人になります。

被相続人よりも先に兄弟姉妹が亡くなっている場合はその方の子供(甥姪)が相続人になりますが、甥姪が先に亡くなっていても兄弟姉妹の孫は相続人にはなりません。

相続人全員を把握するには、①→④と順を追って戸籍を集めて確認する必要があります。

古い戸籍を集めないといけない理由

被相続人(亡くなった人)の子供を漏れなく把握するには、被相続人の生まれてから亡くなるまでのすべての戸籍を集める必要があります。

なぜかというと・・・被相続人の最後(現在)の戸籍に子供全員が載っていればいいのですが、そうでないことが多いので生まれた時から亡くなるまでのすべての戸籍を確認しなければ、被相続人の子供が「何人」で「誰なのか」ということがわからないという戸籍の事情があるからです。

文章だけでは理解しにくい部分なのでA夫さんの事例で具体的に見ていきましょう。亡くなったA夫さんには奥さんと二人の子供がいるとします。

  • 奥さん|B恵さん
  • 長女|C子さん
  • 次女|D美さん

【現在の戸籍】

まず、現在の戸籍を見るとA夫さんの他には奥さんのB恵さんしか載っておらず、C子さん、D美さんは載っていません。

現在の戸籍

【1つ前の戸籍】

次に1つ前の戸籍を取ってみましょう。この戸籍には次女のD美さんは載っていますが、長女のC子さんは載っていません。

1つ前の戸籍

【2つ前の戸籍】

2つ前の戸籍を取ると、ここではじめてC子さんも載っていました。

2つ前の戸籍

A夫さんの事例では2つの理由で新しい戸籍が作られていました。

  • 戸籍のコンピュータ化|1つ前→現在の戸籍
  • 転籍|2つ前→1つ前の戸籍

新しい戸籍が作られる時に既に亡くなっていたり、結婚で除籍されている方は新しい戸籍には記載されません。そのため結婚でA夫さんの戸籍から抜けているC子さん、D美さんについては現在の戸籍には記載されていません。

こうした戸籍の事情があるため被相続人の子供を漏れなく把握するためには、被相続人の生まれてから亡くなるまでのすべての戸籍を集める必要があります。

A夫さんとB恵さんは実は再婚で、A夫さんには前の奥さんとの間に子供がいたといったことは、亡くなって戸籍を確認してはじめてわかるこもが意外と多いものです。

被相続人よりも先に亡くなった子供がいる場合、その子供の子供(孫)についても同じように古い戸籍を集めて漏れなく把握する必要がありますし、相続人が兄弟姉妹の場合はさらに集める戸籍の数は増えてしまいます。

というわけで、相続人全員を把握するために大量の戸籍を集めなければいけない場合、遺言を作ることで集める戸籍を減らせるようなケースは遺言を作ることは1つの利点になります。

コラム|戸籍から見えてくる真実

古い戸籍から自分のルーツを調べたり、戸籍をもとに自分の家の家系図を作ることがちょっとしたブームになっていると、なにかの記事で読みました。

仕事柄、戸籍を見る機会が多いわりに自分の戸籍はあまり見たことがなったことや、戸籍の見方のスキルアップも兼ねて(古い戸籍ほど分かりにくいんです)、司法書士になりたての頃に父方・母方ともに古い戸籍を遡れるだけ遡って集めて家系図を作ったことがあります。

戸籍等は本籍地のある市区町村に請求します。戸籍の本籍地がすべて山形県内だったので大阪から郵送で請求しました。古い戸籍は廃棄されていることもありますが、請求してみないとあるのかどうかの回答がもらえません。

請求した結果「ありませんでした」という回答だけで郵送費を無駄にしたこともあります。。

そして、根気よく集めた成果がこれです。費用は送料込みでざっと16,000円!

集めれるだけ集めた親族の戸籍

クリップなしで厳密に測っても余裕で1センチ以上の厚さでした。一番古い戸籍には文政二年生まれ、天保十年生まれなんていうご先祖様も載っていました。文政は僕が尊敬する上杉 鷹山公が生きていた時代。天保は・・・天保の大飢饉しか思いつきません。。

名前しか分からない人も含めれば7代前までの家系図が作れました。そして完成した家系図を家族で見ているといろいろな発見がありました。

  • 母も全員に会ったことがなかったので、本当に10人兄弟かどうか怪しかった母方の祖父が10人兄弟の末っ子だったことがはっきりしました
  • 戦死したと聞いていた父方の祖母の兄弟は、中華民国湖南省とソ連カラカンダ州で亡くなったことがわかりました
  • 父方の曾祖母は兄弟と似ていなかったという話になり、戸籍を見ると他の兄弟とは血が繋がっていないことがわかって妙に納得しました

場合によっては、知りたくないことまでわかってしまうのが戸籍です。

兄弟姉妹が相続人になるケースでは集めなければいけない戸籍等の数が増えるのでこの画像以上の量になる可能性もあります。戸籍の数が増えればそれを見るのもひと苦労なので10人兄弟なんて強烈です。

沢山の兄弟姉妹が相続人になる方は、それだけで遺言を準備しておく理由になります。

遺言を書いておいた方が良い理由②

遺言が【ない】と遺産を調べる必要がある

ひとくちに遺産といってもさまざまなものがあります。現金や預貯金、不動産はもちろん、株式などの有価証券、被相続人(亡くなった方)が債権者になっている貸付金などの債権、貴金属や骨董品などの貴重な動産などお持ちの方もいるでしょう。

遺言がなければ、遺産を見落とさないように相続人が調査をする必要があります。

遺言がある場合、相続人は遺産は漏れなく記載されているだろうという前提で遺言を見るので、遺言を作成する場合は遺産の漏れがないように正確に記載する必要があります。

相続事件簿|忘れられた不動産 相続人は…〇人

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ある夏の日…。

Aさんの相続手続きがそのままになっていたことに親族が気づきます。

独身で子供がいなかったAさんの相続人は兄弟姉妹。

親族が気づいたのはAさんが亡くなって58年後。

いったい相続人は何人に増えているのか?

このままにしておくことはできないと親族が立ち上がりました。

  • 戸籍を調べるとAさんの相続人は60人
  • 集めた戸籍は200通以上

前出の戸籍の画像と見比べてもらえば量の違いは一目瞭然です。

58年の間に相続人は親族以外にも広がっていて連絡を取って遺産分割協議をまとめるのは相当大変だったようです。

▷まとめ

相続手続きをしないまま長い年月が経つと解決することが非常に難しくなります。

  • ☑遺産の見落としに気を付けましょう
  • ☑兄弟姉妹が相続人の場合はできるだけ早めに

遺産の見落しが大変な手間になることがあると覚えておいてもらえれば幸いです。

遺言を書いておいた方が良い理由③

遺言が【ない】と遺産分けの話し合いをまとめる必要がある

遺言がなければ、相続人全員で誰が何を受け取るのかについて協議をし、合意をする必要があります。この話し合いを遺産分割協議といいます。

特に問題なく話し合いがまとまるご家庭がほとんどだと思いますが、相続争いが増加していて、争う家族で「争族(そうぞく)」という言葉を聞くようになりました。

遺産分割協議は相続人それぞれが自己主張をし出すと収拾がつかなくなるおそれがあります。さらに相続人だけではなく、その配偶者や親戚など周りが口をはさんでくることも遺産分割協議が難航する原因となっています。

そして、争族の背景にあるのは遺産分割協議がまとまりにくい事情があるから揉めるわけです。

コラム|一般家庭ほど相続争いが増えている!?

「相続争い 一般家庭ほど」という見出しで日経新聞に司法統計の記事が出ていました。

5千万円以下の遺産をめぐる相続争いが増加している。今年の1~9月に解決した相続争いのうち遺産5千万円以下のケースは全体の約8割を占め、比率は過去10年間で5ポイント高まった。年間の件数も10年間で5割増え、件数がほぼ横ばいの遺産5千万円超とは対照的だ。

日経新聞

一般家庭ほどどうなのか?というと、一般家庭ほど相続争いが増えているということのようです。

理由として考えられるのは、相続がメディアで取り上げられる機会が増えたことで相続する側の権利意識が高まったことや財産が少ない人ほど遺言や生前贈与といった相続対策をしていないことが背景にあると記事はまとめていました。

データを見ると遺産5千万円以下のケースが相続争いの約8割を占めていますが、そもそも遺産5千万円以下のケースは母数が多いと思うので、相続争いの起こる確率は遺産5千万円超と差があるのかはわかりません。

ただし、「うちは財産が少ないから相続争いなんて関係ないよ」と相続対策(遺言や生前贈与)をしておかないと、母数が多いだけに相続争いがますます増えるのは簡単に想像できます。

遺産分けの話し合いがすんなりとまとまらないのには、それなりの事情があります。

  • 遺産がわけにくい
  • 相続人の人間関係が複雑
  • 既に不公平感が生まれている etc

亡くなった方が資産家で分け合う遺産が多ければ、平等に遺産を分けられなくても各相続人がそれなりの財産を手に入れることができますが、主な遺産が自宅だけという場合は少しの不平等であっても遺産分割協議をまとめることは難しいのかもしれません。

遺産が現金だけで分けやすくても相続人間の関係性が薄いと話し合いが難航することがあります。そもそも話し合いをすること自体が難しいケースもあります。またこれまでの不公平感を相続を機に解消したいという思惑が相続人にある場合も話し合いをまとめるのは難しいでしょう。

相続事件簿|家を売らないと相続分が払えない

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【長男Aさん】

私たち夫婦は、数年前から父名義の家で両親と同居していました。先日、父が亡くなりましたが、私は母の面倒を見ながら今後もこの家に住むつもりでした。

ところが…

父の葬儀が終わってしばらくして、弟が自分の取り分(法定相続分の4分の1)を強硬に要求してきました。

弟が法定相続分を主張

今後も母と私はこの家で暮らしていきたいと考えていますが、父の遺産は自宅だけなので、弟へ相続分を支払うには自宅を売却するしか手はなさそうです…。

どうしたらいいのでしょうか…。

ポイント

自宅等の不動産を一部の相続人が受け取ることは、現金など他に同じような価値の財産がなければ他の相続人は簡単には納得しないでしょう。

不動産を共有するという分け方もありますが、複数人で所有しているといざ売却する時は全員が協力しなければできません。共有者に相続が発生するとさらに相続人が増えてしまうという問題もあります。

お母さんに配偶者居住権が成立する可能性があります。その場合はお母さんが自宅の持ち分を取得しなくても自宅に住み続けることができます。

「配偶者居住権」とは、夫婦の一方が亡くなった場合に、一定の要件を充たすときに残された配偶者が亡くなった人が所有していた建物に亡くなるまで又は一定の期間、無償で住み続けることができる権利です。

配偶者居住権とは?

まとめ

遺産が現金なら簡単に均等に分けることができまが、自宅等の不動産を均等に分けようと思えば、自宅を売却して得た現金を分けない限りは難しく、まして相続人の中の誰かが自宅で暮らしている場合は、売却することが難しくなります。兄弟に相続分を払うために自宅を売却しなければいけないようなことも考えられます。

遺産が分けにくい不動産の場合、「誰に相続させたいのか」を遺言で明確にしておくことが残された家族への思いやりになります。子供には遺留分があるため、遺産が自宅のみであれば、完全には遺言のとおりにならないこともありますが、故人の意思を明確に示しておくことで、相続人が遺産の分け方を納得することにつながります。

不公平なく均等に分けられなくても、相続人が納得できる理由があれば大切なご家族がもめずに済む可能性があるということです。

相続事件簿|争族の第2ラウンドは恐ろしい

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お父さんの相続で長男Aさん夫婦にいいようにやられて納得出来なかった二男Bさん。

数年後・・・

長男Aさんが遺言を残さずに亡くなります。子供がいない長男Aさんの相続人は妻と二男Bさんと三男Cさん。

予想していなかった展開に、お父さんの相続で取られた遺産を取り戻すチャンス到来!
とBさんは喜んで・・・。

争族の第2ラウンドは裁判に発展してヒートアップ⤴

兄弟の仲は修復不能になったとBさんの奥さんが嘆いていました。

遺言を書いておかなかった長男Aさんが悪いのか?

それとも

運命のいたずらか?

ちなみに長男Aさんの奥さんは御年90歳。遺産分割協議がまとまる前に長男の奥さんが亡くなれば、奥さんの相続人である親族も話し合いのメンバーに加わることになります。話し合いがまとまるのはいったいいつになるのか?なんとも恐ろしい話です。

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司法書士・行政書士 伊藤 薫

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