遺産分割協議がまとまり、誰がどの遺産を受け取るのかが決まれば、不動産は名義変更(相続登記)、預貯金なら解約(払い戻し)のように遺産分割協議書に基づき相続手続きを行います。
目次
遺産分割協議後の手続き
遺産分割後の手続きはどうするの?-不動産の場合-
不動産の名義変更は法務局で行います。
土地、建物、マンションの所在地によって法務局の管轄が決まっていて、管轄の法務局以外では受け付けてもらえません。大阪府の場合は11の法務局があります。
名義変更の方法
名義変更の方法は法務局の窓口で行う以外に、郵送やオンラインで申請することもできます。自分でされる方は、法務局の窓口で申請することが多いと思います。
不動産の名義変更に必要となる書類等
不動産の名義変更(相続登記)に必要になる書類はこちらが一般的です。
- 登記申請書
- 被相続人(亡くなった方)の生まれた時から亡くなるまでの戸籍・除籍謄本等
- 相続人全員の戸籍謄本
- 相続人の住民票の写し
- 遺産分割協議書および印鑑証明書
- 固定資産税の評価証明書
- 収入印紙(登録免許税) etc.
遺言がない場合 | 遺言がある場合 | |
登記申請書 | 〇 | 〇 |
被相続人の生まれてから 亡くなるまでの戸籍 | 〇 注1) | 死亡の記載のある 戸籍のみで可 |
相続人全員の戸籍 | 〇 注1) | 不動産を取得 した人のみ |
被相続人の住民票除票 | 〇 | 〇 |
不動産を取得した人の住民票 | 〇 | 〇 |
遺産分割協議書 | 〇 | - |
相続人全員の印鑑登録証明書 | 〇 | - |
遺言 | - | 〇 |
評価証明書 注2) | 〇 | 〇 |
注1)法定相続情報一覧図でも可
注2)固定資産税・都市計画税の納税通知書でも可
名義変更にかかる費用
登録免許税を納付する必要があります。
通常は固定資産課税台帳の価格の0.4%です(特例もあります)。
例えば、名義変更をする不動産の固定資産課税台帳の価格(評価額)が1,000万円の場合は4万円になります。
窓口で申請する場合、登録免許税は収入印紙で納めます。
名義変更にかかる時間
法務局毎に公式サイトで登記完了予定日を公開しています。法務局の混み具合によりますが、2週間程度を目安にしておかれるとよいと思います。
あくまでも予定日なので、書類が足りないなどの不備があれば完了は遅れます。
名義変更が完了すると
登記完了証と登記識別情報通知が発行されます。登記識別情報通知は1つの不動産に対して所有者毎に1枚発行されるいわゆる権利証です。現在は袋綴じのような折り込み方式です。
登記識別情報通知には「登記の目的」「登記名義人」が記載されていますが、被相続人、相続した日、持分は記載されていません。
法務局で全部事項証明書(いわゆる登記簿)を取得して、登記の内容を確認しましょう。
まとめ
不動産の名義変更の方法の概要を解説しました。
自分で名義変更をしてみようと考えている方は法務局の公式サイトの「登記手続案内」というページが参考になります。 リンク先では司法書士会による相談会の情報も紹介されているので、ぜひご活用ください。
遺産分割後の手続きはどうするの?-預貯金の場合-
預貯金の相続手続き(解約)は各金融機関で行います。
店頭で手続きができるところもありますが、店頭で手続きをするのに事前に予約が必要な金融機関があるのでご確認ください。
解約手続きの方法
多くの金融機関には相続専門の部署があるので、金融機関の窓口では受付のみ、もしくは書類の原本確認まで行い、後は郵送で手続きをすることが多いです。
戸籍謄本や遺産分割協議書と印鑑登録証明書が1セットしかなく、郵送を避けたい場合は、窓口でコピーを取ってもらってから手続きを進めるとスムーズです。
預貯金の解約手続きに必要となる書類等
一般的に必要になる書類です。詳細は口座のある金融機関にご確認ください。
・各金融機関所定の依頼書
・被相続人(亡くなった方)の生まれた
時から亡くなるまでの戸籍・除籍謄本等
・相続人全員の戸籍謄本
・遺産分割協議書および印鑑証明書
・通帳・印鑑 etc.
※依頼書は相続届、相続関係届等、金融機関によって名称が異なります。
解約手続きにかかる費用
解約した預金は指定した口座に振り込まれるので、その際の振込手数料がかかります。振込先が同じ金融機関であれば振込手数料無料の場合が多いです。
ゆうちょ銀行は、ゆうちょの口座に振り込む、もしくは預金払戻証書を受け取って、窓口で現金で受け取ることになります。預金払戻証書の場合は、振込手数料はかかりません。
解約手続きにかかる時間
金融機関によってまちまちです。最短で5日で振込みが完了することもあれば、1ヶ月くらいかかることもあります。
多くは2週間程度で振込みが完了する印象です。
これは書類が全て揃っていた場合の日数なので、郵送した書類に不足があれば更に時間がかかるでしょう。
解約手続きが完了すると
手続きが完了すると、完了のお知らせが郵送されます。利息計算書や振込依頼書が同封されていることが多いです。
書類の郵送と並行して、依頼書で指定した口座に振り込まれているので、振込内容を確認しましょう。
ネット銀行の場合
ネット銀行の場合はインターネットで相続手続きの受付をすると、後日、郵送で案内が送られてくるという流れになります。
中には受付はネットからではなく、こちらから電話をすると、後日担当部署から電話がかかって来て手続きをスタートするところもあります。
まとめ
預貯金の相続手続き(解約)の方法の概要を解説しました。
依頼書の様式は金融機関毎に異なりますが、依頼書で預金を受け取る相続人を指定することができます。
自分で解約手続きをしようと考えている方は、遺産分割協議書を作らずに各金融機関の依頼書を活用する方法もあります。
遺産分割後の手続きはどうするの?-上場株式の場合-
相続した株式がいわゆる株式市場で売買されている「上場株式」なのか、身内の会社の株式のような「非上場株式」なのかによって名義変更の手続きが異なります。
上場株式の名義変更の手続きは証券会社を通じて行います。
株式を相続するときは被相続人名義から相続人名義に書き換えた株式を相続人の証券口座に振り替えてもらう必要があります。預金と違って有価証券の場合は口座そのものの名義変更ができないので、相続人名義の証券口座が必要になります。
既に証券口座を持っている場合は、その口座を使うことができますが、証券口座を持っていない方が相続する場合は口座を開設する必要があります。口座を開設する場合は、本人確認書類やマイナンバーカードの写し、その他証券口座開設のための申込書などが必要になります。
株式の相続による名義変更に必要になる書類はこちらが一般的です。
- 株式名義書換請求書
- 被相続人(亡くなった方)の生まれた時から亡くなるまでの戸籍・除籍謄本等
- 相続人全員の戸籍謄本
- 遺産分割協議書
- 相続人全員の印鑑証明書
証券会社によって多少異なる可能性があるので、詳細は各証券会社にご確認ください。
遺産分割後の手続きはどうするの?-非上場株式の場合-
非上場株式の場合の手続きは証券会社ではなく、その株式を発行している会社(株式発行会社)に相続が発生した旨を連絡して、名義書き換えの依頼をする必要があります。株式発行会社が株式名簿管理人を置いている場合には、株主名簿管理人に連絡をします。
非上場株式の相続による名義変更に必要になる書類は、基本的には上場株式の場合と変わらないと思いますが、詳細は株式発行会社にご確認ください。
- 株式名義書換請求書
- 株券(発行されている場合)
- 被相続人(亡くなった方)の生まれた時から亡くなるまでの戸籍・除籍謄本等
- 相続人全員の戸籍謄本
- 遺産分割協議書
- 相続人全員の印鑑証明書
非上場株式は株主自身が株式発行会社の役員の場合が多いと思います。株式の相続が会社の運営に影響する場合があるので早めにご確認ください。
コラム|相続登記の直後に不動産会社からDMが届く理由
数週間前に相続登記が完了したお客様から携帯に着信。
お礼のお電話にしては少し遅いような…。
なんだろう?と思いながら出てみると…
先生が情報を漏らしてませんよね?
と身に覚えのないお問合せ(汗)。
まさかと思いながらも話を聞くと…
相続登記が終わってしばらくすると、不動産会社から「相続した不動産を売却しませんか?」というDM(ダイレクトメール)が次々に届いたようです。
たぶん違うだろうと思いながらも、名義が変わったのを知っているのは伊藤先生しか思いつかないからと、確認のお電話でした。
もちろん僕が情報を漏らしたわけではありません。
かといって不動産会社が不正な手段で情報を入手したわけでもありません。
じゃあどういうことなのか?
法務局にある受付帳を確認することで「相続」を原因として名義変更のあった不動産を把握することができます。
受付帳に所有者の記載はありませんが、不動産の所在を基に登記事項証明書を取得すれば所有者を知ることができるというわけです。
個人情報の取り扱いに対する社会の目は年々厳しさを増していますが、この受付帳は「行政文書」に該当するので、開示請求をすれば誰でも入手できてしまうという現実があります。
不安を煽ることになってはいけないので、こういう方法で情報を取得してDMを送ってくることがあるかもしれませんよと積極的にアナウンスしたことはありませんでしたが、「先生が情報をもらしたんですか?」と疑われるくらいなら前もってお伝えしようと思いました。。
まとめ
法務局にある受付帳で「相続」を原因に名義が変わった不動産を把握することができます。その不動産の登記事項証明書を取得すれば、現在の所有者の住所を把握することができます。
1社ではなく複数の不動産会社からあまりにもタイミングよくDMが届くと情報が漏れているのではと疑いたくなる気持ちはよくわかりますが、情報が漏れているわけではありません。
コラム|相続は不動産を売るチャンス!?
相続アドバイザー養成講座で、「相続はチャンス」というフレーズを耳にした時に、「なにが?」「なんで?」と思いましたが、 講師の説明を聞いていて納得しました。
財産の大部分が現金なら、相続人間で分けるのも簡単だし、相続税も現金で一括納付できます。
ですが、多額の相続税が課税される資産家の方というのは、財産に不動産の占める割合が非常に高く、現金と違って遺産分割も不動産の場合は手間がかかることを考えると、不動産を売却して納付期限(10ヶ月)までに納税資金を確保するには、相場よりかなり安く売らなければならないないことも多いのではないでしょうか。
僕のような庶民感覚では、タイミングを見ながら不動産を売って現金に換えておけばいいんじゃないのと簡単に考えてしまいますが、なんでもないときに土地を売ると、ご近所や一族からどうな風に思われるかわからないし、先祖代々受け継いできた土地を自分の代で手放したくないという思いもあって資産家の方には、土地を売りたくてもなかなか売りにくい事情があるようです。
ところが、相続がきっかけであれば、「相続税を支払うために土地を手放すしかなかった」と理由がハッキリしているので、まわりにも納得してもらえるし、堂々と土地が売れるとのこと。
まわりに気兼ねなく売れるという他にも、相続税申告期限から3年以内に売却するのであれば、「相続税の取得費加算の特例」といって、相続で取得した土地(建物)に対する相続税の金額を取得費に加えることができ、売却時の譲渡益に対する所得税、住民税を抑えることが出来るメリットもあります。
土地持ちの資産家の方にとって、相続は”土地を売る”チャンスであり、土地を売って、財産のうち現金の割合を増やしておけば、将来の遺産分割対策にもなるし、納税資金対策にもなるというお話でした。
コラム|終活は使っていない口座の解約から
相続手続きの代表格は不動産と預貯金の名義変更(解約)でしょうか。不動産の名義変更も法務局によって多少の違いはあるにせよ、金融機関の比ではありません。
- ①遺言で定められた遺言執行者として 【遺言あり】
- ②相続人から委任を受けた遺産整理業務受任者として 【遺言なし】
2つの異なる立場で預金口座の解約手続きを経験してきましたが、金融機関によって対応はまちまちです。
この2つの違いについて補足すると遺言執行者として預金の解約をする場合、預金を誰が引き継ぐのかは遺言の中で決められています。一方で②の相続人から委任を受けた遺産整理業務受任者というのは、亡くなった方が遺言を作っていないケースです。
遺言があると被相続人の相続人が誰なのかを戸籍で確認する必要がありません。①のケースでは窓口の手続き(約1時間半)だけで全ての手続きが完了したところもありました。
これは口座のある支店で手続きをしたという事情も関係しています。金融機関によっては専門のセンターで対応するので、口座のある支店に行ったとしても1回ですべてが終わらないこともあります。
一方で遺言がないと被相続人の生まれてから亡くなるまでの戸籍を確認して相続人が誰なのかを確認しないといけないので確実に時間がかかってしまいます。
必要な戸籍の数が少ないケースもあると思いますが、相続人の見落としは大きなトラブルにつながるので、そうならないように丁寧に確認すれば手続きに時間がかかります。
こういう場合に法定相続情報一覧図を活用することが有効です。
余談ですが・・・
- イスがあるカウンターもあれば、イスがなくカウンターで立ったままのところも
- 別室でお茶が出てくるところもあれば、カウンターと後ろのソファを行ったり来たり
- 窓口の確認に時間がかかるところもあれば、窓口はさっと済むけどその後の手続きに時間がかかるところも
- その後の手続きが1週間くらいでサクっと終わるところもあれば、3週間以上かかるところも
これは相続で預金口座の解約をした時の金融機関の対応の違いです。
定型業務と思われる口座の解約にも関わらず金融機関の対応は実に様々でした。
- 支店で何を聞いても「本部が」「本部が」って内向きなところ
- いったい何回行かないといけないの?って思うようなところ
中には自分達の確認ミスなのにこちらに再来店を求めるところまで。こういうところの書類に手続きでお困りの方は提携している代行会社を紹介します!とか書いてあると、誰のせいで困っているの?って感じなんですけど(汗)。
金融機関の対応に違いがあるのは当然ですが、極端に手間のかかる金融機関はやっぱりあります。普段から何かと手間のかかるところは要注意かもしれません。
遺言があると遺産分け手続きはとてもスムーズです。
と言ってしまってもいいのですが、そもそも可能なら口座の数はできるだけ減らしておいた方が絶対的に良いです。あまり使わない口座は少しずつ解約しておくのが地味に有効です。
親の会社を相続した場合
株の相続手続きを忘れていませんか?
2016年10月1日から株式会社の役員変更の登記申請に株主のリストを添付しなければいけなくなりました。
役員変更に限らず株主総会の決議が必要(株主全員の同意が必要)な登記を申請する場合には、上場・非上場を問わず全ての株式会社が行わなければならず、実質手続きにひと手間増えることになります。
会社を経営されている方、特に家族で会社を経営されている場合(非上場株式)であれば、大きくかかわってくるので、どういった改正なのかを把握しておく必要があります。
株主リストに具体的に何を書かなければいけないかというと・・・
株主の
- 「氏名又は名称」
- 「住所」
- 「当該株主のそれぞれが有する株式数及び議決権数」
- 「当該株主それぞれが有する議決権に係る当該割合」です。
ただし記載しなければいけない株主は次のうちいずれか少ない数を記載すればよいとされているので、必ずしも株主全員を記載しなければいけないわけではありません。
- 10名
- その有する議決権の数の割合をその割合の多い順に順次加算し,その加算した割合が3分の2に達するまでの人数
株主に相続が発生している場合は、そのまま亡くなった株主を書けばいいのではなく、相続人から会社に株主が死亡した旨の届け出があった場合、さらに相続人代表として議決権を行使する者の届出があった場合というように状況に応じて、「株主(被相続人)と法定相続人全員を併記する」、「議決権行使者」などを記載する必要があります。
もちろん、これは相続の手続きが完了していない場合です。
過去に株主総会で決議をしていたものの役員変更の登記申請をしていなかったようなケースについても2016年10月1日以降に登記申請をする場合には株主リストを添付しなければいけません。
なお、添付する株主リストは決議をした当時の株主に基づくリストになります。
改正のタイミングで、司法書士会からこういったポスターが送られてきたので株主リストを作成する上で拠り所になる株主名簿をしっかり作っていない会社は実際には多いような気がします。
法務省は、法に則って株主総会が適切に開催されて、その議事録が作成されていながら株主リストが作成できないという状況は想定しにくいと考えているようです。
何年も前の当時の株主を把握できていないことはありえない話ではないと思いますが、その場合は過去の確定申告書を参考にすることが良いかもしれません。
もしかすると、この点を気にされる方がいるかもしれませんが、議案について誰が賛成・反対だったといった内容を記載する必要はありません。
というのも改正の背景には株主総会議事録などを偽造して虚偽の役員の変更登記を行い役員になりすますといった犯罪が後を絶たなかったので、株主総会議事録が偽造されて虚偽の登記がされることを防止するため株主リストの添付が要求されることになったからです。
株主リストに記載するのは必ずしも株主全員が対象というわけではありませんが、あの人は亡くなったから株は誰が相続したのだろうといったことや株の譲渡の状況を把握しておくこと、会社を適法に経営する上で当然のこととは思いますが、今後は登記申請の場面でも不可欠になります。
個人の相続という視点では、所有している株(特に非上場)があれば相続人にわかるように整理しておくことや相続が発生したときには株の相続手続きを怠らないことがより一層求められています。
引き継いだ家業で新規事業をする場合
家業を継いだものの赤字続きだから今の商売をやめて新しい商売を始めようか、そんな選択を迫られることも、こんなご時世では珍しくありませんよね。
例えば祖父の代から印刷業を営まれていたXさんが多死社会の到来を見込んで遺品整理業を始めることにしたようなケースをイメージしてみてください。
印刷業と遺品整理では全くの畑違いなので、そもそも遺品整理業のノウハウがなければ難しいというのは容易に想像できます。
それに、遺品整理の会社の名前が「○○印刷株式会社」じゃピンとこない。それなら心機一転、会社名(商号)を変えたいというニーズもあるでしょう。
また不要な物を処分するだけではなく、買い取りをするなら古物商の免許を取らないといけないし、その前提として「中古○○の売買」を会社の目的に加えるなど、登記を変更しておかなければいけないということもでてきます。
中には、これを機に取締役会や監査役も廃止して役員は自分ひとりで再出発したいといったニーズもあると思います。
新規事業を始めようとすると、会社の登記だけをみてもそのままでは始めることが難しい場合がほとんどかもしれません。
登記の内容をいろいろ変更する手間を考えていたらイチから新しい会社を作った方が早いんじゃないの?なんて思ってしまいますが、既に株式会社がある場合で新規事業を行うケースについて登記を中心とした手続きは次のようになります。
株式会社は資本金1円から作ることができますが、登録免許税や定款認証の費用などで最低でも20万円以上かかります。
一方で、既にある会社の取締役会や監査役を廃止すること、商号や目的を変更する場合も変更する内容に応じて登録免許税が必要になります。
既にある会社の資本金がそれなりに大きくて、もし会社の見栄えを気にするなら既にある会社を活用するという選択肢も十分にあります。中には、引継いだ会社がそのまま新規事業を行った方が税務上のメリットが大きいケースもあるでしょう。
しばらく事業をやっていなかったために登記も長い間ほったらかしだったり、むしろ会社をたたもうと解散の決議をしてその登記がされている場合があるかもしれません。
解散の決議をしていたらその会社で新規事業を行うことはできないと思われるかもしれませんが、そんなことはありません。解散の登記がされていても清算手続きが完了していなければ会社を継続することも可能です。
まずは既にある会社の登記内容や会社の状況を正確に把握した上で、新規で会社を作る場合と既にある会社の登記を整える場合の手間と費用を比べて判断するのが賢明です。
相続した資産価値のない土地や建物を“負”動産と言うことがありますが、家業も同じようなことが言えそうですね。ただし、使い方によってはうまく活用できる場合がありそうです。
組織を断捨離!? 取締役は1名でも構いません!
会長が亡くなったことがきっかけで僕が所属していたある会が解散することになりました。
副会長や事務局もいるそれなりの会だと思っていたので驚きましたが、実情は会長ひとりで運営されていたのかもしれません。詳細はわかりませんがなんとも寂しいことです。
時期を同じくして、会社を経営されている方から取締役である父親が亡くなったけれど取締役になってくれる人が見つからない。
さらに、監査役に就任してもらっていた父の知人からも病気を理由に辞任したいと言われて困っているという話を伺いました。なんだか会の解散の話と似ているなと感じました。
その方は株式会社には取締役が3人必要で加えて監査役も必要だと思い込んでいたようですが、実はそんなことはありません。
平成18年5月1日施行の会社法により非公開会社(株式の譲渡制限がある会社)の場合には、原則として取締役会を設置する必要がなくなりました。
その社長もここ最近新しく作った会社の場合は取締役が一人でもいいということはご存知だったようです。ただし、何十年も前に設立している自分の会社の場合はそれができるのかどうか?またできるとしても親から引き継いだ会社の組織を変えることへの迷いもあったようでした。
現在は取締役会を設置するかしないかは自由です。ただし、取締役会を廃止することに伴いメリット・デメリットがあることも事実ですのでその点について簡単に整理してみます。
取締役会を廃止することによるメリット
- 取締役を1人にすることができる。監査役も廃止すれば役員報酬の負担を大きく減らすことができる。
- 定時株主総会の招集通知に計算書類等の提供が不要になる
- 株主総会の招集通知の期間を1週間未満にすることができる
取締役会を廃止することによるデメリット
- 取締役会で決議ができた事項についても原則として株主総会での決議が必要になる
- 取締役会設置会社と比べて体外的な信用度が低下するため融資や取引において不利になる恐れがある
- 株式公開をするときには改めて取締役会を設置する必要がある
取締役会があっても実際のところは代表取締役ひとりで切り盛りしている会社も多いのではないでしょうか?
仮に株主の数が多ければ何か決議をしようとするたびに株主総会を開催しなければいけないのではかなりの負担になりますが、株主が代表取締役のみであれば手続き上も迅速に会社経営をすることができるようになります。
これからの日本は2030年には年間160万人が亡くなる多死社会を迎えるといわれています。人が亡くなれば大なり小なり必ず起こるのが相続の問題。取締役会のある会社で年老いたご両親や友人・知人さらには先代の繋がりで役員をお願いしている方がいるということはよくある話です。
財産の相続対策とは違い『人』が主になることなので話を切り出しにくいのも十分理解できるのですが、例えば現在の取締役が亡くなったタイミングで考えようではなく、機動的に会社や会を運営していくためには実情に合わせて組織(機関)・体制を見直しておくこと、さらには余裕を持って準備しておくことが大切ではないでしょうか。
ご相談・お問合せ
司法書士・行政書士 伊藤 薫