遺産分割協議がまとまり、誰がどの遺産を受け取るのかが決まれば、不動産は名義変更(相続登記)、預貯金なら解約(払い戻し)のように遺産分割協議書に基づき相続手続きを行います。
目次
不動産の名義変更手続き
不動産名義変更の申請先は法務局(登記所)です。
土地、建物、マンションの所在地によって法務局の管轄が決まっています。管轄の法務局以外では申請は受け付けてもらえません。
大阪府の場合は11の法務局があります。不動産毎に不動産登記管轄区域が決まっています。
申請は法務局の窓口で行う以外に、オンライン申請や郵送申請もありますが、一般の方の場合は法務局の窓口で申請することをおすすめします。
登記事項証明書(登記簿謄本)の取得は管轄以外の法務局でも可能です。
不動産の名義変更に必要となる書類等
不動産の名義変更(相続登記)に必要になる書類はこちらが一般的です。
- 登記申請書
- 被相続人(亡くなった方)の生まれた時から亡くなるまでの戸籍・除籍謄本等
- 相続人全員の戸籍謄本
- 相続人の住民票の写し
- 遺産分割協議書および印鑑証明書
- 固定資産税の評価証明書
- 収入印紙(登録免許税)
遺言がない場合 | 遺言がある場合 | |
登記申請書 | 〇 | 〇 |
被相続人の生まれてから 亡くなるまでの戸籍 | 〇 注1) | 死亡の記載のある 戸籍のみで可 |
相続人全員の戸籍 | 〇 注1) | 不動産を取得 した人のみ |
被相続人の住民票除票 | 〇 | 〇 |
不動産を取得した人の住民票 | 〇 | 〇 |
遺産分割協議書 | 〇 | - |
相続人全員の印鑑登録証明書 | 〇 | - |
遺言 | - | 〇 |
評価証明書 注2) | 〇 | 〇 |
注1)法定相続情報一覧図でも可
注2)固定資産税・都市計画税の納税通知書でも可
コラム|相続登記の直後に不動産会社からDMが届く理由
数週間前に相続登記が完了したお客様から携帯に着信。
お礼のお電話にしては少し遅いような…。
なんだろう?と思いながら出てみると…
先生が情報を漏らしてませんよね?
と身に覚えのないお問合せ(汗)。
まさかと思いながらも話を聞くと…
相続登記が終わってしばらくすると、不動産会社から「相続した不動産を売却しませんか?」というDM(ダイレクトメール)が次々に届いたようです。
たぶん違うだろうと思いながらも、名義が変わったのを知っているのは伊藤先生しか思いつかないからと、確認のお電話でした。
もちろん僕が情報を漏らしたわけではありません。
かといって不動産会社が不正な手段で情報を入手したわけでもありません。
じゃあどういうことなのか?
法務局にある受付帳を確認することで「相続」を原因として名義変更のあった不動産を把握することができます。
受付帳に所有者の記載はありませんが、不動産の所在を基に登記事項証明書を取得すれば所有者を知ることができるというわけです。
個人情報の取り扱いに対する社会の目は年々厳しさを増していますが、この受付帳は「行政文書」に該当するので、開示請求をすれば誰でも入手できてしまうという現実があります。
不安を煽ることになってはいけないので、こういう方法で情報を取得してDMを送ってくることがあるかもしれませんよと積極的にアナウンスしたことはありませんでしたが、「先生が情報をもらしたんですか?」と疑われるくらいなら前もってお伝えしようと思いました。。
まとめ
法務局にある受付帳で「相続」を原因に名義が変わった不動産を把握することができます。その不動産の登記事項証明書を取得すれば、現在の所有者の住所を把握することができます。
1社ではなく複数の不動産会社からあまりにもタイミングよくDMが届くと情報が漏れているのではと疑いたくなる気持ちはよくわかりますが、情報が漏れているわけではありません。
コラム|とりあえず「共有」にするのはもったいない!
共有にすると揉める火種になるというのが不動産を共有することをおすすめしない最大の理由ですが、他にも理由があります。それはもっと単純な話で、将来的に土地を分けて(分筆)、共有状態を解消するつもりなら、とりあえず共有の相続登記をするのは手間と費用が余計に掛かってしまうからです。
土地や建物を相続する時、例えば兄弟で持分を2分の1ずつというように共同で所有(共有)することができます。
共有はあまりおすすめできませんが、現在売りに出している、近いうちに手放す予定だという事情があるときはよくあることです。ただし、2人、3人ならまだしも、4人、5人と共有する人数が多くなると売却や登記の手続きが煩雑になるのでやはり考えものです。
一方、売却する予定はなく、いずれは土地を分けてそれぞれ単独で所有したいという場合もあると思います。
この場合、今すぐは土地を分けずに、とりあえず遺産分割協議をして相続人が共有する相続登記をするのはあまりおすすめできません。「うちは兄弟の仲がいいから共有にしていても特に問題は起きないし」とか「土地を分ける(分筆登記)には測量に費用がかかるからそれぞれで所有にする必要が出てから分けよう」という気持ちはわかります。
ひとまず共有の相続登記をするのは、はじめに土地を二つに分けた後でそれぞれ単独所有となる相続登記をするのと比べて手間と費用が余計に掛かってしまうことがおすすめできない理由です。
なぜ手間も費用も余計にかかってしまうのか?は登記の手続きの流れを理解するとよくわかります。
1.先に土地を二つに分けた場合
手続きは次のようになります。
- ①土地を二つに分ける【分筆登記】
- ②遺産分割協議をして、それぞれの土地をA、Bが単独で所有するような名義変更をする【相続登記】
2.土地を二つに分ける前にとりあえず共有で相続登記をした場合
- ①A、Bが共同所有するように土地の名義変更をする【相続登記】
- ②土地を二つに分ける【分筆登記】
- ③土地の片方をAの単独名義にするため、Bの持分を「共有物分割」を原因としてAに移転する【移転登記】
- ④同じようにもう一方の土地をBの単独名義とするためにAの持分をBに移転する【移転登記】
※遺産分割協議をせず、法定相続分で①の登記をしていた場合、③は「共有物分割」ではなく「遺産分割」になります。
2.の方が手間と費用が余計にかかる理由は、A、B共有名義の土地を単に2つに分けた状態では、どちらの土地も二人の共有のままだからです。それぞれを単独所有にするために持分を移転する必要があるので手間と費用が余計にかかってしまうというわけです。
美味しいものは仲良く分けた方がより美味しく感じるような気がします。分けやすいように先に切っておくといいのはバームクーヘンに限らないみたいです。
預貯金の解約(払い戻し)手続き
口座のある金融機関の窓口で手続きをします。ただし、ふらっと行って対応してくれるところは少なく、かなり待つことになるか、事前にネットで来店予約をしておかなければ対応してもらえないところが多い印象があります。
窓口で相続手続きを受け付けてもらえても戸籍や遺産分割協議書の原本のコピーを取って返してくれるだけで、相続手続き依頼書のやり取りは郵送でという金融機関も多いです。
ネット銀行は金融機関の公式サイトから手続きの受付をして後は郵送でのやり取りになります。
預貯金の名義変更に必要となる書類等
遺言がない場合に不動産の名義変更(相続登記)に必要になる書類はこちらが一般的です。
- 各金融機関所定の依頼書
- 被相続人(亡くなった方)の生まれた時から亡くなるまでの戸籍・除籍謄本等
- 相続人全員の戸籍謄本
- 遺産分割協議書および印鑑証明書
- 通帳・印鑑 など
遺産分割前の相続預金の払戻しについて(準備中)
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司法書士・行政書士 伊藤 薫