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相続登記の義務化で何が変わる?|2024年4月1日スタート

2024年4月1日から相続登記の義務化がスタートしました。これからは相続が発生した場合に土地や建物の名義変更をしないでそのままにしておくことができなくなりました。

ただし、現実には事情があってすぐに相続登記ができないケースも沢山存在します。そこで義務化にあわせて相続人申告登記という新しい制度が作られることになりました。

相続登記の義務化について気になっている方が多いと思います。現在わかっている情報を元にまとめてみました。

相続登記義務化のきっかけは所有者不明土地の問題

相続登記義務化のきっかけは所有者不明土地の問題です。

所有者不明土地というのは登記されている内容を調査しても所有者が判明しない、又は判明しても連絡がつかない土地のことをいいます。

その面積は九州よりも多いと推計されています(2016年時点)。

この所有者不明土地問題が2011年3月11日に起きた東日本大震災の復興作業で大きな障害になってしまったことが、相続登記の義務化について検討されるきっかけになりました。

そして、問題の解消に向けたこれまでの政策で法定相続情報制度(平成29年5月29日)や遺言書保管法(令和2年7月)がスタートしてきた中で、相続登記の義務化がスタートしました。

所有者不明土地の具体例|忘れられた不動産 相続人は…〇人

ある夏の日…。

Aさんの相続手続きがそのままになっていたことに親族が気づきます。

独身で子供がいなかったAさんの相続人は兄弟姉妹。

Aさんの相続人は兄弟姉妹

親族が気づいたのはAさんが亡くなって58年後。

いったい相続人は何人に増えているのか?

このままにしておくことはできないと親族が立ち上がりました。

  • 戸籍を調べるとAさんの相続人は60人
  • 集めた戸籍は200通以上

一般的な相続で必要になる戸籍の量とは比べ物にならないくらいのボリュームです。

集めた戸籍は200通以上

58年の間に相続人は親族以外にも広がっていて連絡を取って遺産分割協議をまとめるのは相当大変だったようです。

まとめ

相続手続きをしないまま長い年月が経つと解決することが非常に難しくなります。

  • 遺産の見落としに気を付けましょう
  • 兄弟姉妹が相続人の場合はできるだけ早めに

遺産の見落しが大変な手間になることがあると覚えておいてもらえれば幸いです。

相続登記の義務化で何が変わるの?

2024年4月1日から相続登記が義務化されました。

被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内という相続税の申告期限のことを相続登記の期限だと勘違いしている人もいるようですが、これまでは相続登記に期限はありませんでした。

今後は、不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に相続登記をすることが義務になります。

相続登記をしないとどうなるの?

正当な理由がないのに相続登記をしない場合は、10万円以下の過料が科される可能性があります。

2024年4月1日よりも前に相続した不動産も義務化の対象になります。これは長年手続きをしていなかった不動産も対象になるということです。※3年間の猶予期間があります

早期に遺産分割をすることが困難な場合は「相続人申告登記」という手続きを取ることができます。

登記義務が課せられる登記

まずは登記義務が課せられる登記を見ていきましょう。

  • ①相続又は遺贈の登記
  • ②相続登記後、遺産分割が行われた場合の遺産分割の登記

相続登記が義務化されると期限までに手続きを行わない場合に10万円以下の過料が科される可能性があります。相続の場合の期限は、自己のために相続の開始があったこと及び所有権を取得したことを知った日から3年以内です。

期限までに間に合わない場合はどうすればいいのか?が非常に気になると思いますが、義務化で生じる負担を軽減するために相続人申告登記という制度が創設されました。

相続義務化!今すぐ登記は必要ですか?~相続人申告登記について~

【Aさん】
相続登記が義務化されたと聞きました。10年前に亡くなった兄には子供がおらず、相続人は兄弟や甥姪など10人以上います。

ずっと話し合いができず相続手続きは進んでいないので、今すぐ相続登記をするのは難しそうです。

2024年4月1日から相続登記が義務化されました。

義務化によって、原則として相続により不動産を取得したことを知った時から3年以内に登記をしなければならず、怠った場合には10万円以下の過料の対象となります。

2024年4月1日より前に相続した不動産も今すぐ登記をしなければいけないわけでなく、3年という猶予期間があります。

早期に相続登記をすることが難しい場合に、簡易に相続登記の申請義務を履行することができる「相続人申告登記」という制度がスタートしました。

相続人申告登記とは?

相続人申告登記は、相続登記の手続自体が負担なので最終的な相続登記は改めてすることにして、とりあえず相続が発生したことを申告することで相続登記の申請義務を簡単に履行できるようにする制度です。

相続人申告登記は、非課税(登録免許税は0円)です。

相続人全員でしなければならないの?

相続人申告登記は、相続人全員でする必要はなく、相続人であればそれぞれが単独でできます。

単独でできるので、他の相続人と話し合う必要や同意を得る必要もありません。

相続人申告登記の提出書類は?

必要となる主な書類です。

  • 申出書
  • 申出人が登記記録上の所有者の相続人であることが分かる戸籍の証明書
  • 申出人の住所を証する情報

相続登記に比べて提出する書類が簡略化されています。

登記される内容は?

  • 登記簿上の所有者に相続が発生したこと
  • 自らがその相続人であること

という申出をすると、登記事項証明書(登記簿謄本)に申出をした相続人の氏名・住所が記録されます。

これまでの相続登記とは違う暫定的な手続きなので、持分は登記されません。売却や贈与で名義を変更したい場合には、その前提として相続登記を行う必要があります。

まとめ

相続登記の義務化に伴って、相続人申告登記制度がスタートしています。

相続が発生したこと、相続人であることを申し出ることで、取り急ぎ相続登記義務化の罰則を免れることができます。各相続人が単独で申し出ることができます。登録免許税もかかりません。

あくまでも暫定的な手続きなので、その後、相続人間で遺産分割協議が成立した場合には、相続登記が必要になります。

相続登記義務化のまとめ

  • 2024年4月1日から相続登記が義務化されました
  • 既に発生した相続も対象です(猶予期間があります)
  • 相続登記をしないと過料が科される可能性があります
  • 早期の遺産分割が難しい場合は、相続人申告登記という手続きで申請義務を果たすことができます

※本資料は法務局の公式ウェブサイトを参考にまとめました。

参考|所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直し(民法・不動産登記法等一部改正法・相続土地国庫帰属法)

参考|相続人申告登記について|法務省の公式サイト

コラム|放置される負動産が増えています

不動産と聞くと「不労所得」といったイメージを抱く方もいると思いますが、不動産の中には貸すことも売ることもできないのに、固定資産税だけがかかっているような不動産があります。

羨むどころか、誰も欲しがらないような不動産もあるわけで、最近では“負”動産なんていう言葉を目にするようになりました。

司法書士を対象にしたアンケートによると・・・

  • 5割の司法書士がいらなくなった土地を自治体に寄付したいという相談を受けたことがある
  • 不動産の相続放棄について相談を受けた司法書士は4割

という結果からわかるように、“負”動産を持て余している現実が垣間見えてきます。

相談される方の中には、仮に土地を捨てることができるなら捨ててしまいたいという方もいらっしゃると思います。

現実に捨てることはできないので、名義変更や管理をせずに放置されてしまう土地がたくさんあって「所有者不明の土地が○○よりも広い」という調査結果が出ました。

さて、○○には何が入るでしょう?

所有者不明土地問題研究会の推計によると、所有者が分からなくなっている可能性のある土地が約410万ヘクタールあって、なんと九州の面積よりも広いという結果が出たようです。

誰も住まなくなった田舎にある実家や先祖代々受け継いだ山林が名義変更をされずに放置されているのかもしれませんね。

先の司法書士へのアンケート調査によると「一部の不動産について相続登記をしないよう依頼された司法書士が4割」という回答があり、相続登記をしない理由の中には相続人が多数になって

  • 遺産分割協議が困難
  • 相続人を探す費用がかかる

という理由が多かったようです。

確かに相続手続きを放置していた場合、相続人を把握するために大量に戸籍を取得することになったり、その戸籍を読み解くのはかなり大変なので、費用が高額になってしまうのには致し方ない部分があります。

誰も住んでいないような田舎の土地が放置されてしまうのは理解できますが、中には相続人の誰かが住んでいるにも関わらず名義変更がされず長い間そのままになってしまう場合もあります。

  • 建物が老朽化したので建て替えたいが、土地の名義変更ができないためにローンが組めない
  • 誰も住まなくなったので売却したいが、相続人が多すぎて手続きが進められない

といったご相談もあるので、単なる自らの怠慢で塩漬けにしてしまい、“負”動産にするようなことはないよう気をつけたいですね。

コラム|実家が空き家になってしまう理由は相続 【空き家問題】

所有者不明土地の問題と空き家問題は表裏一体の関係にあります。

通常は空き家をそのままにしていたとしても罰則が科されることはありませんが、特定空き家に指定されると、自治体からの助言や指導、勧告などに基づいて建物の修繕や庭木の伐採などを行わなければいけなくなります。

空き家になった実家はプラスの遺産か!?

プラスだけなら嬉しいのですが、相続財産にはマイナスの財産というものがあります。

プラスの財産の代表格といえば自宅をはじめとする不動産や預貯金・株式等で、マイナスの財産は借金や保証債務というところでしょうか。現金や不動産はもらいたいけど、借金があるなら相続したくないと思うのが本音ですよね。

ただし場合によっては不動産といえどもマイナスの財産になりえるし、誰も相続したくない、いわば“負の遺産”と言っても過言ではないケースもあります。

なにも特殊な不動産の話をしているわけではありません。

相続をきっかけに、売れない・借り手がいない・家族は誰も住まないといった理由で空き家になってしまった実家は、利益と呼べるものは何もないのに毎年固定資産税を払わなければいけないとしたら、これがプラスの財産といえるでしょうか?

空き家になってしまう理由

東洋経済「実家の片づけ」の記事には本誌独自の調査結果ということで、次のようなデータが示されていました。

実家の片づけ後に

  • 売却した人 38%
  • 賃貸に出した人 3%

売却、賃貸以外は「そのまま所有」と書かれているので、半数以上は売却や賃貸をせず、有効に活用できないままに放置されているということのようです。

このデータの通りだとすれば、相続を機に半数は空き家になる可能性があるということになります。

相続の手続きをそのままにしたことがきっかけで空き家になってしまうこともあります。

遺産分けの話し合いがまとまらないまま、おじいちゃんの名義のままで空き家になっている。なんていうのは相続のご相談を伺っているとよくある話で、今では相続人が何人いるのかもわかっていない場合がほとんどです。

相続人へ名義変更ができなければ売却することができないため、そのまま空き家になってしまうことが多いようです。

考えてみれば、誰も住む予定のない実家の名義変更だけに、後回しにしてしまっているケースは相当数ありそうですね。

相続の手続きは済ませたものの、なかなか買い手が見つからなくて放置されているのと、相続の手続き自体を放置しているのでは大違いです。いざ売却しよう、他人に貸そうという時にスムーズに事を進められるよう権利関係の放置は避けたいものですね。

どのくらいの空き家があるのか?

日本にどのくらいの空き家があるのかをご存知でしょうか?

なんと!約820万戸もの空き家があるそうです!

総住宅に占める割合は13.5%!

空き家の中で別荘や賃貸用、売却用の住宅を除いても約318万戸あります(2013年・住宅・土地統計調査/総務省)。

こんなに空き家があるなら不動産の価格が下がってもおかしくないわけですが、そこは需要と供給にギャップがあるわけで・・・。

「人口の減少」と「空き家の増加」というのは相関するイメージがあるので、やはり地方での空き家率が高いのは想像できます。

東洋経済の記事では空き家の増加は地方だけの問題ではなく、今後は首都圏近郊の都市部でも深刻化するとも。団塊の世代が80代を迎える頃には、なんと全体の空き家率が23.7%になるという予測もあるようです。

近い将来には、空き家だらけの住宅地、マンションがあちこちに出現するということですかね。。

空き家の何が問題なのか?

ところで、空き家の何が問題かというと、ひとつは空き家のままで放置されると老朽化による倒壊の危険や火災の不安が考えられます。

有効活用が難しく、老朽化がかなり進んでいるようなら、建物を取り壊すという手がありますが、更地にしてしまうと固定資産税があがります。

富山市では「居住の実績がなく、住居の用に堪えない建物は、住宅特例の対象から外し、更地と同じ固定資産税を課す」という取り組みをしているようです。ただし固定資産税だけではなく、取り壊し費用の負担も放置につながる要因だと思うので、どの程度の効果があるのかわかりません。

これまでは空き家でも建物が立っていれば、特例があり固定資産税が優遇されていましたが「空家等対策の推進に関する特別措置法」が施行されたことで、例えば建物の倒壊や保安上危険になるおそれがあると「特例空家等」に認定され、修理や取り壊しに従わなければ優遇措置を受けられなくなります。

修繕維持費や解体費といった費用が掛かるならいっそのこと手放したいけど、買い手がみつからない。こんな不動産がプラスの財産とはいえませんよね。

また空き家が増える一方で、新しい住宅もどんどん供給されているわけで、実家(我が家)は売れる、借り手が見つかる、ずっと住むから大丈夫と自信を持って言える方はどのぐらいいるのでしょうか(僕の山形の実家なんかはかなり心配ですね)。

空き家にしないための努力は必要ですが、既に空き家になってしまい解決が難しいと感じておられる方は、空き家の解体費用に対する自治体の補助制度や金融機関のローンなどがあるようなので活用を検討されてはいかがでしょう。

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司法書士・行政書士 伊藤 薫

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