令和3年4月相続登記を義務化する法律が成立しました。これからは相続が発生した場合に土地や建物の名義変更をしないでそのままにしておくことができなくなりました。
ただし、現実には事情があってすぐに相続登記ができないケースも沢山存在します。そこで義務化にあわせて相続人申告登記という新しい制度が作られることになりました。
相続登記の義務化について気になっている方が多いと思います。現在わかっている情報を元にまとめてみました。
相続登記の義務化で何が変わるの?
令和6年4月1日から相続登記が義務化されます。
被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内という相続税の申告期限のことを相続登記の期限だと勘違いしている人もいるようですが、これまでは相続登記に期限はありませんでした。
今後は、不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に相続登記をすることが義務になります。
相続登記を義務化するのはなぜ?
そもそも義務化のきっかけは所有者不明土地の問題です。
所有者不明土地というのは登記されている内容を調査しても所有者が判明しない、又は判明しても連絡がつかない土地のことをいいます。その面積は九州よりも多いと推計されています(2016年時点)。
この所有者不明土地問題が2011年3月11日に起きた東日本大震災の復興作業で深刻な障害になってしまったことが、相続登記の義務化について検討されるきっかけになりました。
そして、問題の解消に向けたこれまでの政策で法定相続情報制度(平成29年5月29日)や遺言書保管法(令和2年7月)がスタートしてきた中で、今回の相続登記の義務化が決まりました。
相続登記をしないとどうなるの?
正当な理由がないのに相続登記をしない場合は10万円以下の過料が科される可能性があります。
令和6年4月1日よりも前に相続した不動産も義務化の対象になります。これは長年手続きをしていなかった不動産も対象になるということです。※3年間の猶予期間があります
早期に遺産分割をすることが困難な場合は「相続人申告登記」という手続きを取ることができます。
登記義務が課せられる登記
まずは登記義務が課せられる登記を見ていきましょう。
- ①相続又は遺贈の登記
- ②相続登記後、遺産分割が行われた場合の遺産分割の登記
相続登記が義務化されると期限までに手続きを行わない場合に10万円以下の過料が科される可能性があります。相続の場合の期限は、自己のために相続の開始があったこと及び所有権を取得したことを知った日から3年以内です。
期限までに間に合わない場合はどうすればいいのか?が非常に気になると思いますが、義務化で生じる負担を軽減するために相続人申告登記という新制度が準備されています。
相続人申告登記というのはどんな制度?
相続人申告登記は、相続登記の手続自体が負担なので最終的な登記は改めてすることにして、とりあえずは相続が発生したことを申告することで相続登記の申請義務を簡単に履行できるようにする制度です(令和6年からスタートする予定)。
- 登記簿上の所有者に相続が発生したこと
- 自らがその相続人であること
を法務局に対して履行期間内(3年以内)に申し出ることで、相続登記申請義務を履行したものとみなす制度です。申出をした相続人の氏名・住所等が登記されますが、持分は登記されません。これまでの相続登記とは違う暫定的な手続きです。
詳細については決まっていませんが、自らが法定相続人である旨を申し出ることで登記官が申告した人の氏名と住所を職権で登記することになるようです。
持分は登記されない暫定的な手続きです。売却や贈与で名義を変更したい場合には正式な相続登記を行う必要があります。
参考|所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直し(民法・不動産登記法等一部改正法・相続土地国庫帰属法)
参考|見直しポイント(2) 相続人申告登記(令和6年4月1日施行) 宇都宮地方法務局のサイト
相続登記義務化のまとめ
- 令和6年4月1日から相続登記が義務化されます
- 既に発生した相続も対象です(猶予期間があります)
- 相続登記をしないと過料が科される可能性があります
- 早期の遺産分割が難しい場合は、相続人申告登記という手続きで申請義務を果たすことができます
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司法書士・行政書士 伊藤 薫