ひとくちに遺産といってもさまざまなものがあります。現金や預貯金、不動産はもちろん、株式などの有価証券、被相続人(亡くなった方)が債権者になっている貸付金などの債権、貴金属や骨董品などの貴重な動産など見落としがないように調査をする必要があります。
また、忘れてはならないのが借金等のマイナスの遺産です。亡くなって時間がたってから多額の借金が発覚することがあるので、しっかりと調査しておく必要があります。
Q. 父名義の畑や山はどうやって調べればいいですか? 【不動産の調査】
相続財産である不動産を把握するには、以下の書類を確認して登記事項証明書を取得することがゴールです。
☑ 納税通知書
☑ 権利証(登記済証・登記識別情報)
☑ 名寄帳
登記事項証明書で誰が所有者なのかをしっかり確認しましょう。建物は登記がされていない場合もあります。
Aさん
父は実家以外に畑や山を持っていたようですが、どこにあるのかわかりません。
4月頃に市役所から届く固定資産税の納税通知書をみていると、載っている土地の所在地は実家の住所と違うようです。
亡くなった方の不動産(土地、建物)を把握するには、法務局で登記事項証明書(登記簿)を取得することがゴールですが、まずは納税通知書を確認しましょう。
住所と登記簿の地番は同じこともありますが別物です。登記されている不動産は地番、家屋番号で特定します。
納税通知書には課税されていれば、登記されていない建物(未登記建物)も記載されています。課税されていない不動産は載っていないので納税通知書とあわせて以下のものも確認します。
- 権利証(登記済証・登記識別情報)
- 名寄帳
権利証(登記済証)とは?
権利証は登記済権利証書という表紙の付いた冊子状のものが多いです。法務局のハンコが押されています。1つの権利証に土地、建物が複数載っていることもあります。
権利証(登記識別情報)とは?
平成17年3月以降の権利証は登記識別情報通知というタイトルの書類です。
目隠しシール方式、袋綴じのような折り込み方式があります。1つの不動産に対して所有者毎に1枚発行されます。
名寄帳とは?
名寄帳は市区町村が管理する課税台帳です。非課税の不動産も記載されています。市区町村毎に調べる必要があります。
亡くなった人の不動産がわかったら法務局で登記事項証明書を取得しましょう。法務局で公図という地図を取得して、隣接する土地を調べるのも漏れを無くすための方法の1つです。
登記事項証明書を見ることでお父さん名義だと思っていた土地は、実はおじいちゃん名義だったことがわかることもあります。
Q. 父の預金や保険はどうやって調べればいいですか? 【預貯金・生命保険の調査】
預貯金は通帳などを手掛かりに調べます。ただし、口座がありそうな金融機関に照会をする際は口座が凍結されるのでご注意ください。
生命保険は証書などを手掛かりに調べることになりますが、手掛かりがなければ生命保険契約照会制度を利用する方法もあります。保険金の受取人が指定されていれば相続財産にはならず、受取人固有の財産になります。
父は母が亡くなった後、実家で一人暮らしをしていました。年に一度会うかどうかだったので父がどこの銀行に口座を持っていたのかわかりません。
保険も入っていたと思いますがまったくわかりません。
預貯金の調査はまずはこの辺りを調べましょう。ネット銀行は通帳はなくてもカードがある可能性が高いと思います。金融機関からのメールも確認しましょう。
☑ 通帳・キャッシュカード
☑ 金融機関からの郵便物
☑ 金融機関のカレンダー etc.
口座がありそうなら金融機関で口座の照会(調査)をします。照会は相続人の一人からでもできます。ただし、亡くなったことが金融機関に知れるので口座が凍結されてしまいます。
口座が凍結されると預金の引き出しだけでなく、引き落としもできなくなるので光熱費やカードの引き落とし口座の場合は注意が必要です。
口座と一緒に貸金庫も凍結されてしまうので、貸金庫の中に遺言や権利証を保管している可能性があれば先に貸金庫を調べましょう。
生命保険の調査はまずはこの辺りを調べましょう。
☑ 証書
☑ 保険会社からの郵便物
☑ 通帳の引き落としの履歴
手がかりがなければ費用は掛かりますが、生命保険契約照会制度を利用する方法があります。
生命保険契約照会制度
亡くなった人の保険加入状況(契約の有無)を生命保険会社42社へ一括で照会できる制度です。
費用は照会1件につき3,000円(税込)で、申請方法はオンラインまたは郵送です。申請の際は本人確認書類や相続関係を証明する戸籍などが必要になります。
参考|家族の生命保険契約を一括照会!どこの会社に加入しているか調べられます
口座がわかったら残高証明書(必要なら取引履歴も)を発行してもらいましょう。
生命保険は亡くなった人が契約者なのか被保険者なのかを確認しましょう。保険金の受取人が指定されていれば相続財産にはならず、受取人固有の財産になります。
Q. 亡くなった父に借金があったか調べる方法はありますか? 【借金の調査】
亡くなった方に借金があったかは金融機関のカードや通帳の履歴をはじめ信用情報などで調べることができますが、友人に対する借金や保証人になっていたかどうかを正確に把握するのは難しいでしょう。
もし借金が多ければ相続放棄を検討する必要があるので、早めにかつ慎重に調べて、できる限り正確に把握することを目指しましょう。
父は亡くなるまで自宅兼事務所で工務店を経営していました。借り入れはあったと思いますが、私は家業を手伝ったことがないので内容は把握していません。
父に借金があったかどうか調べる方法はありますか?
借金の調査は、まずはこの辺りを調べましょう。
☑ カード(クレジット)
☑ カード(キャッシング)
☑ 通帳の履歴
☑ 請求書や督促状
☑ 不動産の登記事項証明書
登記事項証明書で不動産が担保に入っているかどうかを確認できます。
ご商売をされていた場合は、取引先に対する債務があるかもしれないので帳簿を確認しましょう。申告や記帳を頼んでいた税理士さんがいれば、早めに問合せて債務の有無を確認してください。
もし借金が多ければ相続放棄を検討しましょう。被相続人が亡くなったことと、それにより自分が相続人となったことを知った時から3ヶ月以内が期限(原則)です。
借金がありそうなら早めにかつ慎重に調査することが必要です。
信用情報を調べる
次に信用情報を調べましょう。信用情報機関は3つ(KSC・JICC・CIC)あります。
金融機関によっては、2つの信用情報機関に加入している場合もありますが、銀行はKSC・JICC、消費者金融とカード会社はJICC・CICに加盟していると概ね考えてください。
信用情報を確認することで、銀行を含む金融機関に対する借り入れはおおよそ把握することができます。
開示請求の際は本人確認書類や相続関係を証明する戸籍などが必要になります。
友人から借りていた場合
友人からお金を借りていた場合は借用書などを作っていないことが多く、簡単に調べる方法はありません。
保証人になっていた場合
借金だけでなく、亡くなった人が保証人になっていなかったかも調べたいところですが、借主の返済が滞ってはじめてわかることがほとんどだと思います。
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司法書士・行政書士 伊藤 薫