遺言がない場合は、法が定める基準で分けることになります。これを法定相続と言います。ただし、各相続人が受け取ることができる割合しか定められていないため、相続人全員で誰が何を受け取るのかについて協議をし合意をする必要があります。
この話し合いのことを遺産分割協議(いさんぶんかつきょうぎ)といいます。
遺産分割協議の進め方・遺産分割協議書の作り方について詳しく見ていきます。
目次
遺産分割協議の進め方
Q. 遺産分割協議って具体的に何をするの?
遺産をどう分けるかを相続人全員が合意をして、その内容を書類にまとめることが遺産分割協議のゴールです。
遺産分割協議をスムーズに進めるために知っておきたいポイントは次の3つです。
☑ 相続人全員が納得できるか
☑ 話し合いに参加する人は適切か
☑ 遺産をどう分けるのか
遺産毎に価格の差があっても相続人全員が合意できれば問題ありません。
遺産分けの話し合いは具体的にどんなことをすればいいですか?
誰が遺産の何をいくら受け取るのかを話し合うことを遺産分割協議と言います。
そして、決まった内容を書類にまとめることが遺産分割協議のゴールです。作成するその書類を遺産分割協議書と言います。
遺産分割協議書には実印を押して、印鑑登録証明書とセットで使います。
遺産分割協議をスムーズに進めるために知っておきたいポイントを紹介します。
相続人全員が納得できるか
遺産分けの内容は相続人全員が合意する必要があります。多数決で決めることはできないので、全員が納得しやすい内容を目指すことが必要です。
話し合いに参加する人は適切か
相続人の中に未成年者がいれば親権者もしくは特別代理人が代わりに遺産分割協議に参加しなければいけません。親権者も相続人の場合は未成年者について家庭裁判所で特別代理人を選任してもらいます。
認知症で判断能力が十分でない方は成年後見人、行方不明の方は不在者財産管理人というように権限のある人が遺産分割に参加する必要があります。
法定相続人のほかに相続分を譲り受けた人がいれば、その人も遺産分割協議の当事者となります。
遺産をどう分けるのか
遺産の分け方にはいくつかの方法があります。
土地、預金、株式という遺産を3人の相続人がそのまま1つずつ取得するような分け方を現物分割と言います。
遺産が簡単に分けることができる現金なら問題ありませんが、不動産などの場合、相続人の数だけ遺産があるのか、また同じような価値の遺産なのかなどを検討する必要があり、簡単にはいかないことが多いものです。
他には換価分割や代償分割という方法があります。不動産を複数の相続人が共有する共有分割という方法もあります。
▷換価分割
実家を売却してその代金を子供3人で分けるような方法です。ただし、実家に相続人の誰かが暮らしている場合は、売却は簡単にはいかないでしょう。
▷代償分割
長男が1,500万円の価値の実家を受け取るかわりに、長男が次男・三男にそれぞれ500万円ずつ支払うような分け方です。
分割方法 | 方法 | 具体例 |
---|---|---|
現物分割 | 不動産、預貯金、株式などの 遺産を各相続人がそれぞれ 受け取る方法 | 自宅は長男が、 預貯金は次男が、 株式は三男が受け取る |
換価分割 | 遺産を売却して その代金を各相続人で 分ける方法 | 自宅を売却して その代金を 子供3人で分ける |
代償分割 | 受け取る遺産の 価格の差を埋めるために、 対価を支払う方法 | 長男が1,500万円の価値の 自宅を受け取るかわりに、 長男が次男、三男に それぞれ500万円ずつ支払う |
どの方法も遺産毎に価格の差があっても相続人全員が合意すれば問題ありません。
コラム|一般家庭ほど相続争いが増えている!?
「相続争い 一般家庭で」という見出しで日経新聞に司法統計の記事が出ていました。
5千万円以下の遺産をめぐる相続争いが増加している。今年の1~9月に解決した相続争いのうち遺産5千万円以下のケースは全体の約8割を占め、比率は過去10年間で5ポイント高まった。年間の件数も10年間で5割増え、件数がほぼ横ばいの遺産5千万円超とは対照的だ。
日経新聞
一般家庭でどうなのか?というと、一般家庭ほど相続争いが増えているということのようです。
理由として考えられるのは、相続がメディアで取り上げられる機会が増えたことで相続する側の権利意識が高まったことや財産が少ない人ほど遺言や生前贈与といった相続対策をしていないことが背景にあると記事はまとめていました。
データを見ると遺産5千万円以下のケースが相続争いの約8割を占めていますが、そもそも遺産5千万円以下のケースは母数が多いと思うので、相続争いの起こる確率は遺産5千万円超と差があるのかはわかりません。
ちなみに令和3年の司法統計によると、家庭裁判所での遺産相続事件のうち75%は遺産額5千万円未満、1千万円未満でも32%を越えています。
こういう状況をみると、「うちは財産が少ないから相続争いなんて関係ないよ」と相続対策(遺言や生前贈与)をしないでいると・・・、母数が多いだけに相続争いがますます増えるのは簡単に想像できます。
そもそも、遺産分けの話し合いがすんなりとまとまらないのには、それなりの事情があります。
- 遺産がわけにくい
- 相続人の人間関係が複雑
- 既に不公平感が生まれている etc.
亡くなった方が資産家で分け合う遺産が多ければ、平等に遺産を分けられなくても各相続人がそれなりの財産を手に入れることができますが、主な遺産が自宅だけという場合は少しの不平等であっても遺産分割協議をまとめることは難しいのかもしれません。
遺産が現金だけで分けやすくても相続人間の関係性が薄いと話し合いが難航することがあります。そもそも話し合いをすること自体が難しいケースもあります。またこれまでの不公平感を相続を機に解消したいという思惑が相続人にある場合も話し合いをまとめるのは難しいでしょう。
仮に3人の子どもが相続人の場合は、原則は3分の1ずつ同じ割合で相続しますが、被相続人から生前贈与や遺贈を受けている子供がいる場合は、現在の遺産のみを対象として、同じ割合で遺産を分けたのでは納得できない相続人もいるでしょう。
また同居して親の面倒をみてきた、親の介護をしたといった事情があれば、同じ割合で分けることに納得いかない場合もあるでしょう。法定相続分通りに同じ割合で分けようとしてもすんなりいかないことを理解しておく必要があります。
Q. マイナスの財産はどうわけるの? 【住宅ローンを引き継ぐ場合】
遺産分けというと、不動産は誰がもらうとか、預貯金は誰がもらうとか、どうしてもプラスの財産をどう分けるのかということに目がいきますが、忘れてはいけないのがマイナスの財産です。
お父さんが亡くなって相続人は二人の息子だけという場合で、お父さんの遺産は自宅(プラスの財産)と自宅を購入するために借りた住宅ローン(マイナスの財産)だけだったケースを見てみましょう。
先日父が亡くなりました。相続人は兄と私の2人です。話し合いの結果、実家の土地と建物は父と同居していた兄がもらうことになり、残った住宅ローンも兄が引き継ぐことになりました。
その内容を遺産分割協議書にし、実家の名義も兄に変えて、揉め事もなく相続手続きが済んだと安心していたのですが・・・
ある日、私あてに金融機関から住宅ローンの支払いについて、お知らせが届きました。
返済が滞っているので、私に支払いを請求するという内容でした。どうやら兄はここ数ヶ月間ローンの支払いが出来なくなっていたようです。
遺産分割協議書を見せて「私は実家をもらっていないし、住宅ローンだって兄が引き受けたんだから、自分には関係ない」と主張できませんか?
住宅ローンのようなマイナスの財産は、相続人間で誰が引き継ぐのか決めることは有効ですが、それを金融機関(債権者)に主張することができません。
借金のようなマイナスの財産は、法定相続人が法定相続分に従って、法律上当然に借金を引き継ぎます。
仮に住宅ローンの残金が2,000万円であれば、相続人である二人の子供は当然にそれぞれ1,000万円の住宅ローンを引き継ぐというわけです。
例えば、遺産分割協議で意図的に特定の相続人に全ての借金を相続させて、その相続人が自己破産をしてしまうと、お金を貸している金融機関(債権者)が困ってしまうので債権者を守るためです。
実際には、金融機関(債権者)の同意があれば、法定相続と異なる遺産分割も可能なので、免責的債務引受(めんせきてきさいむひきうけ)という方法で特定の相続人だけが借金を引き受けることもできます。
まとめ
住宅ローン(借金)のようなマイナスの財産は、相続人間で誰が引き継ぐのか決めることは有効ですが、金融機関(債権者)にそれを主張することができません。
住宅ローンを引き継いだ長男が滞りなく返済を続けていれば、金融機関からAさんが請求されることはなかったわけですが、無事に終わったはずの遺産分割協議が思わぬところで、落とし穴にならないように対策を取られることをおすすめします。
Q. 遺産分けの話し合いがまとまりそうにありません -調停・審判の手続きについて-
【Aさん】
先日、母が亡くなりました。
遺言を遺していないので、兄妹で遺産分けの話し合いをしなければいけないのですが、父の相続の時から妹達との関係がギクシャクしてしまい、話し合いがすんなりまとまるとは思えません。
そうなんですね。もし妹さん達と直接話しにくければ我々司法書士にはできませんが、弁護士さんならAさんに代わって話し合いをすることができます。
もし、必要でしたら弁護士さんをご紹介することもできます。
遺産分けの話し合いがまとまらない場合の手続きの流れを簡単にご説明します。
遺産分けの話し合いがまとまらない場合
遺産分割協議がまとまらなければ、家庭裁判所に調停を申し立てて、中立的な立場の第三者を交えて遺産分けについて話し合います。
調停で話し合いがまとまらなければ、審判に移行し、裁判所の判断にゆだねることになります。
遺産分割調停について
裁判官が作成する調停案に、全相続人が同意すれば調停成立となり、その内容のとおりに遺産分割が行われます。
ただし、ひとりでも調停案に反対する相続人がいれば調停は不成立になります。
遺産分割審判について
調停は相続人間の合意を成立させることを目的とした手続きですが、遺産分割審判は、裁判所が客観的な立場から遺産分割の解決方法を示す手続きです。
ただし、審判までいったとしても結局は法定相続分で分割することになる可能性があります。時間や費用もかかります。
ちなみに、遺産分割そのものを裁判で争うことはできませんが、裁判で解決する部分もあります。
遺産の範囲に争いがある場合
➡遺産確認訴訟
相続人の範囲に争いがある場合
➡相続人の地位不存在確認訴訟
遺言の有効性を争う場合
➡遺言無効確認訴訟
【Aさん】
遺産の内容や相続人の範囲には争いはないので、調停でまとまればいいのですが、手続きは大変そうですね。
時間もかかりそうだし、自分でやろうと思っていましたが気が重くなってきました…。弁護士さんを紹介してもらうかもしれません。
まとめ
遺産分けの話し合いがまとまらなければ訴訟ではなく、家庭裁判所の調停や審判で解決することになります。
話し合いがこじれると最悪の場合、関係修復が不可能になることがあります。
相続人だけで話し合いをまとめることが難しそうなら、できるだけ迅速に問題を解決するためにも、一度弁護士さんに相談してみることをお勧めします。
Q. 遺産分割前に当面の生活費だけでも引き出せませんか?
【Aさん】
先日父が急死しました。持病もなかったので相続の準備はまったくしていませんでした。
母の当面の生活費だけでも父の銀行口座から引き出したいのですが、海外に住んでいる兄の書類を揃えるのに時間がかかって困っています。
遺産分割前の預貯金の払戻し制度
相続した預貯金について、相続人間の公平性を図りつつ、生活費や葬儀費用の支払などの資金需要に対応できるように、遺産分割前でも払い戻しが受けられる預貯金の払戻し制度が2019年7月1日からスタートしました。
制度が創られた背景
遺産分割が終了するまでは、各相続人単独では預貯金の払い戻しができませんが、生活費や葬儀費用など相続が発生してすぐに現金が必要な場合があります。
遺産をどう分けるかということに影響しないような、当面の費用のようなものまで払い戻しできないことが課題になっていました。
~払戻しができる金額~
各相続人は、口座毎に次の計算式で求められる額については、家庭裁判所の判断を経ずに単独で払戻しを受けることができます。
相続開始時の預金額×1/3×払戻しを行う相続人の法定相続分
※同一の金融機関からの払戻しは150万円が上限になります
Aさんのケースで考えてみましょう。
相続開始時のX銀行の口座残高が800万円だった場合
☑ Aさんが引き出せる金額
800万円×1/3×1/4=約66万円
☑ お母さんが引き出せる金額
800万円×1/3×1/2=約133万円
~払戻しに必要な書類等~
☑ 被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本など
☑ 相続人全員の戸籍謄本
☑ 預金の払戻しをする相続人の印鑑登録証明書・本人確認書類
※払戻しができる金額や必要書類の詳細は口座のある金融機関にご確認ください
まとめ
法律が改正され、遺産分割前でも、各相続人は一定額については、単独で裁判所の手続きを使わずに、預貯金の払戻しができるようになりました。
すぐに遺産分割の話し合いができない場合(音信不通の相続人がいる等)は便利な制度ですが、遺産分割をスムーズに進めるために、払戻した預金を何に使ったのかをきちんと説明できるように、領収書やメモを残しておく必要があります。
コラム|預貯金も“遺産分割”の対象になりました
「預貯金も遺産分割の対象」
新聞等でこんな見出しを目にされた方も多いのではないでしょうか。
どう思われましたか?一般的な感覚としてはどうなんでしょう?
「遺産って預金しかないんだから当然、遺産分割をするよね?」、「え!今までは対象じゃなかったの?」という感覚じゃないでしょうか。
過去の最高裁判決で「預貯金などの分けることができる債権(預金債権)は相続分に応じて分割される」とされていたため、実は預貯金は遺産分割の対象ではなかったというわけです。
そこで遺産分割協議が完了する前でも銀行に自分の相続分に応じた預金を引き出したいといえば応じてもらえたということなんです。
ただし、そうはいっても相続分と異なる遺言が存在する可能性もあるため、実際のところはすんなり応じてくれる金融機関は少なかったのではないかと思います。
新聞記事では今回の裁判は相続人のうちの一人がもう一人の相続人に預貯金も遺産分割の対象となるということを争ったという内容で、どうして最高裁までと思っていましたが判決を読むとその理由が良くわかりました。
預貯金を遺産分割の対象にするかしないかで、相続できる金額が約2,000万円変わってくるからなんです。
養子縁組・代襲相続が絡んでいるようですが、相続人は被相続人(亡くなった方)からみると甥姪にあたる二人です。仮に相続人をAさん、もう一人の相続人をBさんとします。
なぜ約2,000万円の差が出てしまうのかというと、Bさん(厳密には被相続人よりも先に亡くなったBさんの親)は生前に贈与(約5,500万円)を受けていたので、約4,000万円の預貯金が遺産分割の対象とならず法定相続分通りとなってしまうと、Aさんの取り分は約2,000万円、Bさんは約7,500(5,500+2,000)万円となってしまいます。
もし預貯金も遺産分割の対象となれば、生前に贈与されていた約5,500万円(特別受益)について相続財産に持ち戻すという考え方ができるので、生前贈与を含めた全体を遺産分割の対象とするとAさんは約4,000万円の預貯金全てを相続できる可能性があるケースだったようです。
仮に相続財産が預貯金ではなく不動産であれば遺産分割の対象になるので、どうして預貯金は対象にならなかったのか?というのが一般的な感覚じゃないでしょうか。
「預貯金も遺産分割の対象になる」ということにとどまらずに、例えば長男に多めに財産を遺してあげたいと思って生前に贈与をしていても「特別受益の持ち戻し」という相続人間の不公平感をなくすためのルールがあるということを頭に入れておく必要がありそうですね(2017年2月)
コラム|とりあえず「共有」にするのはもったいない!
共有にすると揉める火種になるというのが不動産を共有することをおすすめしない最大の理由ですが、他にも理由があります。それはもっと単純な話で、将来的に土地を分けて(分筆)、共有状態を解消するつもりなら、とりあえず共有の相続登記をするのは手間と費用が余計に掛かってしまうからです。
土地や建物を相続する時、例えば兄弟で持分を2分の1ずつというように共同で所有(共有)することができます。
共有はあまりおすすめできませんが、現在売りに出している、近いうちに手放す予定だという事情があるときはよくあることです。ただし、2人、3人ならまだしも、4人、5人と共有する人数が多くなると売却や登記の手続きが煩雑になるのでやはり考えものです。
一方、売却する予定はなく、いずれは土地を分けてそれぞれ単独で所有したいという場合もあると思います。
この場合、今すぐは土地を分けずに、とりあえず遺産分割協議をして相続人が共有する相続登記をするのはあまりおすすめできません。「うちは兄弟の仲がいいから共有にしていても特に問題は起きないし」とか「土地を分ける(分筆登記)には測量に費用がかかるからそれぞれで所有にする必要が出てから分けよう」という気持ちはわかります。
ひとまず共有の相続登記をするのは、はじめに土地を二つに分けた後でそれぞれ単独所有となる相続登記をするのと比べて手間と費用が余計に掛かってしまうことがおすすめできない理由です。
なぜ手間も費用も余計にかかってしまうのか?は登記の手続きの流れを理解するとよくわかります。
1.先に土地を二つに分けた場合
手続きは次のようになります。
- ①土地を二つに分ける【分筆登記】
- ②遺産分割協議をして、それぞれの土地をA、Bが単独で所有するような名義変更をする【相続登記】
2.土地を二つに分ける前にとりあえず共有で相続登記をした場合
- ①A、Bが共同所有するように土地の名義変更をする【相続登記】
- ②土地を二つに分ける【分筆登記】
- ③土地の片方をAの単独名義にするため、Bの持分を「共有物分割」を原因としてAに移転する【移転登記】
- ④同じようにもう一方の土地をBの単独名義とするためにAの持分をBに移転する【移転登記】
※遺産分割協議をせず、法定相続分で①の登記をしていた場合、③は「共有物分割」ではなく「遺産分割」になります。
2.の方が手間と費用が余計にかかる理由は、A、B共有名義の土地を単に2つに分けた状態では、どちらの土地も二人の共有のままだからです。それぞれを単独所有にするために持分を移転する必要があるので手間と費用が余計にかかってしまうというわけです。
美味しいものは仲良く分けた方がより美味しく感じるような気がします。分けやすいように先に切っておくといいのはバームクーヘンに限らないみたいです。
遺産分割協議書の作り方
遺産分割協議書の文例
遺産分割協議書の記載例を紹介します。これは1枚の書類に相続人全員が署名・押印をする形式ですが、相続人それぞれが署名・押印する形式でも構いません。
遺 産 分 割 協 議 書
被相続人 ○○ ○○
最後の本籍 ○○県○○市○○令和○年○月○日に死亡した○○ ○○の遺産について、相続人は次の通り分割することに合意する。
1.相続人○○ ○○は、次の遺産を取得する。
○○ ○○1.相続人○○ ○○は、次の遺産を取得する。
○○ ○○以上のとおり、相続人全員による遺産分割協議が成立したので、これを証するため本協議書を作成し、次に署名押印する。
令和 年 月 日
相続人 住所
氏名 ○○ ○○ 印相続人 住所
遺産分割協議書の記載例
氏名 ○○ ○○ 印
実印と印鑑登録証明書を準備しましょう
遺産分けの話し合いがまとまったら決まった内容を書類にまとめて、相続人全員が署名・実印で押印をします。実印の印鑑登録証明書を各自取得します。相続人の中に実印の登録をしていない人がいれば市区町村で早めに手続きを済ませておきましょう。
Q. 海外に住んでいる場合、印鑑登録証明書はどうするの?
相続人の中に海外に居住している人がいる場合、その人の印鑑登録証明書は発行されません。その場合は印鑑登録証明書の代わりになる署名証明を取得します。
不動産を相続する方は在留証明も取得します。在留証明に本籍を記載してもらうためには戸籍謄本が必要になります。
遺産分割協議は誰が何を受け取るのかを相続人全員で話し合って合意をする必要があります。合意が得られたら、その内容を書面にまとめます。これが遺産分割協議書です。
遺産分割協議書には相続人が署名し実印を押印して印鑑登録証明書を添付します。
相続人が海外に住んでいて日本に住所がない場合は印鑑登録証明書を取得することができません。その場合は、どうすればいいのでしょうか。
☑ 署名証明を取得します。
署名証明は日本に住民登録をしていない海外に在留している方に対し、日本の印鑑証明に代わるものとして、申請者の署名(及び拇印)が確かに領事の面前でなされたことを証明するものです。
相続人が遺産分割協議書を領事館に持参します。相続人が領事の面前で署名した遺産分割協議書と領事が発行する証明書を綴り合わせて割り印を行ったものが署名証明(形式1 綴り合わせ型)です。
※現地公証人による宣誓供述書にする方法もあります(参考|月報 司法書士2024.3 No.625 65ページ)
署名証明の取得方法
☑ 取得場所
居住地の日本国大使館、日本国領事館
☑ 必要書類
- 日本国籍を有していること及び本人確認ができる書類(有効な日本国旅券等)
- 形式1の綴り合わせによる証明を希望する場合、日本から送付されてきた署名(及び拇印)すべき書類(署名部分は空欄のまま持参します)
☑ 費用
1通あたり日本円に換算して1,700円程度
ポイント
印鑑と違って署名を照合するのは法務局でも至難の業です。印鑑登録証明書のような単独の署名証明(形式2)もありますが、遺産分割協議書の場合は綴り合わせ型の署名証明(形式1)をおすすめします。
※本資料は外務省の公式ウェブサイトを参考にまとめました。取得方法の詳細については在外公館にお問合せください。
遺言を作成することで遺産分割協議書を作成する相続人の負担を軽減することができます。
ご相談・お問合せ
司法書士・行政書士 伊藤 薫