サービス案内

もしものときに本当に役に立つエンディングノートの作り方

目次

知ってますか?エンディングノートと遺言の違い

まずはエンディングノート全般の知識から理解していきましょう。エンディングノートに対してこんな誤解をしていませんか?

  • 遺言と同じようなものでしょ?
  • 高齢者が書くものでしょ?

エンディングノートとは

エンディングノートとは、自分の経歴や思い出、もしものときに連絡して欲しい友人の連絡先、葬儀や墓の希望、尊厳死や延命治療に関する自分の考えなどをまとめておくノートのことです。書店に行けば多種多様なエンディングノートが並んでいます。

エンディングノートも様々

関連|目的にあったものを選んでいますか?エンディングノートの正しい選び方

遺言との大きな違い

エンディングノートに相続(遺産分け)に関することを記載しても、遺言のような法律上の効力はありません

ありませんが、遺言に盛り込めない想いや情報をご家族や身近な方に伝えることに役立てることができます。

例えば、こういった意思を明記しておくことで、残された家族や親族の間で無用なトラブルを避けることが期待されています。

  • 家族葬にしてほしい
  • 墓は質素なものでいい
  • 延命治療はしないでほしい etc

エンディングノートに書いておけること

遺言と違ってエンディングノートに書いておけることは多岐に渡ります。一例として、日本で一番売れているであろうコクヨのエンディングノート「LIVING & ENDING NOTE BOOK」の目次をご紹介します。

「LIVING & ENDING NOTE BOOK」
自分のこと自分の基本情報(住所・生年月日など)
資産預貯金について
口座自動引落しについて
有価証券・その他の金融資産について
不動産について
その他の資産について
借入金・ローンについて
クレジットカード・電子マネーについて
保険について
年金について
気になること携帯・パソコンについて
WebサイトのIDについて
宝物・コレクションについて
ペットについて
生活のことについて
家族・親族家族一覧
親族一覧
親族表
命日・親族メモ
冠婚葬祭メモ
友人・知人友人・知人一覧
その他の連絡先一覧
医療・介護健康管理について
告知・延命処置について
介護について
葬儀・お墓葬儀について
お墓について
葬儀・お墓メモ(家紋)
相続・遺言遺言書について
その他写真とデータについて
大切な人へのメッセージ
エンディングノートに書いておけること

関連|コクヨのエンディングノートを真剣に全ページ書いてみた

エンディングノートを書いておいた方がいい理由

司法書士なので仕事柄、遺言やエンディングノートに関わるのはごく自然な流れでした。でもまだ30代だったし、エンディングノートには終活のイメージしかなかったので自分にはまだ早い、僕もそう思っていました。

ところが、成年後見人としてもしものときを目の当りにしたことでエンディングノートの大切さを痛感することになりました。

成年後見人の経験からわかった本当に大切な3つのこと

成年後見人の仕事はご本人(成年被後見人)が亡くなるまで続きます。最期のときから大切なことを学ばせてもらいました。エンディングノートの大切さを痛感したのは成年後見人としての経験が原体験になっています。

「もしものとき」にあなたとご家族が後悔しないために大切なことはこの3つです。そう思うきっかけになったエピソードをご紹介します。

  • ①もしものときの希望を残しておくこと
  • ②書いて終わりにしないで、きちんと伝えておくこと
  • ③自分は大丈夫と思考停止にならないこと

施設入所からまだ数週間なのに|80代のAさん

認知症だったAさんは奥様がご病気で突然亡くなってしまい、ひとりでは自宅で暮らすことができなくなったので、行政の計らいで通所型の施設に特別に泊まれるようにしてもらって生活されていました。週に3日とかでは当然間に合わないので毎日です。本来は通っていく施設に毎日泊まってもいいというかなりの特別対応で生活されていました。

とはいうものの、いつまでもそのままというわけにはいきません。僕が成年後見人に選ばれたのは、Aさんに代わって安心安全に暮らせる施設を探して入所の契約をするためでした。

すぐに探しはじめましたが、成年後見人といってもあてもコネも特別なものは何もありません。Aさんは沢山の財産をお持ちではなかったので、ご自宅と同じ市内にある特別養護老人ホームすべてに申し込み書を送りました。申し込みといっても空きが出たら順番に連絡をもらえるという程度のものです。

しばらくして、ある施設から「空きがでたのでどうですか?」という連絡がありました。予想していたよりもかなり早い連絡でAさんはついてるなぁと思った記憶があります。そこからは早かったですね。とんとん拍子にいろいろなことが進み、ある施設に入所することができました。

お世話になっていた通所型の施設や行政の関係者もほっとされているのがよくわかりました。僕はこのために選任されたようなものなので、ひとまずは肩の荷をおろせた心境でした。

入所されて数週間たったある日。

「そろそろ1ヶ月になるのかなぁ。Aさんのお顔でも見に行こうかな?」そんなことを思っていた矢先でした。施設からAさんの容態が急変したのですぐに来てくださいと突然、連絡がありました。

認知症でしたが、急に深刻な事態になるご様子はなかったのであわてて施設に向かいました。施設に着くと、Aさんはベッドで寝ていましたが僕が知るAさんとはまるで別人のような顔つきで、特別な理由がないのにここまで急激に変わってしまうのか?と驚きを隠せませんでした。

慌てて飛び出してきたので、一度事務所に帰ろうと事務所に向かっている途中で携帯がなりました。Aさんが亡くなったという知らせでした。

この施設に僕が決めなければ、こんなにも早くAさんが亡くなることはなかったんじゃないか?僕の仕事はAさんに代わって安心安全に暮らせる施設を探すことだったのに、これじゃまったく逆じゃないか。そんなことを考えました。

そう思う一方で、僕は家族ではなく第三者の後見人です。まさか自分でAさんの介護することはできません。また、申込みをした施設から空きが出たという連絡があればそのまま入所の手続きをすることが適切だし、職務を全うしたという自信はあります。

それでも、もしあの施設に申し込みをしてなければ・・・とやっぱり考えてしまうんです。それと、こうも思いました。

Aさんは最期のときをどこで過ごしたかったんだろう?

僕がAさんとはじめてお会いしたのは、成年後見人の申し立てのときなので、そのときにAさんに直接聞くのでは遅いのです。元気なときのAさんの気持ちを知ろうと思えば、僕と出会うよりもずっと前にエンディングノートなどに希望を書いておいてもらう。ご家族のいないAさんにはこれしか方法はありません。

成年後見人の仕事を始めるにあたってご自宅で通帳や重要な財産を確認しましたが、残念ながらAさんのエンディングノートを見つけることができませんでした。だからAさんが最期のときをどこで過ごしたかったのかはわかりません。

「妻がいるから大丈夫」とAさんが思っていたかどうかわかりませんが、奥様がご病気で先に亡くならなければAさんの最期のときは違っていたと思います。

さらに考えてしまうのは、もし自分の親だったらどうだろう?ということです。

  • 自分の手で介護をしてあげれば良かった。
  • 費用が掛かっても他の施設を探せば良かった。

きっと、もっとこうすれば良かったと考えたはずです。

家族なら選択肢が多い分だけ、余計に後悔の気持ちでいっぱいになるのは目に見えています。Aさんの最期のときを目の当たりにしたことで、エンディングノートを両親に書いて欲しいという僕の思いは切実なものになりました。

胃ろうをしないという選択は・・・|90代のBさん

Bさんは胃ろうをされていました。胃ろうをすることを決めたのはお子さんです。Bさんが希望していたかどうかはわかりません。でも胃ろうをしないということは長くは生きられない。そういうことです。

本人が元気なときにご家族に胃ろうをして欲しくないという話をしていて、家族もそれに納得している。そうじゃなければ、胃ろうをすることになる。これが現実じゃないでしょうか。

Bさんは娘さんが会いにきても娘だとわかりません。でも胃ろうをされているので長生きされています。

だから娘さんはことある毎に僕に聞いてきます。

「こんな状況で長生きできていることは母にとって幸せなんでしょうか?どう思いますか?」

もちろんBさんが幸せかどうかは僕にはわかりません。

僕の母方の祖母もそうでした。胃ろうをしていた祖母は僕の4人の祖父母の中で一番長生きしました。Bさんとさほど状況の変わらなかった祖母の晩年が幸せだったのかはわかりません。幸せかどうかなんて本人にしかわかりませんよね。

Bさんや祖母が胃ろうをして長生きしたいと思っていたら、幸せでしょうし、もし胃ろうを望んでいなかったとすれば幸せじゃない、そう思います。元気なときに本人がどう考えていたのか?確認しようのない状況では誰にもわかりようがありません。だから娘さんにお母さんが幸せかどうか?を問われるといつも返事に困っていました。

Bさんや祖母のことで思うのは、エンディングノートを残しておいて欲しかったということですが、もしBさんがエンディングノートを残していて、そこに「胃ろうをして長生きしたい」。もし、そう書いてあれば娘さんがどれだけ救われたか。

ただし、逆のことが書いてある場合も考えられます。Bさんは胃ろうを望んでいなかったけど、してしまった。これはかなり怖いです。怖すぎます。

セミナーで参加者の反応をみていると延命治療をして欲しくないという方が多いので、悪い方の結果が起きてしまう可能性が高いと思います。

もうわかりますよね。エンディングノートを書いておくことで残された家族の負担を軽くすることが期待できますが、書いておくだけでは足りなくて、家族や大切な人とその内容を早めに共有しておかないとまったく意味がないということです。本人のために良かれと思ってした延命治療を本人が希望していなかったとしたら、それは悲劇です。

でも本人の希望はわかっていても親には一分一秒でも長生きして欲しいと思ってしまうのも子供の想いなんですよね。だから延命治療の希望をエンディングノートにしっかり書いておいたとしても、それが叶うかどうかは本当に難しいというのが現実のようです。

娘さんから聞いた話なのでどこまでが真実なのかはわかりませんが、Bさんがお元気なときは娘さんと本当にいろいろあったみたいです。でも月1回のペースでお二人にお会いしていると本当にそんなことがあったのか?と思ってしまうほどでした。

介護の時間は親子の立場が逆転しているかのようで、娘さんのBさんに対する感情が少しずつ変わって行くのが手にとるようにわかりました。だから介護の日々というのは親子の過去の関係を修復してくれる不思議な時間だと確信しました。もう少し早かったらと思うのは僕のエゴなんでしょうか。

自分は大丈夫という勘違い|40代のCさん

自分は大丈夫。元気なときはみなさんこう思うんです。

  • まだ元気だから大丈夫
  • まだ若いから大丈夫
  • 家族がいるから大丈夫

僕だってそう思います。だから自戒を込めて書いています。僕が成年後見人に選ばれたとき、Cさんはまだ40代で未成年の娘さんと暮らしていました。

まだお若いのになんで?と思わずにはいられませんでしたが、判断能力が衰えてしまったのは加齢によるものではなく、病気によるものでした。

まだ若いから大丈夫」とCさんが考えていたのかはわかりませんが、エンディングノートは当然のように書かれてはいませんでした。

40代だろうが子供が小さくても今は元気だとしても、もしものときは突然やって来るということをCさんの成年後見人に就任したときにまざまざと見せ付けられました。

もしものときは突然に

もしものときは突然やってきます。僕の祖父のときもそうでした。

夜はいつも通りでしたが、朝母が起きると祖父が廊下で倒れていました。

「転んだだけだ」と祖父は言うけど様子が変なので病院に連れていくと・・・朝方、脳梗塞が起きていたことがわかりました。それから祖父は施設と病院を行ったり来たりで自宅に戻ることなく亡くなりました。

当時、僕は大学生で一人暮らしをしていたのですが、たまたま就職のことで実家に帰る用事があったので倒れる前の夜、祖父と話すことができました。

  • 「ただいま」「おかえり」
  • 「おやすみ」「おやすみ」

こんな何気ないやりとりが祖父と普通に話せる最期の会話になるとは思ってもみませんでした。あまりにも突然のことだったので、介護や延命治療の希望など祖父の気持ちはまったくわからずしまい。家族が代わりに決めるしかなかったです。

もしものときはずっと先のような気がするけど、来るときは一瞬のことなんですよね。こんなことは僕が言うまでもなくみなさんわかっていると思いますが。

明日、意識不明になったら?を16の問いから考えてみる

もしものときに家族に面倒をかけたくないからエンディングノートを書いておきたい。そう考える方が多いようです。

エンディングノートを書いておきたい理由
第1位 家族に面倒をかけたくない

ライフメディアリサーチバンク調べ

もしも明日脳梗塞で意識不明になったらどうなりますか?という16の質問を用意しました。

もしものときに家族に面倒をかけたくないと思っている方は、現状を把握するためにぜひ一度トライしてみてください。

Q1.緊急時の連絡先を決めていますか?・決めている ・決めていない
Q2.医療費の支払いはどうしますか?・お願いできる人がいる ・いない
Q3.通帳やカードはどこに保管していますか?・把握している ・把握していない
Q4.預金はありますか?・ある ・ない
Q5.保険に加入していますか?・加入している ・加入していない
Q6.飼っているペットはいますか?・いる ・いない
Q7.介護をしてくれる人はいますか?・いる ・いない
Q8.成年後見制度を知っていますか?・知っている ・知らない
Q9.延命治療について考えたことがありますか?・ある ・ない
Q10.どんな葬儀を希望しますか?・考えている ・考えていない
Q11.お墓はありますか?・ある ・ない ・わからない
Q12.携帯電話やパソコンのデータ、
SNSのアカウントはどうなりますか?
・考えている ・考えていない
Q13.財産を遺したい人はいますか?・いる ・いない
Q14.誰が法定相続人かわかっていますか?・わかっている ・わかっていない
Q15.遺言を準備していますか?・準備している ・準備していない
Q16.エンディングノートを託せる人はいますか?・いる ・いない
もしも明日脳梗塞で意識不明になったらどうなりますか?という16の質問

いかがでしたか?

  • これなら面倒をかけなさそうだから自分は大丈夫
  • こんなときだから少しは面倒をかけてもいいかな

どちらでもいいと思います。もしものときをイメージすることがスタートです。

みなさんがエンディングノートを書いておきたい理由は何ですか?

エンディングノートにはもしもの時に備えるという役割があります。エンディングノートを書いておいた方がいいと頭ではわかっているのに書けないのは、もしものときなんてずっと先のことと自分事になっていないからです。

平均寿命は延びていますが、もしものときに年齢は関係ありますか?

もしものときは突然やってきます。だからエンディングノートが必要だと思うなら何歳で書くのがいいのかを考えることは意味はありません。またこれからの生き方を考えるきっかけにエンディングノートを活用するなら高齢になってからよりも若いうちに書く方が良いと思いませんか?

本当に役に立つエンディングノートを作るための9箇条

家族の助けになるエンディングノートを書いて、もしものときに備えませんか?

もしもに備える目的でエンディングノートを書くときに重要なポイントがあります。ここを理解してから書かないと効果は期待できないので、まずはそのポイントから理解しておきましょう。

  • ①書きにくいからこそ医療と介護のページから書こう
  • ②エンディングノートは本音で書こう
  • ③必要最小限の言葉の意味を理解してから書こう
  • ④正確な情報を元に書こう
  • ⑤個人情報は書きすぎない
  • ⑥遺言書の有無や保管場所を書いておこう
  • ⑦見た目や形式にこだわらない
  • ⑧定期的に見直して情報の鮮度を保とう
  • ⑨エンディングノートを書くことはスタートです

①書きにくいからこそ医療と介護のページから書こう

人生の締めくくりに!と意気込むと書いておきたいことが多くなるのは仕方がありませんが、エンディングノートは全部のページを書こうとするとまず書けません。

エンディングノートは書く項目が多いので、全体像を目の当たりにしてこんなにあるんだと引いてしまって、氏名・住所、生年月日あたりで止まってしまう人が多いようです(苦笑)。

エンディングノートが活躍するのは書いた人の緊急時や亡くなった後です。

胃ろうをして良かったのか?しない方が良かったのか?と、亡くなった後まで悩み・葛藤されているご家族を成年後見人として見てきました。もしエンディングノートに胃ろうについてのお母様の希望が書いてあれば、どれだけご家族の救いになっただろうと思いました。

エンディングノートを書くことで、もしものときの家族の負担を少しでも軽くしたいなら負担の大きな項目から書き始めましょう。

もしものときに家族が最も知りたい、かつ本人にしかわからないところからです。優先順位が高いのは医療や介護のページ、中でも胃ろうをして欲しいのか?など延命治療の希望から書き始めるのをおすすめします。

②エンディングノートは本音で書こう

「認知症や寝たきりになった時、介護をお願いしたい人や場所は?」

・自宅で家族に介護をお願いしたい
・自宅で、プロのヘルパーなどに手伝ってもらいながら家族と過ごしたい
・介護施設や病院に入れて欲しい
・家族・親族の判断に任せる

といった介護の希望を書くページがエンディングノートにはあります。

家族に負担をかけたくないと考えて家族・親族の判断に任せるを選びたくなる気持ちはよくわかります。でも本人の希望・気持ちがわからなければ、

  • お父さんは自宅で介護をしてほしいはず
  • お父さんは施設で過ごしたいはず etc

お父さんはこうして欲しいはずとそれぞれが自分勝手に言い出します。

当たり前ですが家族といえども価値観が違うので介護の方針をめぐって家族が揉めてしまうことがあります。さらに遺産分けにまでその影響が及ぶこともあります。安易に家族・親族の判断に任せるを選ぶと家族が揉める火種になります。

もしものときに家族が知りたいのは、こうして欲しいというあなたの本音です。エンディングノートにはあなたの本音を書いてください。エンディングノートを書いておくよりも本音を直接伝えておいた方がよいのはもちろんのことです。

③必要最小限の言葉の意味を理解してから書こう

エンディングノートは、一度書いても気持ちが変われば何度でも内容を書き直すことができます。ただし前提となる最低限の知識がないままにエンディングノートを書いているとしたら、それは自分の意思を正しく表したことにはなりません。

例えば、エンディングノートにはリビングウイル、尊厳死などのあまり馴染みのない言葉が沢山出てきます。言葉のイメージだけでなんとなく記入してしまっていませんか?

また法定後見と任意後見、2つの成年後見制度の違いを理解していますか?法定後見の申立書に後見人の候補者を書く欄がありますが、必ずしも候補者が後見人に選ばれるわけではないことを知っていますか?

必要最小限の言葉の意味を理解してから書くことは本当に役に立つエンディングノートを作る最大のポイントかもしれません。

この章の最後にリビングウイル、日本尊厳死協会の会費や入会方法、成年後見制度の基本について簡潔にまとめました。エンディングノートを書き始める前に目を通しておくと安心です。

④正確な情報を元に書こう

せっかく書くならエンディングノートには正確な情報を書いておくのは当然ですよね。資産のページは通帳や証券を手元に準備して書きましょう。こういった書類を準備する過程でほとんど使っていない口座に気づいて、解約を検討するきっかけにもなります。

中でも複数の不動産をお持ちの方は権利証(登記識別情報)や納税通知書、登記事項証明書を準備しましょう。納税通知書だけではなく登記事項証明書もです。

自宅ならどんな書き方でも家族には伝わると思いますが、自宅以外の不動産、特に相続した田舎の土地など家族の中で自分しか把握していない不動産は登記事項証明書を見ながら所在や地番を正確に書いておきましょう。

⑤個人情報は書きすぎない

エンディングノートの空欄を正確な情報で埋めながら書き進めていくのは爽快な気分です。

情報がまとまってくるとこのエンディングノートを見ればすべてわかるようにしておきたいという欲が沸いてきます。例えば暗証番号やパスワードもまとめて書いておいたら便利だろうと思ってしまうわけです。

特に資産のページはあまりに詳しく書きすぎるとエンディングノートが個人情報の塊になってしまうので危険です。家族が口座や不動産の存在を漏れなく把握できる程度の情報にとどめておくのが無難です。

詳しく書きすぎないようにしつつも、自分にしかわからないことを書いておくことは大切です。

  • 借金の保証人になっている
  • 前婚で子供がいる etc

他にも色々あると思いますが、保証人になっているかどうかは自分しか知らないことの代表格かもしれません。前婚で子供がいることは保証人とは違って資産の情報と関連性が低いと思うかもしれませんが、こと相続に関してはとても重要です。

前もってわかっているのと知らないのでは相続が開始した後での対応は大きく変わってきます。直接話しておくことができればそれにこしたことはありませんが、伝えにくければエンディングノートに書いておくのも1つの方法でしょう。

⑥遺言の有無や保管場所を書いておこう

エンディングノートに遺産分けの希望を書いたところで「遺言」としての効力はありません。にもかかわらず「遺言について」というページがあるのは、遺言を作成しているのかどうか、作成していれば保管場所などを書き留めておくためです。

遺言を書いていない人が多いので「作成していない」にチェックして終わることがほとんどかもしれませんが、それじゃもったいない!

僕は遺言は全員が書いておく必要はなく、自分の財産を誰にあげるのかについて自分で確実に決めておきたい人が書いておけばいいと考えています。とはいっても遺言を書いておかないとトラブルになる可能性が高いケースはあります。関連|遺言が【ない】と危険なケースがあります

エンディングノートの家族や親族のページを書きながら、まずはこの2点を把握しておきましょう。

  • 自分の相続人は誰なのか?
  • 自分は誰の相続人になるのか?

これを把握した上で、遺言を作るかどうか?相続人の立場なら遺言を書いてもらっておく必要はないのか?について早めに考えておくことが大切です。

⑦見た目や形式にこだわらない

必要なときに書き留めておくノートがあって、結果的にエンディングノートに書いておきたい情報がそこに整理されていくのであれば、それが普通のノートでもまったく問題ありません。エンディングノートの見た目や形式なんてどうでもいいということ。大事なのはその中身です。

普通のノートに書いても問題ありません

見た目は普通のノート、でも中身は完璧なエンディングノートでした。

父が祖父母の葬儀の時に書いていたというメモを見せてくれました。それはメモというレベルではなく、ごく普通のノートに何ページにも渡って葬儀に関することがこまごまと書いてありました。見た目は100均で売っているような普通のノートでしたが、パラパラと見せてくれた中身は完璧すぎるエンディングノートでした。

祖母が亡くなる前の数日について日記的なことも書いてあって、さすがにそれには気が付かない振りをして返したけど、どんな内容なのかとても気になりました。

もう20年以上前になりますが、正月に祖母が入院していた病院を訪ねて結婚の報告をしたときが僕が祖母に会った最期になりました。僕にとっては祖母というよりも母代りだったので、祖母の最期について知りたいという気持ちもありましたが、やっぱり見てはいけないと思いました。

見た目や形はいわゆるエンディングノートには程遠いけど、父は父なりに父自身も気が付かないうちにエンディングノートに代わるものを準備している。父の書いたノートを見てそう思いました。

また、エンディングノートというネーミングなので当たり前のように紙媒体をイメージしますが、ネットバンキングやSNSがライフラインになっている現在ではノート(紙)だけで完結させるのは無理があるのかもしれません。

エンディングノートは手書きしないといけないと思いこんで、それが書けない理由になっているとしたらもったいないです。必要な時に必要な情報が確認できるならパソコンなどを活用してもまったく問題ありません。

⑧定期的に見直して情報の鮮度を保とう

体調や心境、交友関係などすべてが時間とともに少しずつ変化していくものです。エンディングノートに限ったことではありませんが、一度書いたところで時間とともに書いた内容はどんどん古くなっていきます。定期的に見直して情報を更新する必要があります。

自宅の防災用品の点検をしたときに古くなっていた非常食や防災グッズを買い直しましたが、賞味期限・使用期限が5年というものが多かったですね。毎年、見直すのがベストだとしても忘れてしまって2,3年経ってしまう人が多いのでしょう。それでも期限が切れてしまわないように、余裕を持たせて5年にしているんだろうと実体験として感じました。

エンディングノートも定期的に見直さないと意味がありません

理想を言えば年に1度、誕生日や年末年始に見直すのが良いタイミングだと思います。最近は出さないという方も増えてきましたが、年賀状のリストなら毎年見直すだろうと思うので、エンディングノートの緊急時の連絡先の見直しを中心に12月に全体を見直すのはいかがでしょう?

⑨エンディングノートを書くことはスタートです

書いておきたいと思ってもほとんどの人が書いていないのがエンディングノートの現実です。

もし書くことができたら、そこで満足するのは本当にもったいないです。エンディングノートを書くだけで十分なんてことはほとんどないからです。

亡くなった後の手続きはもちろん、入院や施設の入所手続きなど必要なときには自分ではできないこともありますが、葬儀やお墓の準備は前もって契約しておけるので自分の思い通りに準備しておくことができます。考え方次第ではエンディングノートに書いておくよりも自分でやってしまう方が早いし確実です。

書き終えることがエンディングノートのゴールではありません。書いておきたいほど気になっていることを実現するために、エンディングノートを書くことをきっかけにして行動を起こしましょう。

エンディングノートを書くことはスタートです。

知っていますか?リビングウィル

エンディングノートとリビングウイルを同じようなものと思っている方は少ないかもしれませんが、はたして正しく理解できているでしょうか?思い込みや勘違いをしたままでエンディングノートを書いてしまうと、自分の意思とはまったく違う結果を招く恐れがあります。

公益財団法人日本尊厳死協会のサイトでは、リビングウイルは次のように説明されています。

リビングウイル

「平穏死」「自然死」を望む方々が、自分の意思を元気なうちに記しておく。それがリビングウイル(LW)です。

日本尊厳死協会のサイト

日本尊厳死協会は、治る見込みのない病態に陥り、死期が迫ったときに延命治療を断るリビングウイルを登録管理している団体です。リビングウイル(終末期医療における事前指示書)の主な内容です。

  • 不治かつ末期になった場合、無意味な延命措置を拒否する
  • 苦痛を和らげる措置は最大限に実施してほしい
  • 回復不能な遷延性意識障害(持続的植物状態)に陥った場合は生命維持措置をとりやめてほしい

なお安楽死は次のように定義されています。

安楽死とは

死期が迫っている患者に耐え難い肉体的苦痛があり、患者が「早く逝かせてほしい」との意思を持っていることが明らかな場合でも、医師が積極的な医療行為で患者を死なせることを安楽死と呼びます。

日本尊厳死協会のサイト

リビングウイルを作成している人はどのくらい?

  • 0.1%

日本でリビングウイルを作成している人はほとんどいません。アメリカでは41%がリビングウイルを作成しているのに対して、日本では0.1%ということが「延命治療で苦しまず平穏死できる人、できない人」(長尾和宏/PHP)に書いてありました。

また現在のリビングウイルは「・・・延命措置はお断りいたします。」「・・・生命維持措置を取りやめてください。」といった内容ですが、これについてはして欲しいという選択ができる内容へ見直しの検討がはじめられているようです。

終末期の医療を考える上で、尊厳死を希望するか?しないのか?は避けて通れない問題ですが、リビングウイルは法的担保が十分ではないため、リビングウイルの通りに延命措置が中止されるとは限らないというのが日本の現状です。

日本尊厳死協会に入会するには?会費は?

リビングウイルについて詳しく知りたいと思い、日本尊厳死協会から資料を取り寄せました。届いた資料に入っていたものです。

  • 尊厳死の宣言書
  • 入会のご案内
  • 返信用封筒
リビングウイル1
尊厳死の宣言書@日本尊厳死協会

「尊厳死の宣言書」に署名をして、入会申込書と一緒に協会に郵送し会費を振り込みます。すると宣言書の原本は協会で保管されます。後日会員証と原本の写し2通が郵送されてくるというのが入会手続きの概要です。

原本の写しは2通もらえるので1通は自分で保管しておいて、もう1通は家族や親族に渡しておくことができます。

日本尊厳死協会の会費は次のような金額になっています。

  • ①正会員    年会費 2,000円
  • ②ご夫婦の場合 年会費 3,000円 注)
  • ③終身会員    会費  70,000円
  • ④ご夫婦の場合     会費 100,000円 注)

注)現在、公式サイトにご夫婦の場合という記載は見当たりません。

リビングウイル
日本尊厳死協会の会費

夫婦で入る場合は一人分の年会費が半額というのは割安感が大きいですね。夫婦に限定されるのか、夫婦に限らず二人以上で入会すれば割引があるのかどうかはわかりません。

それから終身会員の会費の設定が絶妙だなと思いました。7万円というのは年会費の35年分にあたるので、例えば40歳の男性が入会して平均寿命(80.21歳)まで生きたとすると、終身会員の方が年会費5年分を得する金額なんです。男性なら45歳以下で入会するなら終身会員の方がお得という感じでしょうか。

会員になると宣言書の原本を協会で保管してもらえるだけではなく、年4回会報が送られてくる、講演会に無料で参加できるといった特典があるようです。

知っていますか?法定後見と任意後見の違い

成年後見制度のイメージ

エンディングノートには「自分で財産の管理ができなくなった時に管理をお願いしたい人」を書いておく欄があります。これはようするに認知症などで判断能力が低下したときは誰に成年後見人をお願いしたいかということです。

同じような項目で「財産の管理をお願いしたい人について」という欄があることもあります。1つ目との違いは自分で財産の管理ができないときにという条件がついているかいないかです。

この条件があったとしてもあまり変わらないような印象を受けますが、おそらく条件がついているものは法定(ほうてい)後見についての希望で、条件のないものは任意(にんい)後見についての希望のことだと思います。

とは言っても法定後見と任意後見でいったい何が違うの?と思われる方がほとんどかもしれません。成年後見制度には「法定後見」と「任意後見」の2種類あります。

法定後見既に判断能力が衰えている方の為に、
家庭裁判所が後見人等の適切な保護者を選ぶ制度です
任意後見元気なうちに、将来、自分の判断能力が衰えた時に備えて
あらかじめ保護者(後見人)を選んでおくというものです

エンディングノートなので管理をお願いしたい人について希望を書いておけばいいわけですが、法定後見の場合は家庭裁判所が成年後見人を選任するため、必ずしも希望どおりになるわけではありません。

また、任意後見は管理をお願いしたい人の名前をここに書いておけばひと安心というものではなく、元気なうちにその方とどんなことをお願いするのかを公正証書で契約しておく必要があります。

成年後見人(法定後見)の候補者について

家庭裁判所に対して行う「法定後見」の申立ての書類に成年後見人の候補者を書くことができますが、必ずしも候補者が選ばれるわけではありません。

家族を候補者にしても家族の間に相続トラブルのような紛争がある場合や候補者が本人の財産を勝手に使っている場合などは、候補者以外の弁護士、司法書士といった第三者が選ばれることがあります。

また、そのまま候補者が成年後見人に選ばれても成年後見人の事務を監督する権限がある専門家の後見監督人が選任される場合や後見人が1人ではなく複数選ばれることもあります。

現在のような本格的な高齢社会では同じ世代(旦那さんや奥さん、兄弟姉妹など)に成年後見人をお願いすることは現実的ではないと思います。かといって子供世代はどうかといえば仕事で忙しくて成年後見人としての仕事にまでなかなか手が回らないというのが現実ではないでしょうか。

僕は家族の負担を考えると、たとえ費用がかかるとしても成年後見人は家族以外の第三者(もちろん信頼できる方に)にお願いしたいと思います。

ちなみに第三者というのは、司法書士や弁護士、行政書士といった士業が成年後見人の担い手として存在しています。例えば、公益社団法人成年後見センター・リーガルサポートという成年後見制度の普及と成年後見人の育成・普及のために設立された司法書士の組織があり約8,400名(2018年12月)が会員になっています。僕もリーガル・サポートの会員です。

研修や会議などで他の会員の方の成年後見業務に取り組む姿勢を垣間見ることがあります。たとえ報酬が見込めないケースや対応がかなり難しいケースであったとしても成年後見人の業務に真摯に取り組まれている方がとても多いことに毎回驚かされます。

できればそんな人に成年後見人になってもらえたら安心だし、家族も喜んでくれると思っています。

候補者である家族が成年後見人に選ばれれば第三者が選ばれた場合と違って成年後見人の報酬はかかりませんが、報酬は本人(被後見人)の財産の額や成年後見人の業務の内容に応じて家庭裁判所が判断することになります。

本当に役に立つエンディングノートを作るためには、リビングウイルや成年後見制度に限らず関係する必要最小限の言葉の意味を理解しておくことが大切です。

コラム|手書きのエンディングノートは時代遅れ?

エンディングノートの中には、facebookやTwitterといったSNSのIDやパスワードを書いておくとともに、もしものときには「削除を依頼したい」といった希望を書いておけるものもあります。

ただし、その希望を家族が確実に実行してくれるのかは大いに疑問が残ります。そもそもSNSの投稿は家族にはあまり見られたくない内容だったりしませんか?苦笑

こうしたニーズに応えるべく、もしものときにSNSのアカウントを削除してくれるサービスがあります。こういったサービスの1つが「ラストメッセージ」で、あらかじめ自分で決めておいた人(バディ)が、もしものときには削除をしてくれるという仕組みです。 

バディをお願いできる人はいますか?

アカウントの削除はあくまでも主な3つの機能の1つでラストメッセージにはこういった機能があります。 

  • 見守りメール
  • 家族への伝言システム

見守りメールというのは、定期的に配信されるメールマガジンを閲覧することで安否確認をしてもらえるサービスです。もし一定期間、見守りメールが閲覧されなければ運営会社からバディに連絡が行き、バディが「異常あり」と判断すると、運営会社から機密ファイルを開く鍵がバディに提供されます。バディは機密ファイル内のデジタルデータで作成したエンディングノートを家族に引き継ぐ(家族への伝言システム)ことになります。 

エンディングノートは紙媒体をイメージすることが多いのですが、エンディングノート的な機能をオンライン上で構築したサービスというわけです。

この時代に紙媒体のエンディングノートはそぐわないのでは?と感じたことがラストメッセージを開発するに至ったきっかけのようです。面白いサービスだと感じましたし潜在的な需要はかなりあるだろうと思います。

機密ファイルのセキュリティは気になるところだと思いますが、デジタルデータならエンディングノートを書いてみようかなと思った方には検討に値するサービスではないでしょうか。

しかし、気になるのはバディ。誰をバディにするか、みなさんは簡単に決めることができそうですか?

もしもの時、Facebookはどうなる?

人生初の大腸カメラを体験して、もしものときについて考えることになりました。おかげ様で異常は見つかりませんでしたが、なにげなく過ごしている毎日が実は危ういということを思い知らされました。

そんなタイミングで知ったのがFacebookの追悼アカウントの存在。初めて聞くという方も多いと思いますが、追悼アカウントというのは、Facebookの利用者が亡くなった方を思い出して偲ぶための方法です。

ちなみに亡くなった後のFacebookのアカウントはこのどちらかになるようです。どちらにするかを前もって設定しておけるのですが、知っていましたか?

  • ①完全に削除する
  • ②追悼アカウントとして残す

死亡後のアカウントの取扱いについて本人が設定しないままに亡くなってしまった場合、家族がアカウントを削除するのはなかなか大変そうです。

「いかなる場合であっても、第三者が別の人のアカウントにログインすることは、Facebookのポリシーに違反します」ということなので、エンディングノート等にID、パスワードを残しておいて家族がそれを使って削除する方法以外で削除をしようとすると、次の書類を提出しなければいけないようです。

  • 死亡を証明する死亡診断書など
  • 委任を受けていることを証明する委任状など

ID、パスワードを書いておいたエンディングノートがアカウントの削除の委任状になるのかは大いに疑問があります。仮に遺言に「すべての財産を長男Aに相続させる」と書いていたとしても、アカウントを削除するのか、追悼アカウントとして残すかはわかりませんよね。

ちなみに委任を受けていることを証明する書類の例に「出生証明書」とあるので、戸籍等で相続人であることを証明できれば委任状はいらないのかもしれません(英語が変な日本語に訳された感じのヘルプセンターの記事の情報なので、少々正確さに欠けます)。

物は試しと追悼アカウントを残す設定にしてみました。といっても追悼アカウントの管理人を前もって登録しておくだけです。なお管理人はFacebookの友達からしか選べません。

こんなことを誰にお願いできるかな?と迷ってしまったので、とりあえずは相方を管理人にすることにしてFacebookで友達になりました。夫婦で友達になるのはちょっと変な感じでした(苦笑)。

追悼アカウントの管理人を登録をするタイミングで、管理人に指定した相手にメッセージを送ることができますがこれは任意のようです。また、登録したからといってFacebookから相手に通知があるものでもありません。

管理人に指定されても実際に管理人として行動するかどうかはその人の自由なので、管理人の権限を一方的に与えることができるだけと理解しておけばいいと思います。だから、管理人の責務を全うしてもらいたければ前もってきちんとお願いしておかないと無理だろうと思います。

元気な時はこういった類の面倒なことはついつい後回しにしてしまいますが、とっても痛かった大腸カメラのおかげで、Facebookの追悼アカウントの設定で終わらず、体調管理について意識したり、生命保険を見直すきっかけになりました。

必要な時に見つけてもらえないと意味がない

せっかくエンディングノートを書いても、この2つを家族に伝えておかないと家族の役には立ちません。

  • ①エンディングノートを書いていること
  • ②エンディングノートの保管場所

書いたことを家族に伝えておかないと、エンディングノートがあることすら家族はわかりません。わからなければ必要なときに見つけてもらえない、丁寧に準備していたとしてもまったく役に立たないということです。

エンディングノートは「らしい場所」に保管しよう

  • ゴルフが好きな人はゴルフバックの中に
  • 読書が好きな人は本棚の分かりやすい場所に
  • 仕事が命の人は職場の机の引き出しに etc

エンディングノートを書いた人からすぐに連想できる場所に保管しておけば、いざという時でも迷わずエンディングノートを確認できると思いませんか?泡盛命の僕は泡盛の甕の隣に置いています。

エンディングノートの保管場所2
泡盛の五升甕の隣に置いたエンディングノート

救急医療情報キットの保管場所は参考になります。

救急医療情報キットをご存知ですか?

これは大阪府吹田市で配布されている救急医療情報キットです。筒状のプラスチックの容器でできています。

吹田市で配布されている救急医療情報キット

ネットで調べると配布されている市区町村は全国各地にありますが、吹田市のような筒状ではなく袋状のキットもあるようです。また名称も様々です。吹田市では概ね65歳以上の一人暮らしの方に配布していますが、配布の条件は行政毎に異なるようです。

救急医療情報キットをパソコンの横においてこの記事を書いていたら、僕が新しい味のプリングルスを1人で食べていると相方が思ったらしい(苦笑)。確かにパッと見にはプリングルスに似ているかも。

救急医療情報キットを冷蔵庫に保管する理由は?

肝心の救急医療情報キットの使い方です。プラスチック製の容器の中にかかりつけの病院や持病について、また緊急時の家族の連絡先を書いたものを入れて普段から冷蔵庫に保管しておきます。

冷蔵庫の中に保管した救急医療情報キット

救急医療情報キットをなぜ冷蔵庫に保管するか?

情報は鮮度が命ですがもちろん冷やすためではありません。ほとんどの家庭で冷蔵庫は台所にあるので救急隊員が救急医療情報キットを探すのに手間取ることなく簡単に見つけることができるように工夫されています。

シールとマグネットを玄関ドアの内側と冷蔵庫に貼っておくことで、救急医療情報キットが保管されていることが自宅に駆けつけた救急隊員にすぐに分かるような仕組みになっています。

  • シール(左)は玄関ドアの内側に
  • マグネット(右)は冷蔵庫に
救急医療情報キットのシール(左)とマグネット(右)

自宅で具合が悪くなったときに緊急通報を受けて駆けつけた救急隊員が救急医療情報キットを確認することで、持病の有無や服用している薬など、一人暮らしであっても治療に必要な情報を救急隊員や搬送先の病院が把握できるようにと活用が期待されています。

繰り返しになりますが、エンディングノートはもしもの時にすぐに取り出して家族が内容を確認できるようにしておかないと意味がありません。エンディングノートを書いていることを家族にきちんと伝えておくこと、いざという時にすぐにわかる場所に保管しておくことが大切です。

緊急医療情報キットを真似て冷蔵庫の中にエンディングノートを置いておくのもひとつの方法です。我が家の冷蔵庫にはA4サイズを立てるスペースなかったので諦めました。

エンディングノートの保管場所1
エンディングノートを冷蔵庫に入れてみた

救急医療情報キットの注意点

救急医療情報キットを活用する時に注意しなければいけないことが説明書きに書かれています。

  • シールを玄関の外側に貼らないこと
  • 貴重品をキットの中で保管しないこと

注意書きにシールを玄関の外側に貼ると犯罪に巻き込まれるおそれがありますと書かれています。救急医療情報キットのことを知っている人がシールを見ればキットが冷蔵庫の中にあることがわかってしまうからです。

貴重品というのは通帳・印鑑・キャッシュカードあたりでしょうか?

通帳・印鑑は余裕で入りそうです。見た感じキャッシュカードは無理かなと思いましたが、キャッシュカードと同じサイズのカードがちょうどいい感じに入りました・・・(汗)。

キットの中に貴重品を入れるのは絶対に止めましょう!

盗難の危険だけではく、個人情報や家族の連絡先の情報がキットの中に入っているので、オレオレ詐欺などの犯罪の格好の標的になってしまうかもしれません。くれぐれもご注意ください!

救急医療情報キットの内容はこの4点です。

  • ①救急医療情報シート
  • ②キットの説明書き
  • ③シール
  • ④マグネット
①救急医療情報シート

救急医療情報シートには次のことを書いておきます。

  • 住所、氏名、生年月日など個人を特定できる情報
  • これまでの病歴やかかりつけの病院
  • 服用している薬や使ってはいけない薬

介護保険サービスを利用していれば担当のケアマネージャーさんの連絡先、民生委員を書いておく欄もあります。また緊急時の家族の連絡先も書いておけるようになっています。

救急医療情報キットの中には救急医療情報シートを入れておきます。救急医療情報シートには要望などを自由に書くことができる一方で、書かれている希望に添えない場合もあるという趣旨のことが説明書きに書かれています。

例として挙げられているのは、かかりつけの病院が書いてあったとしても、その病院以外に搬送されることもあるということ。

医療の現場では延命治療をするかどうかは本人の希望よりも周りの家族の意向が優先されることがあるようです。緊急医療情報キットの中の情報だけで医師が延命治療について判断をすることは現実には相当難しいだろうと思います。要望が書ける欄が小さいのはそういうことも影響しているのかもしれません。

実現性に課題はあるとしても関連する医療の情報は一度に確認できた方がスムーズで間違いがないと思います。救急医療情報キットの中には救急医療情報シートの他に次のものを一緒に入れておくと良いでしょう。

  • 写真(緊急時に本人確認ができるように)
  • 健康保険証のコピー
  • 診察券のコピー
  • お薬手帳 etc

エンディングノートを書いていれば「医療について」のページをコピーして、救急医療情報キットの中に入れておくのもひとつの方法です。 プリングルスと見間違う大きさなので、全部入れたとしてもまだまだ余裕がありそうです。

※余裕があっても通帳、印鑑、キャッシュカードなどの貴重品は絶対に入れないでくださいね!

死後の準備ならエンディングノートだけでは足りない

「もしもの時に備えて持病のことや延命治療、介護の希望を書いておきたい」という動機でエンディングノートを書くなら、病気になって死を身近に意識してしまうと書くことが難しくなるのは簡単に想像できます。

より直接的な「死後の準備」のためにエンディングノートを書くなら、現実問題としてエンディングノートだけでは足りません。残された時間がわかっているならエンディングノートを書くよりも実際に行動する方が確実だし、早いこともあります。

例えば、葬儀の希望を書いておくよりも自分で契約しておく方が確実でしょう。今は信託(しんたく)という仕組みを使って相続人の意向で変更されることなく希望通りの葬儀を執り行うことも可能です。

それにエンディングノートに書いておくよりも直接伝える方が間違いがないし伝わりやすい。そう考えると、もしもに備えるという目的の場合、エンディングノートが活躍できる場面はおのずと決まってきそうです。

死ぬときはガンがいいと思う理由

ある方から「死ぬ時はガンがいいと思っている」という話を伺いました。この方は現在60代で10数年前にガンになりました。その数年後に再発、転移が見つかりました。

治療がうまくいって今は元気に過ごされているのですが、再発を経験しているのに死ぬ時はガンがいいと思う理由は何だと思いますか?

その理由というのは・・・ガンなら残された時間を知ることができるから。いろいろな準備ができるしお世話になった方にもお礼が言えるから。

でもガンで亡くなるということはまた再発することを意味します。それでもある日突然に亡くなるよりは、ガンの方がいいと仰っていました。何度もガンと闘った方の言葉だけにとても重く受け止めました。

だから、もし亡くなるまでの残された時間がわかるなら、エンディングノートを書いている場合ではないのかもしれません。残された時間の中で葬儀やお墓の準備だって自分でやってしまおうという気持ちも理解できます。

でも、よほどの強い気持ちがなければ自身の葬儀の打合せなんてできるのだろうか?とも思います(果たして自分ならできるのか?)。

自分の死だけを見つめるエンディングノートはいらない

「死後のプロデュース(金子稚子/PHP出版)」に、エンディングノートはいらないと書かれていました。といってもエンディングノートなんか不要だと全否定しているわけではなく、自分の死だけを見つめるエンディングノートはいらないということ。

「死後のプロデュース」には金子哲雄さんと稚子さんの「引き継ぎ」のことが書かれています。死後の準備を考える上で重要視されているのが、この「引き継ぎ」という概念で、残された人が、必要以上に悲しみすぎないようにできるのが、自分の死と死後を考えることであり、引き継ぎすることなのです。と紹介されています。

著者が考えるエンディングノートとは「自分のためではなく相手のために残すもの」。だから死ではなく、自分の生をより強く捉え直すきっかけと考えるならば、エンディングノートを書く意義があるということです。

「死の準備」であるならば、ノートに書き込むだけでは足りないのではないかと思うのです

これは他の雑誌で読んだ著者金子 稚子さんのコメントですが、金子 稚子さんは亡くなった哲雄さんの妻の立場からエンディングノートについて本を書いてほしいという依頼を断ったそうです。

断った理由は哲雄さんがいわゆるエンディングノートを準備していなかったから

エンディングノートを書く代わりに、余命宣告を受けてから亡くなるまでの500日間で自分のお葬式からお墓のこと、会葬礼状まで亡くなった後のことの一切合切を自分できっちりセルフプロデュースしていたのでエンディングノートを書く必要がなかったそうです。

今すぐ亡くなったとしても、驚きませんという余命宣告を受けてからの500日間のことが「僕の死に方 エンディングダイアリー500日」には綴られています。500日という時間が長いか短いかの捉え方は様々でしょうが、これだけの準備を気力・体力が限界に近づく途中の500日間でできるものなのか?ということに正直驚きました。

自分自身を省みるとまだまだ余力があるなぁと、恥ずかしくなります。自分の想いだけを優先することなく、奥様と時間をかけて話をして、決断を重ねてきたことで表現が適切かどうかわかりませんが最高のエンディングの準備ができたのだろうと想像します。

亡くなるその時まで自身の体験をもとに誰かの役に立つ情報を発信していきたいという金子さんの思いがこの本の根底にあると感じます。その背景には、世の中にお買い得情報を発信して、誰かに喜んでもらいたいという「流通ジャーナリスト」を目指した初心が深く影響しているということが読んでいてよくわかりました。

医師についてこんな一文がありました。

私を救ってくれたのは、医療技術の前にまず先生の「人柄」だったと思う。

僕の死に方 エンディングダイアリー500日

僕は技術も人柄もどちらもまだまだということを自覚をして、プロとしてスキルと人格を磨く努力をしていきたいと思いました。

死後のプロデュース
僕の死に方

延命治療の希望とエンディングノートの限界

エンディングノートは万能ではありません。エンディングノートでできることの限界を理解しておきましょう。

延命治療はして欲しくない

セミナーなどで聞いてみると、こう考えている人が多いです。ほとんどの方がそう思っているのかもしれません。中にはこう打ち明けてくださった参加者の方がいました。

私は自分で意思表示をすることができなくなったときに備えてエンディングノートをはじめ、いくつかの方法で延命治療を望まないという意思表示を準備しています。それでも子供から「必要なことはするつもりだ」と言われました。

この方の残念な気持ちを理解する一方で、親には1分でも1秒でも長生きして欲しいというお子さんの想いもよくわかります。でも親に長生きして欲しいという願いこそが、本人の望まない延命治療を家族が選択してしまう理由かもしれませんね。

「延命治療はして欲しくない」とエンディングノートに書いておいただけでは叶わないのが現実のようです。

延命治療はしたくないの前に立ちはだかる3つの壁

なぜエンディングノートを書いておくだけでは叶わないのだろう?と調べていてたどり着いたのが「延命治療で苦しまず 平穏死できる人、できない人」(長尾和宏/PHP)という本です。

「平穏死するのに、エンディングノートが本当に役に立ちますか?」と長尾医師が疑問を投げかけるのは、平穏死を実現するのにエンディングノートだけでは不十分だと思われる人を何人も見てきたという経験からです。

・いざ、肝心なときにエンディングノートが出てこないことが多いから・・・
・仮に出てきても、家族がそれを理解・納得していなければ、尊重されるとは限りません
・そもそもエンディングノート自体が日本では法的な根拠を持ちません

延命治療で苦しまず 平穏死できる人、できない人

読んでいると、エンディングノートは本当に役に立つのかな?と思ってしまいます。

また、本人の意志、家族の理解、主治医の支援という3つの要件がそろわないと現実にはなかなか平穏死はできないということが本の中で繰り返し述べられています。

この本では「非開始」による尊厳死のことを「平穏死」と紹介されています。正確さに欠けるかもしれませんが、便宜上、過剰な治療・過剰な延命治療をしないで死ぬことを平穏死と理解することにしました。

平穏死をするためには3つの課題があると書かれています。

  • 本人の課題
  • 家族の課題
  • 主治医の課題
本人の課題延命治療はして欲しくない。普段はこう思っていてもいざ病気になってしまうと、
自分の病気を治してくれる名医がどこかにいると信じて探しつづけたり、
最期まで治療を続けた結果、やりたいことができなくなってしまうという現実。
家族の課題本人は延命治療を望んでいないとわかっているのに、いざもしものときに直面すると
一分一秒でも長生きして欲しいと考えて、本人の希望よりも家族が延命治療を希望してしまう。
また、亡くなる本人と残される家族を前にすると医師や病院も家族の意向に耳を傾けがち。
こうした状況は容易に想像できますよね。
主治医の課題病気を治すこと、少しでも長く生きてもらうこと、これを医師の使命と考えているので、
治療をしないという選択を受け入れ難い医師が多い。

普段はそう思っていなくても、もしものときにはこういったことが起きる。仮に自分自身の課題は乗り越えることができたとしても家族や主治医の課題を乗り越えるには、事前のコミュニケーションがとても重要だということ。

さらには、三者(本人・家族・主治医)の思いを確認するために、ときにはそれぞれの意見を腹を割って話し合う場が必要だとも書かれています。また平穏死を叶えるためのもうひとつの大きなファクターは、尊厳死法案「終末期の医療における患者の意思の尊重に関する法律案(仮称)」の行方ということです。

救急車を呼ばないという覚悟も必要です

過剰な延命治療をしないで平穏死をするためには3つの課題をクリアするだけではまだ足りないようです。さらに衝撃的なことが書かれていました。

救急車を呼ぶという行為は、救急救命処置のあとに待っている延命治療をも希望する意思表示です

延命治療で苦しまず 平穏死できる人、できない人

自宅で倒れて救急車を呼んだ場合に駆けつけた救急隊員が救命処置として人工呼吸器をつけたとしましょう。それはこういうことが起こる可能性があるということです。

  • 不幸にして意識が戻らなくても一度取り付けた人工呼吸器を外すことは難しく、これが延命処置になりうる
  • 救急車を呼ぶということは救命処置だけを求めているようで、実は最終的にそうなるかもしれない延命治療をも希望していることになる

ここまで読んで、医療の現場に詳しくない僕でもエンディングノートに「延命治療をして欲しくない」と書いておくだけでは不十分だということが理解できました。

しかし、本人が延命治療を望んでいないと家族が十分に理解していても事故や病気で急変した状況を前にして、救急車を呼ばないということがはたしてできるのか、これはとても難しい問題です。

余命を宣告されているような状況ならどんなことが起きても救急車は呼ばないという覚悟をもって対応することができるかもしれませんが、それでも現実に起きると気が動転してしまうこともあるでしょう。救急車を呼ぶべきか?そうじゃないのか?一瞬でも迷いが生じるとどうしていいのかわからなくなりそうで怖いです。

流通ジャーナリストの故金子 哲雄さんが延命治療をしないエンディングを実現できたのは、奥様に覚悟を決めてもらえたからという理由がありました。

金子からは「僕が死んでも、救急車を呼んではいけないよ」と、口酸っぱく言われていました。病院での死はそのまま扱われますが、在宅で死を迎えた場合、救急車を呼んでしまうと不審死扱いになってしまい、その後が面倒になるというのです。

場合によっては、望んでもいない延命治療を施される可能性もあります。金子は、延命治療をまったく望んでいませんでした。

僕の死に方エンディングダイアリー500日

奥様は金子さんの呼吸が止まったのを確認した後で、救急車を呼ばずに在宅医療でお世話になっていた医師に連絡して死亡診断書を書いてもらったそうです。もし救急車を呼んでいれば、金子さんの最期は本人の希望とはまったく違ってしまったかもしれません。

延命治療をして欲しくないという希望を家族に伝え、家族にも十分理解してもらう。そして主治医にも理解してもらう。それでもまだ足りないというのが延命治療を取り巻く現実のようです。

エンディングノートの存在意義はどこにある?

突然、何か問題が起きたときには気が動転してしまい、前もって話ができていたとしても記憶があいまいになってしまうことは想像できます。

いざという時に「お父さん、なんて言ってたっけ?」じゃ意味がありませんよね。それに子供が何人かいたら「お父さんはそんなことは言ってなかった」と話が食い違うことだって考えられます。

たとえ腹を割って話しができたとしても時間が経てば忘れてしまうかもしれないので、後日確認できるように大切なことを書きとめておくことがエンディングノートの存在意義の1つです。

僕自身も両親にエンディングノートを渡したことがきっかけで、時間はかかりましたが両親から延命治療や介護についてどう思っているのかを聞くことができました。

何かしらきっかけがなければ、将来の医療に対する希望を家族で話し合うことはハードルが高いだろうと思うので、そのきっかけを作ることもエンディングノートの存在意義の1つだと思います。また家族や大切な方と話をする前提として、自分の頭の中を整理するために書くというのがエンディングノートの終末期の医療のページのより良い使い方だと思います。

いかがでしたか?書いてみようという気持ちに待ったをかけるようで申し訳ありませんが、エンディングノートを書いておけばそれだけで安心ということはないということは肝に銘じてください。

頭の中を整理して、気持ちをまとめるためのツールとしてエンディングノートは最適です。まずはそこからはじめてみませんか?

もしもに備えるにはエンディングノートだけでは十分ではありませんが、エンディングノートをきっかけに次の行動につなげていくことをおすすめします。

  • 家族や大切な人ともしものことについて話をする
  • 遺言を書く
  • 葬儀の契約をする etc

自分よりも親のことが心配な方へ

エンディングノートを親に渡すときに気をつけたいこと|僕の失敗談

もしものときに思いを馳せることで自分よりも家族、特に親のもしものときについて考えてしまう方は多いと思います。

僕は成年後見人の経験から親にエンディングノートを書いて欲しいと切実に思っていました。さて何と言ってさてエンディングノートを渡そうか?

考えがまとまらないうちに、思いもよらない展開に。

仕事中に携帯が鳴る。山形に住む父からでした。

携帯に電話がかかってくるなんて珍しいなと思いながら出ると、なんだかシリアスなトーン。

父「いま電話大丈夫か?」
僕「大丈夫だけど。」

父「(いきなり本題に入る)昨日のことだけど・・・」と少し間が空く。

このタイミングで携帯にかけてくるということは、誰か亡くなったなと確信しました。でも、祖父母達は全員他界しているし、誰?誰?と親戚の顔が浮かんでは消える数秒。

父「昨日のことだけど・・・、Amazonから差出人不明の荷物が家に届いて・・・」
僕「???」

父「身に覚えがないし、気持ちが悪いからAmazonに問い合わせてみたけど、送り主は個人情報の絡みで教えてくれなかった。」
僕「???・・・開けてみた?」

父「開けてみたら、エンディングノートとかいうのが2冊入っていた。差出人不明でエンディングノートが送られてくるなんて気持ちが悪くて・・・」

正直そんな電話だとは思ってもみなかったので、誰も亡くなっていないという安心感と、想定外の展開にこみ上げてくる笑いをこらえるのに必死でした。  

笑いをこらえながら話しを聞いていると、父はさらに続けます。

父「俺のクレジットカードが不正に使われたわけじゃなくて、支払いは送り主の方で済ませているみたいだけど、勝手に送りつけてきてあとで請求してくる詐欺があるとか聞いたことがあるから、さっき消費者センターに念のためにも電話してみた」

僕「・・・、それ俺が送った・・・」

父「お前か?」と安堵とあきれた感想が入り混じったような声。

父「Amazonから電話があったか?」
僕「ないけど・・・」

Amazonは、送り主に確認してまた電話すると父に伝えていたようです。

僕「エンディングノートの他にも本が入ってなかった?」
父「見てない」

ちなみに読みやすいように標準語で書いていますが、やりとりは完全なる山形弁です(笑)。

実は両親に1冊ずつエンディングノートを渡そうと思いながら、大阪の本屋で買ってわざわざ山形まで持って帰るのもなんだかなと思い、年末に実家で読もうと思っていた本と一緒にAmazonで買って実家に送っておいたのでした。

買う時にいつもの送り先を自宅から実家の住所に変更したけれど、まさか送り状に僕の名前が一切記載されないとは思いもしませんでした。

アマゾンの伝票
お届け先に父の名前が書いてあるだけ

それに、実家に帰省する時は宅急便で荷物を送ることが多いので、いつもと同じように受け取っておいてくれるものとばかり思っていたので父が開けてしまうのは想定外でした。

消費者センターに電話をした時に「身に覚えのない荷物は案外お子さんが黙って送ってきていることがあるんですよ」といわれて、念のために僕に電話をしてきたみたいです。

手荷物で持って帰ればいいところを送ってしまったがために、差出人不明の荷物で送られてきたエンディングノートは、父の中ではこんなイメージのものになってしましました。

  • 不幸の手紙(汗)
  • デスノート(大汗)

伝票の日付からするとおそらくクリスマスに届いたような気がします。なんてこった。両親の穏やかな日を縁起でもない日にしてしまったことを反省しましたね。

ご両親にエンディングノートを書いて欲しいと思っている方はくれぐれも渡し方にはご注意ください。僕の失敗を教訓にしてエンディングノートを渡すときは面倒くさがらずに最後まで手渡しでいきましょう。

とはいうものの。渡しただけ、もらっただけで安心してそれで終わってしまうことも多いような気がするので、あえてインパクトのある渡し方をするのもアリかもしれないですね。←自己弁護に必死

それから数年後に両親が僕達家族が安心できるエンディングノート(の要素が詰まった手紙)を書いてくれたのですが、このときのエンディングノートは使ってなかったということをここに書いておきます(汗)。

両親が書いてくれたエンディングノート

親と一緒に過ごせる時間を計算してみよう

「もしものとき」に想いを馳せると、自分のことよりも親のことを考えてしまうという方は多いのではないでしょうか。既に亡くなられていて思い出す人も多いと思いますし、ご健在でも離れて暮らしていて、年に数日しか会えなければなおさらかもしれません。

僕の両親も山形で暮らしていてお盆と年末年始くらいしか会えません。そんなことを思うと、親が元気なうちにいったいあと何回くらい会えるのかな?なんてことをしみじみと考えてしまいます。

「親が死ぬまでにしたい55のこと」に60歳の親と一緒に過ごせる時間は?という試算が紹介されていて、実際に計算してみたらあまりの少なさに愕然としました。

親が死ぬまでにしたい55のこと
親が死ぬまでにしたい55のこと

「親が死ぬまでにしたい55のこと(親孝行実行委員会/アース・スターエンターテイメント)」には、こんな計算が載っています。

たとえば、親と離れて暮らしている場合。(中略)
あなたと親が一緒に過ごせる時間は1,320時間。日数にすると、わずか55日間。

親が死ぬまでにしたい55のこと

これは20年(親の残された寿命)×6日間(1年間に会う日数)×11時間(1日で一緒にいる時間) =1,320時間という仮定の元の試算です。

親が60代で盆正月にしか会わなければ概ねこんなもんなんでしょうね。6日間というのも過去10年間の自分自身を振り返ってみればよくわかります(^o^;)

「そのうち、そのうち」なんて言っていると、親と一緒に旅行するチャンスも失くしてしまうかもしれません。たとえ1泊2日の旅行だとしても6日間が8日間になるので20年の間には大きな違いですよね。

家族旅行@石垣島

そういう僕もしばらく家族旅行に行けていないなぁと、この写真をみて自覚しました。

  • 時間は有限ということ
  • チャンスはいつまでもないこと etc

こういうことを意識できる・再確認できることも「もしものとき」に真剣に向き合うことによる効果です。

自分のあったエンディングノートを選んでいますか?

どれも同じように見えるエンディングノートですが、実はタイプは様々で大きく分けるとこの3種類になります。

  • ①もしもに備える
  • ②これからの生き方を考える
  • ③これまでの人生を振り返る

「終活」というイメージで自分には関係ないと思考停止になるのはもったいないです。エンディングノートの使い方は自由です。自分にあったエンディングノートを選んで活用してみませんか?

関連|目的にあったものを選んでいますか?エンディングノートの正しい選び方

エンディングノート作成のサポートを必要とされる方へ

エンディングノートを書きたいです。一人では難しいので手伝ってもらうことはできますか?

目的に適したエンディングノートが見つかればあとはご自身で書き進めていくだけですが、ひとりでは完成できるのか不安だという方もおられると思います。もしものときにご家族の負担を減らすことができるようなエンディングノート作りをサポートをいたします。

もしものときに役に立つエンディングノート作成サポート

本記事をお読みいただければ、もしもに備える目的でエンディングノートを書くときのポイントを理解していただけると思いますが、ポイントはわかったけどいざ書こうとすると書けない、どこから書いたらいいのかわからなくて書けないといったサポートを必要とされる方が対象です。

3回の個別相談(1回2時間)で伴走型でエンディングノート作りをサポートします。進捗を見てペースを上げることも可能ですが3ヶ月で完成を目指します。

エンディングノートはお持ちのものがあればそれを使うこともできますし、お持ちでなければ私の義母が使っていた「相続あんしんナビノート」を差し上げます。エンディングノートによって項目が異なるのでこちらはあくまでも一例ですが、もしものときに本当に役に立つエンディングノートを一緒に完成させましょう。

  • 1回目 医療と介護、葬儀とお墓
  • 2回目 家族、親族
  • 3回目 資産について

依頼者ご自身のエンディングノートではなく、依頼者の方が親御さんの話を聞きながら親御さんのエンディングノートを完成させる場合にもご活用いただけると思います。

ご相談・お問合せ

司法書士・行政書士 伊藤 薫

まずはお気軽にご連絡ください。