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お義母さんが遺してくれたエンディングノートと大切なもの

僕が提案している「もしものときに本当に役に立つエンディングノートの作り方」が実際のところ使えるものになっているのかどうかを義母が遺したエンディングノートを元に検証しました。義母のエンディングノートを傍に置いて葬儀や納骨、相続手続きなどを行った娘であり相続人の相方に感じたことをヒアリングしてまとめました。

この記事をまとめるに至った想い

エンディングノートの必要性や活用の仕方についてブログやセミナーなどで発信してきましたが、もしものときに遺されたエンディングノートを手にするのは義母が亡くなったときがはじめてでした。

義母の病気が進行するに伴い娘である相方が義母に聞き取りをすることで完成したエンディングノートです。そういう事情があったので、義母から聞き取りをする際は僕が常々言っている「もしものときに本当に役に立つエンディングノートの作り方」の9箇条を実践してもらいました。

関連|もしものときに本当に役に立つエンディングノートの作り方

義母のエンディングノートは僕が提案する「もしものときに本当に役に立つエンディングノートの作り方」を実践して完成した貴重な事例ということになります。この内容ならきっと役に立つだろうと自負していましたが、実際の事例で検証できていなかったことがずっと引っかかっていました。

親族として葬儀やその後の手続きに関わる中で義母のエンディングノートはとても役に立っていたと思います。でも僕は相続人ではないので相続人である相方に義母が遺したエンディングノートに対する率直な感想やエンディングノートについて感じていることを聞いてみたいと思いました。

とはいっても内容が内容なだけに家族であっても気軽に話ができるものではありません。また義母のエンディングノートをまるで実験台にするようで気が引けていたというのも正直なところでした。さらに、こんな考え方は全然使えないとか、現実には無理だといった問題が白日のもとに晒される可能性もあります。

でも、いつまでも机上の空論を続けていても意味がありません。僕の活動をいつも応援してくれた義母が最期に僕に遺してくれた絶好の機会と考えて相方の協力を得て思い切って検証してみることにしました。

※オレンジ色の箇所は相方にインタビューをして司法書士伊藤 薫がまとめました。

義母が遺してくれたエンディングノート

これは義母が遺してくれたエンディングノートです。エンディングノートは早めに書いておいて欲しいと思う一方で、実際に使うのはずっと先であって欲しかったのですが昨年使うことになりました。

義母が遺してくれたエンディングノート

聞き取りスタイルになった理由

母は2019年1月にエンディングノートを書き始めましたが、その後病気が進行して自分では書くことが難しい状態になったので、途中からは娘である私が母と話をしながら書くスタイルになりました。

病気が進行していた2019年10月頃に、覚悟を決めて「もしものときの話をしよう」と母に申し出たところ、母からも大事な話があると言われました。

大事な話というのは「クリスチャンになろうと思っている」ということでした。母の実家はお寺なので最初は「え~!」と驚きましたが、詳しく話を聞いてみると理由は納得できるものでした。

葬儀社のパンフレットを集めてそれを見ながら具体的な話をするつもりだったのに、実際は母が用意していたクリスチャンの葬儀のパンフレットを見ながら話をしました。

おそらく母もいつ言おうかとタイミングをうかがっていたと思います。考えていた展開とは違うけれど、母の想いを聞くことができたし葬儀の話を具体的にしたいという目的は果たせたのでこの日は大事な1日になりました。

重たい話を明るくしようという気持ちをお互いに持っていて、同じ時期に気持ちを確認することができたので、もしものときについて核心に触れる話をすることができました。

実際に書いた項目は下記の通りです。私が母の話を聞いて書いた項目には☆印を付けました。

実際に書いたエンディングノートの項目

  • 基本情報
  • 証明書など
  • 健康について
  • 家系図
  • 家族一覧
  • 友人・知人一覧→メモ欄に☆
  • 預貯金
  • 保険
  • 医療について☆
  • 私の人生が終了したら☆
  • 遺言書について

本当に役に立つエンディングノートを作るための9箇条を検証してみた

義母のエンディングノートを傍に置いて葬儀や納骨、相続手続きなどを行った娘であり相続人の相方に「もしものときに本当に役に立つエンディングノートの作り方」でまとめた9箇条について率直な思いを聞いてみました。

本当に役に立つエンディングノートを作るための9箇条

  • ①書きにくいからこそ医療と介護のページから書こう
  • ②エンディングノートは本音で書こう
  • ③必要最小限の言葉の意味を理解してから書こう
  • ④正確な情報を元に書こう
  • ⑤個人情報は書きすぎない
  • ⑥遺言書の有無や保管場所を書いておこう
  • ⑦見た目や形式にこだわらない
  • ⑧定期的に見直して情報の鮮度を保とう
  • ⑨エンディングノートを書くことはスタートです

①書きにくいからこそ医療と介護のページから書こう

母は「医療について」のページは書いていませんでした。大事なことですがやっぱり書きにくかったのかもしれません。もしものときになったら本人の意向を知らずに決めるのは負担が大きいので、絶対に聞いておきたかったのでちゃんと話をしました。母も家族に自分の想いを伝えておきたかったようでエンディングノートに書き留めることができました。

胃ろう(経管栄養)はしたくないと前もって聞いていたので、胃ろうをするかどうかの判断を求められたときは迷うことなく病院に伝えることができました。

絶対に聞いておきたい項目ですが、とてもデリケートな問題なので延命治療の希望など医療のページから書き始めるのは難しいかもしれません。基本情報は家族なら知ってて当然なので書く優先順位は低いのですが、エンディングノートを書くためのウォーミングアップだと思えば基本情報から書き始めるのがいいと思います。ただし基本情報で止まってしまわないような工夫は必要だと思います。

②エンディングノートは本音で書こう

我が家の場合、母が余命宣告されてから母に聞き取りをしながらエンディングノートを仕上げたので遠慮している暇はなかったと言うのが本当のところです。お互い待ったなしで膝をつき合わせて話したので本音で話ができたと思います。

母も元気な時であれば「クリスチャンになって教会でお葬式をして欲しい」とは言えなかったと思います。母が最期の最期にクリスチャンになりたいと言い出すとは誰も想像していなかったのですが、本当に自分の最期を覚悟しての行動だったと思います。

私も「また今度聞こう」とか「また考えが変わるかも」と思うこともなく本気で聞き取りをしました。どんなお花を飾りたいか、棺には何を入れたい、、、というようなことまで具体的に話をしました。そのおかげでほとんど迷うことなく母の希望を叶えられたと思うので後悔はありません。

③必要最小限の言葉の意味を理解してから書こう

母も私も「尊厳死」の意味を十分に理解できていなかったので、尊厳死の項目は?マークを付けてそのままにしてしまっていました。医療に関する専門用語などは特に意味がわからないまま書いたところで希望が正確に伝わるとは思えません。

④正確な情報を元に書こう

通帳や証書を見ながら母が預貯金・保険の項目は書いていてくれたので預貯金や保険の手続きはスムーズでした。正確な内容を書いておいて欲しいのは財産に限った話ではなく健康面や病歴についても同じです。私は近くに住んでしょっちゅう会っていたので目新しい情報はありませんでしたが、もし離れて暮らしているなら病歴や服用している薬については正確に把握しておきたい情報だと思います。

⑤個人情報は書きすぎない

預貯金がいくらあって保険がいくらおりるということから暗証番号まで母から包み隠さず知らされていました。暗証番号はセキュリティの面からエンディングノートには書かずに口頭で聞いてきました(私にとって覚えやすいものだったのでメモの必要がありませんでした)。そもそも母から生活費の管理等をまかされていて通帳や実印を預かっていたので隠しようもなかったと思います。

もし借金があったり保証人になっていれば、直接言えなくても相続の時に知っておきたいことなのでエンディングノートには書いておいて欲しいと思います。

⑥遺言の有無や保管場所を書いておこう

母は遺言は準備していませんでした。エンディングノート、事前に撮影していた遺影、棺に入れて欲しい写真、保険証書、実印、年金手帳などは実家の本棚にまとめていると聞いていたので必要なときに探す手間が省けてスムーズでした。すべての情報をエンディングノートに記入しようとしなくてもエンディングノートを書きながら必要な書類を集めてまとめておくだけでもずいぶん助かります。

また、遺産については相続人(兄と私)で平等にわけるようにと口頭で伝えられていました。もし疎遠になっている相続人がいれば口頭の確認だければ法的効力もないので揉める元になるかもしれません。

これだけはと他にも3つほどお願いされたものがありましたが、いずれも口頭でそれが遺言だと受け止めています。

⑦見た目や形式にこだわらない

先に書いたように我が家では重要な書類はすべてエンディングノートと一緒に保管されていました。これだけでも遺族にとっては負担がずいぶん減ります。エンディングノートですべてを賄おうと気負って書き始めなくても、エンディングノートはもしものときのことを考えるきっかけの1つになるものだと思います。

⑧定期的に見直して情報の鮮度を保とう

もしものときに誰に連絡するのか?は母と一緒にスマホの連絡先を見ながらグループ毎にキーマンを決めて連絡先をエンディングノートに書きだしました。ここが一番助かった項目かもしれません。スマホを見ながらだと交友関係を漏れなく把握できるのでおすすめです。

病気のことはオープンにしていたので入院するまで沢山のお友達が母のお見舞いに来てくれていました。亡くなったときのお知らせは母のスマホから送りました。病気のことが前もって伝わっていたので滞りなくお知らせすることができました。

ただし、スマホだと電話番号はわかっても住所等はわからないことがほとんどです。下手したらフルネームがわからないということも考えられます。葬儀に来てくれた方にお礼の手紙やお香典返しを送りたいと思っても住所がわからないケースがありました。

そこは母が昔から使っていた手書きの住所録が役にたちました。もう何十年も前から使っているので何度も修正されていたりしましたが最後はこれに頼りました。年賀状が役に立つこともあるかもしれません。エンディングノートの沢山の項目の中では、もしものときに連絡して欲しい人の情報は定期的に見直す方がいいと思います。

⑨エンディングノートを書くことはスタートです

エンディングノートを書きながら使っていない口座やクレジットカードを整理したり、医療費に備えるために定期預金の解約をしました。役所の手続きがしやすいようにマイナンバーカードも作りました。エンディングノートを書き始めたことでこれもやっておこうと次の行動のきっかけが生まれました。

母は外出するのが難しくなっていたので葬儀社の下見や契約はしませんでしたが「私の人生が終了したら」のページを書くときに2人であれこれ相談しながら記入しました。

なにせクリスチャンのお葬式というものに参列したこともありませんし、そもそもクリスチャンのお葬式にはルールがほとんどなく、故人の遺志を尊重することを第一としていたので自由にできる反面、何を決めておくべきかはっきりわからないというのが正直なところでした。

とりあえずの母の希望はこんな感じでした。

  • ①〇〇教会で葬送式をしたい
  • ②お墓は作らず教会の納骨堂へ納骨してほしい
  • ③分骨はしない
  • ④香典は辞退する
  • ⑤夏(8月頭)に毎年開催される教会の慰霊祭に行って欲しい
  • ⑥命日頃には納骨堂へ行ってお参りして欲しい

はっきりとは言われていませんが、⑤についてはお世話になった教会の牧師さんに年に1回くらいは顔を見せて欲しい、⑥は自分がいなくなることで疎遠になるかもしれない親戚との付き合いを継続して欲しいという想いがあるように感じました。

私は牧師さんとは母が亡くなった後に初めて会いましたが、母は牧師さんとも事前に相談をしていたようでエンディングノートを見ながら葬儀の準備をスムーズに進めることができました。

花が好きだった母らしい葬送式にすることができました。

いかがだったでしょうか?本当に役に立つエンディングノートを作るための9箇条の視点はもしものときの家族の役に立つエンディングノートを作る上で大切なポイントを漏れなく押さえることができていると感じました(手前味噌に感じる方がいることも自覚しています)。

一方で、エンディングノートを書く人が独りでエンディングノートと向き合ったとしても本当に役に立つエンディングノートを完成させることは難しそうだなとも思いました。

相続人の立場でエンディングノートについて思うこと

聞き取りスタイルをおすすめします

我が家の場合は基本情報や家族構成の項目は知っていることだけだったので見返すことはなかったですが、それはその家族によって違うと思います。死後に初めて遺族がエンディングノートを見るという場合は普段面と向かって言えないことを書くことも有効だと思います。もしも私たちが知らない兄弟姉妹がいたとしたら葬儀の連絡もできませんし、相続手続きは大変な負担になったと思います。

がんは死の準備ができる病気と言われます。我が家は脳腫瘍で母の目が不自由になって自分では書けなくなったので母に聞き取りをすることになりましたが、そうでなくても一緒にもしものときの話をして気持ちを聞いて欲しいと思います。親の最期の話をするというのは辛い作業なので「まだ早い」と思ってずるずると先に延ばしたくなりますが、病気になってからでは余計に踏み込んだ話はしにくいです。

エンディングノートの話は母が元気な時からしていましたが実際書き始めたのは病気になってからで、肝心なところは余命宣告がされてからとなんとも遅い仕上がりでしたがその分本気で書けたと思います。

エンディングノートだけでは足りないところもある

エンディングノートという言葉に引っ張られて紙媒体にこだわる必要はないと思いますが、すぐに書き込める点や持ち出しやすい点は亡くなった後の手続きをしているときに便利だと感じました。些細なメモでもエンディングノートに書くようにしていたので後でいろいろと探す手間が省けたことも良かったです。

母はSNSを利用していなかったのですがLINEとヤフーのアカウントはまだそのままになっています。SNSやネット上でアカウントを沢山持っているならパスワードの管理は紙のノートでは管理しきれないと思います。ひとり1台のご時世なのでスマホの解約やパソコンの処分も相続手続きに欠かせません。

また連絡先の整理にスマホが役に立ちました。紙のエンディングノートだけでは足りない部分もあるので他のツール等と合わせて活用するのがいいと思います。

※オレンジ色の箇所は相方にインタビューをして司法書士伊藤 薫がまとめました。

義母が遺してくれた大切なもの

義母はある時期から終活と称して家の中の片づけを積極的に行っていました。病気がわかってからは早々に車の売却や免許の返納をしていました。家族が集まるタイミングでみんなで協力してタンスや本棚、飾り棚をゴミ置き場に運んだことを思い出します。

可能な限り自宅で過ごしたいという義母の希望に応えようと、家族が一丸になって自宅で介護をしていた時期には家の中はとても片付いていました。シンプルにしておかないと車いすで動きにくいという事情もありました。

そんな事情があったので自宅(賃貸)はスムーズに明け渡すことができました。亡くなった後の家の中の片づけは自分たちでやらずに専門の業者に頼むようにとお金まで準備してくれていたのが大きかったです。

義母の終活の根底には子供達にできるだけ負担をかけないようにしようという親心があったと思います。そして、持ち前の明るさで重たい話題も笑いに変えて心理的な負担もできるだけ減らそうとしてくれていたように思います。

義母は免疫を高めるために通っていた玉川温泉で病気と戦っているようには思えない楽しい仲間をたくさん作っていました。これは田んぼアートの田植えにお仲間と参加したときの写真です。普通に参加しても面白くないからと、義母がどじょうすくいのメイクで乗り込んだら・・・めざましテレビの中継に遭遇して全国ネットでデビューを果たしました。

どじょうすくいのメイクで田植えに参加する義母

僕らの沖縄旅行の誘いにはいつも乗ってくれたので与那国島や波照間島にも一緒に行きました。病気との付き合いは20年以上でしたが、義母は病気を言い訳にすることなく人生を楽しむことにいつも前向きでした。

  • 後悔のないように生きること
  • 死ぬときは何も持っていけないこと

お義母さんが僕たちに遺してくれたのは、本当に役に立つエンディングノートと2つの生き方・逝き方でした。

真剣な表情でどじょうすくいのメイクをする義母

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司法書士・行政書士 伊藤 薫

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