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終活の目的とタイミング
遺言、成年後見、家族信託・・・いろいろあってわかりにくいですよね。
終活をシンプルにわかりやすく言うと、判断能力の低下後の財産管理・身上監護、亡くなった後の財産承継に備えることです
ここで、あまり馴染みのない身上監護という言葉が出てきましたが、どんな意味かわかりますか?旭川家庭裁判所の公式サイトでは身上監護について次のように説明されています。
身上監護に関する後見人の仕事は,ご本人の住居の確保及び生活環境の整備,介護契約,施設等の入退所の契約,治療や入院等の手続などがありますが,食事の世話や実際の介護などは含まれていません。
出典:成年後見Q&A 旭川家庭裁判所
終活は財産管理、財産承継、そして身上監護のすべてをカバーしているように思っている方も多いかもしれませんが、そうではありません。遺言、成年後見、家族信託について、目的やカバーできる範囲をざっくり整理してみます。
☑遺言は亡くなった後の財産承継に備える終活です
☑成年後見は財産管理と身上監護に備える終活ですが、亡くなった時に終了します
☑家族信託は亡くなるまでの財産管理、死亡後の財産承継に備える終活ですが、身上監護はカバーできません
終活はどれも同じように思ってしまいがちですがカバーできる範囲が異なります。
自分に必要な終活を知ること。終活のスタートはここからです!
法定後見と任意後見の違い
成年後見制度には「法定後見」と「任意後見」の2種類あります。
法定後見とは、既に判断能力が衰えている方の為に、家庭裁判所が後見人等の適切な保護者を選ぶ制度です。
任意後見とは、元気なうちに、将来、自分の判断能力が衰えた時に備えてあらかじめ保護者(後見人)を選んでおくというものです。任意後見契約は公正証書で行う必要があります。
いわゆる終活に該当するのは任意後見ということになります。
契約した人が任意後見人として財産管理、身上監護を行うのは本人(私)の判断能力が低下して、家庭裁判所が後見監督人を選任してからということになります。
判断能力が低下する以前に任意代理契約も結んでおくのも終活の1つです。
任意後見と信託の使い分けのポイント
「日本行政」に掲載されていた記事の信託と任意後見の使い分けのポイントがわかりやすかったのでご紹介します。
賃貸アパート等の収益資産があって活用の幅がおおきいとか、ローンを組んで不動産を購入することを含め、積極的に投資をしたいといったニーズがある場合、あるいは、単なる委託者の高齢化対策のみならず、家庭内に高齢の親のほか障害のある兄弟がいて、受益者を連続させて長期的に目的を達成していきたいような場合には、信託、とりわけ信託法91条の後継ぎ遺贈型受益者連続信託を活用していくことで、任意後見や遺言にはない効果を実現させていくことが可能と言えます。
これに対し、身上監護はしっかりさせたいが、収益不動産もなく、投資もせずに将来は老人ホームで余生を送りたい、財産の承継も単純に遺言あるいは法定相続で対応することで十分といった場合には、任意後見が適しているといえるでしょう。
民事信託と任意後見(前編) 日本行政 2024.4 9ページ
この記事では、任意後見と信託の使い分けを判断する際のポイントが次のようにまとめられています。
- 身上監護の必要性
- 財産管理と財産承継のいずれを目的とするか
- 後継ぎ遺贈の必要性
- 財産の種類
- 借入れや財産運用の予定
- 受託者の確保
- 一時的な利用や裁判所の関与の回避等
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司法書士・行政書士 伊藤 薫