エンディングノートを書く醍醐味は?
考えたくないことに向き合うこと
終活として、もしもの時に備えるため、家族が困らないように書いておきたいなど、エンディングノートを書く目的は様々だと思いますが、突き詰めればエンディングノートを書くことは、普段考えないことを考えることです。
エンディングノートを書くことは、できれば考えたくないことに向き合うことに他なりません。要するに、エンディングノートを書くことで、もしもの時の疑似体験をすることができます。
もしものときを突き付けられる
ここ数年、不意にもしものときについて考えさせられることがありました。
その中で、はじめての大腸カメラはかなり痛い思いをしました。麻酔をしなかったので検査中の膨満感もしんどかったし、腸のカーブのきついところにカメラ入れる時はおもわず叫んでしまうくらいの苦しさ。
それに検査の前に2リットルの下剤を飲む前処理も楽じゃないです。もう1回と言われたらかなりびびってしまいます。。

おかげ様で大事には至りませんでしたが、もしものときを真剣に考えるきっかけになりました。関連|突然の出血で「もしものとき」を突きつけられて考えたこと
- 病気やケガ
- 身近な方の死
- 自然災害 etc
生きていれば、誰しも否が応にももしものときを考えされられることがあります。しかも、突然に。
もしものときを突き付けられて起きた変化
精密検査や手術というあわやの非日常体験を通して、大切なものは何か?を見極める感覚が研ぎ澄まされた手応えがあります。
- したいこと・したくないこと
- 必要なもの・必要じゃないもの
もしものとき、もっと端的に言えば死を身近に感じることができたことで、自分の人生はこのままでいいのか?と真剣に考えるきっかけになりました。
- これからは健康に気をつけよう
- 週末は家族と一緒に過ごそう
- 久しぶりに〇〇をしてみよう
- 〇〇さんに会いたい
- 前から気になっていた〇〇をどうしてもやりたい etc
非日常体験が働き方や生き方を見直すきっかけになることはままあると思います。
些細なことでも構わないと思います。普段考えないことを考えることで、こういった気持ちの変化が現れることがエンディングノートを書くことの醍醐味です。
もしものときの疑似体験ができる方法
元気なときに死を意識することのメリットは計り知れないので、縁起でもないことなのはわかっていますが、突然、脳梗塞で意識不明になったら?と考えてみてください。と言っても難しいですよね。
はじめて体験した入棺体験は、怖いくらいにもしものときをリアルに想像してしまって相当焦りました。日常生活の中で死を自分事に感じる機会としては、これ以上のものはないように思います。もし入棺体験ができる機会があれば一度体験してみることをおすすめします。
そうは言っても入棺体験はハードルが高い、もう少しソフトなものならやってみたいという方に向けて、もしものときの疑似体験ができるものをご紹介します。
ただし、もしものときの疑似体験と同時に自分の内面とじっくり向き合うことがポイントです。精密検査や手術と違って身体は痛くも苦しくもないので、僕はエンディングノートを書くことをおすすめします。
入門編に「映画 エンディングノート」
エンディングノートや人生のエンディングを自分事として考えるきっかけになる映画です。ひとりでエンディングノートに向き合うことよりも、エンディングノートをきっかけに、自分のエンディングについて家族や大切な人と向き合えることの大切さがよくわかります。

「いったい、どこまでカメラを回すの?」と思ってしまうほど、娘である監督がお父さんのエンディングを追い続けます。主人公である監督のお父さんが、亡くなる数日前に病院で長男と(自分の)葬儀の打合せをしている時に、こんなことを言って家族を笑わせていました。
分かんないことあったら携帯ください!
このお父さんは「段取り命」で生きてこられたようで、たとえ自分の死であってもぬかりなく準備をしないと気がすまないという性格。いかなるときもユーモアを忘れないお父さんのキャラクターがあってこそ、完成することができた作品だと感じました。
もちろん、お父さんから家族へ、家族からお父さんへの深い「愛」がなければ、ここまでとことんは撮れないはずです。
家族に囲まれ、あったかい雰囲気で見送ってもらえたお父さんはすごく幸せだと思いました。1回観るだけでは知り得ない、こんな素敵なエンディングを迎えることができる秘訣を学ぶために何度も観たい映画です。
カードゲームのような「もしバナゲーム」

ゲームを通してもしものときを考える「もしバナゲーム」を知っていますか?
もしバナゲームとは?
もしバナゲームは重病のときや死の間際に「大事なこと」として人がよく口にする言葉が書いてある35枚のカードを使って、余命宣告を受けた場合を想定して自分が何を大切だと思うかをゲームをするように考えるものです。
このルールに沿ってカードを用いることで、自分自身が大切にしていることを考え、それらを言葉にすることで、さらに他のプレイヤーの価値観を聴くことで、各人が新たな気づきを得ることができます。
「もしバナゲーム」iACPのサイト
もしバナゲームのマイスターの方から直接レクチャーを受けることができる機会がありました。やり方はいくつかあるみたいですが、このときレクリエーションルール(ヨシダルール)を教えてもらいました。
もしバナゲームをするときの心構え
もしバナゲームをはじめる前に、基本的な心構えや注意事項について説明がありました。
- ゲームの進行をせかさない
- 他人の考えを否定しない
- 知りえた情報について口外しない
ゲームはトランプのように場に並べたカードと手持ちのカードを交換しながら死期が差し迫った状況をイメージして5枚のカードを残します。選びとった5枚のカードから中でも大事だと思う3枚と、少し優先順位の低い2枚に仕分けます。そしてゲームの最後に、なぜこのカードを選んだのか?そしてゲームを体験してみた感想を順番にシェアしていきます。

もしバナゲームの感想
大事だと思い選び取った5枚からさらに3枚を選び取るのがやっぱり難しいです。これはそのときの心理状態が大きく影響するだろうと思います。ちなみに僕はこの3枚を選びました。
- ユーモアを持ち続ける
- 不安がない
- 信頼できる主治医がいる
体験できたのは1回だけだったので表面的な感想になってしまうかもしれませんが、僕が考えるエンディングノートの本質部分、「もしものときに向かってこれからの生き方について自分と向き合うもの」と共通するところがあると感じました。
一方で「他人に自己開示をするきっかけになる」という印象を持ちました。ここはエンディングノートとは大きく異なる点です。
馴染みのない言葉だと思いますが、もしバナゲームはアドバンス・ケア・プランニング(ACP)の1つのようです。厚生労働省ではこのアドバンス・ケア・プランニングをよりわかりやすく、馴染みのあるものにするために愛称を募集しているようです。
人生の最終段階において、本人の意思が尊重され、本人が希望する「生を全う」できるよう、年齢を問わず健康な時から、人生の最終段階における医療・ケアについて考える機会を持ち、本人が家族等や医療・ケアチームと繰り返し話し合うことが重要であると考えられます。
このような取組をアドバンス・ケア・プランニング(ACP)と呼び、欧米を中心に取組が普及してきています。
参考:「ACP(アドバンス・ケア・プランニング)の愛称を募集します」厚生労働省のサイト
もしバナゲームは他のものに比べるとゲーム感覚で気軽にやってみたいと思えたので、その点は画期的だなと思いました。
「模擬余命宣告」は少々荒療治
「もしものとき」をできるだけリアルに感じてもらえるようにセミナーを企画したことがありました。長年外科医としてがん治療に携わり、1,000人以上の死に携わってこられた谷口医師とのコラボセミナーで余命宣告ワークと題して、参加者の方に「模擬余命宣告」を受けていただきました。
患者役として演技派の参加者の方にご協力いただいたおかげで、こういった感想をいただくことができました。
- 会場の空気が変わった
- 気温が2度下がった
- リアル過ぎて怖い etc
参加者の方には、もしものときの衝撃体験をしていただくことができたようです。
衝撃の「入棺体験」
テレビの特集で見たことがあったのでその存在は知っていました。でもなかなか機会がないし正直なところ抵抗もありましたが、誰もがいつかは経験することなので練習しておいてもいいかなと、誘っていただいた終活セミナーで思い切って体験してきました。
入棺体験の感想は、とにかく狭い。。 肩がきゅっとなります。

長さも余裕がありません。置いてあった棺桶がスタンダードなサイズなのか?本番ではワンサイズ上のものにした方がいいのか?わかりませんが、この中に長時間入っているのはかなり厳しいです。葬儀の生前契約として相談すれば、ぴったりなサイズを見立ててくれるのかもしれません。
狭かった話はこの辺にして蓋が閉められたときの感想です。
本当に体験で良かった。
これに尽きます。もしもこれが現実なら「ちょっと待った~」と叫んでいたと思います。なんとか脱出しようとこんな感じです。

まわりに人が大勢いてザワザワとした雰囲気のセミナー会場だったので、比較的軽いノリで入ることができました。これがシーンと静まり返った場所だったら棺桶に入るのにかなり抵抗があったと思います。
ちなみにエンディングセミナーの会場にはバリアフリータイプの棺桶も置いてました。バリアフリータイプはサイドの板を半分倒すことで車椅子の方でも無理なく最期のお別れができるようにと開発されたものです。

もしものときをどうしてもイメージできなければ、一度、棺桶に入ってみる。
これで駄目なら他の方法では難しいだろうと思います。もし機会があれば、なければ機会を作ってでも一度入ってみることをおすすめします。きっと人生観が変わります。

旅をコンセプトに入棺体験ができるセミナーを模擬余命宣告と同じく谷口医師と開催したことがあります。関連|最幸の人生を見つける旅
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司法書士・行政書士 伊藤 薫