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いつまで経ってもエンディングノートが書けない理由

そこそこというか、かなり売れているにもかかわらず実際に書いている人がほとんどいないエンディングノート。

エンディングノートを手に入れたことで安心・満足してしまう気持ちははよくわかります。学生時代に参考書や問題集を買っただけで、なんだか勉強したような気になったのと同じ感覚ですよね(苦笑)。

夏休みの宿題や締め切りのある仕事と同じように、追い込まれないとやらない・できないというのもよくわかります。優先順位の低いことはギリギリになるまであと回しです。これって僕だけじゃないですよね。

なぜ、エンディングノートが書けないのか?を考えてみましょう。

エンディングノートとは? 遺言との違い

まずはエンディングノートについて理解しましょう。エンディングノートに対してこんな誤解をしていませんか?

  • 遺言と同じようなものでしょ?
  • 高齢になってから書くものでしょ?

エンディングノートとは

エンディングノートとは、自分の経歴や思い出、もしものときに連絡して欲しい友人の連絡先、葬儀や墓の希望、尊厳死や延命治療に関する自分の考えなどをまとめておくノートのことです。書店に行けば多種多様なエンディングノートが並んでいます。

エンディングノートも様々

遺言との大きな違い

エンディングノートに相続(遺産分け)に関することを記載しても、遺言のような法律上の効力はありません

ありませんが、遺言に盛り込めない想いや情報をご家族や身近な方に伝えることに役立てることができます。

例えば、こういった意思を明記しておくことで、残された家族や親族の間で無用なトラブルを避けることが期待されています。

  • 家族葬にしてほしい
  • 墓は質素なものでいい
  • 延命治療はしないでほしい etc.

エンディングノートに書いておけること

遺言と違ってエンディングノートに書いておけることは多岐に渡ります。一例として、日本で一番売れているであろうコクヨのエンディングノート「LIVING & ENDING NOTE BOOK」の目次をご紹介します。

「LIVING & ENDING NOTE BOOK」
自分のこと自分の基本情報(住所・生年月日など)
資産預貯金について
口座自動引落しについて
有価証券・その他の金融資産について
不動産について
その他の資産について
借入金・ローンについて
クレジットカード・電子マネーについて
保険について
年金について
気になること携帯・パソコンについて
WebサイトのIDについて
宝物・コレクションについて
ペットについて
生活のことについて
家族・親族家族一覧
親族一覧
親族表
命日・親族メモ
冠婚葬祭メモ
友人・知人友人・知人一覧
その他の連絡先一覧
医療・介護健康管理について
告知・延命処置について
介護について
葬儀・お墓葬儀について
お墓について
葬儀・お墓メモ(家紋)
相続・遺言遺言書について
その他写真とデータについて
大切な人へのメッセージ
エンディングノートに書いておけること

関連|コクヨのエンディングノートを真剣に全ページ書いてみた

エンディングノートの残念な現実

この記事を読んでいるみなさんは多少なりともエンディングノートに関心があるのだろうと思いますが、みなさんがエンディングノートを書いておきたい理由は何ですか?

ある調査によると、家族に面倒を掛けたくない、終末期や死後の希望を残しておきたいというニーズがあるようです。

なぜエンディングノートを書こうと思ったのですか?

☑ 家族への感謝を書き残したいから 49.1%
☑ 遺品整理や遺産で面倒をかけたくないから 66.8%
☑ (入院や介護など)終末期の希望を伝えたいから 49.1%
☑ (葬儀や遺産など)死後の希望を伝えたいから 47.9%
☑ 最期は自分で始末をつけたいから 52.6%

出典:終活・エンディングノートに関する調査2014年(複数回答)

家族に面倒を掛けたいと思っている人はほとんどいないと思いますが、エンディングノートを書いている人はほとんどいません。

エンディングノートを作成していますか?(対象|現在介護を受けていない70歳以上の方)

いいえ 91.8%

出典:「終活の準備状況」に関する調査 2022年

これが残念ながらエンディングノートの現実です。

いつまで経ってもエンディングノートが書けない理由

エンディングノートが書けない理由を挙げれば、きりがなさそうですが、主なものはこんなところでしょうか。

  • 時間がない
  • 面倒くさい
  • 難しそう
  • 書くことが多すぎて、どこから書いていけばいいのかわからない
  • そもそも書き方がよくわからない etc.

でも、エンディングノートが書けない最大の理由は

  • 自分にはまだ早い
  • もしものときなんて、ずっと先のこと

と、何歳でも今が元気なら思考停止してしまうことかもしれません。

結局のところ、自分のもしものときにリアリティを感じられないからエンディングノートを書こうと思えないわけです。

エンディングノートを書いておいた方がいいと頭ではわかっているのに書けないのは、もしものときなんてずっと先のことと、自分事になっていないからです。

平均寿命は延びていますが、もしものときは突然やってきます。

もしものときは突然に

もしものときは突然やってきます。

僕の祖父のときもそうでした。夜はいつも通りでしたが、朝、母が起きると祖父が廊下で倒れていました。

「転んだだけだ」と祖父は言うけど様子が変なので、僕と祖母で病院に連れていくと、朝方、脳梗塞が起きていたことがわかりました。

それから祖父は施設と病院を行ったり来たりで自宅に戻ることなく亡くなりました。

あまりにも突然のことだったので、介護や延命治療の希望など祖父の気持ちはまったくわからずしまい。家族が代わりに決めるしかなかったです。

当時、僕は大学生で一人暮らしをしていたのですが、たまたま就職のことで実家に帰る用事があったので倒れる前の夜、祖父と話すことができました。

「ただいま」「おかえり」

「おやすみ」「おやすみ」

こんな何気ないやりとりが祖父と普通に話せる最期の会話になるとは思ってもみませんでした。

もしものときはずっと先のような気がするけど、来るときは一瞬のことなんですよね。こんなことは僕が言うまでもなく、みなさんもわかっていると思いますが。

一人暮らしの家から実家まで新幹線で2時間。夏休みと冬休み、春休みに帰省しても年3回程度しか帰らないのに、いつもは帰らないタイミングで帰省したときが祖父が倒れるときだったとは。。

両親が働いてて祖父母が親代わりだった僕にとって祖父の存在というのは絶対的でした。家に帰るといつも父親が家にいるような感覚と言えば、その存在感の大きさはなんとなく伝わるでしょうか。

祖父と僕(1歳頃)

祖父は脳梗塞で倒れただけで亡くなったわけじゃないけど、自分が知っている祖父とのギャップが大きく、就職で大阪で暮らし始めてお盆や年末年始に帰省しても祖父は家にいないので、20代半ばの僕にとっては祖父は亡くなってしまったような大きな喪失感がありました。

物心つく頃から大学まで祖父のことを見ているので、そりゃあ年々年をとっているという印象はありましたが、祖父の場合は少しずつ衰えていったというよりも、一夜にしてガラッと変わるのを目の当たりしたことが衝撃的な出来事として印象に残っています。

自分にとってエンディングノートが必要だと思うなら、何歳で書くのが良いのかを考えることに意味はないでしょう。

もしも明日がイメージできますか?

明日、意識不明になったら?

試しに「もしも明日」を考えてみませんか?

もしものときに家族に面倒をかけたくないと思っている方は、現状を把握するためにぜひ一度トライしてみてください。まだ元気だからとか、まだ若いからという言い訳はやめて真剣に考えてみてください。

「もしも明日」について考える15の質問を用意しました。

もしも明日、脳梗塞で意識不明になったら・・・どうなりそうか?真剣に考えてみてください。

Q1.緊急時の連絡先を決めていますか?・決めている ・決めていない
Q2.医療費の支払いはどうしますか?・お願いできる人がいる ・いない
Q3.預金はありますか?・ある ・ない
Q4.保険に加入していますか?・加入している ・加入していない
Q5.通帳やカードはどこに保管していますか?・把握している ・把握していない
Q6.介護をしてくれる人はいますか?・いる ・いない
Q7.成年後見制度を知っていますか?・知っている ・知らない
Q8.飼っているペットはいますか?・いる ・いない
Q9.延命治療について考えたことがありますか?・ある ・ない
Q10.どんな葬儀を希望しますか?・考えている ・考えていない
Q11.お墓はありますか?・ある ・ない ・わからない
Q12.携帯電話やパソコンのデータ、
SNSのアカウントはどうなりますか?
・考えている ・考えていない
Q13.財産を遺したい人はいますか?・いる ・いない
Q14.誰が法定相続人かわかっていますか?・わかっている ・わかっていない
Q15.エンディングノートを託せる人はいますか?・いる ・いない
もしも明日、脳梗塞で意識不明になったら・・・という15の質問

10年後ならイメージできないかもしれませんが、明日脳梗塞で意識不明になったら日々の生活がどうなるかはイメージできますよね?

いかがでしたか?

  • 家族やまわりに面倒をかけなくて済みそうだとか
  • 一体どうなってしまうんだろう?とか

様々な感情が沸き上がったと思います。おそらく、エンディングノートを書いておかないとまずいなと感じた人が多いんじゃないでしょうか。

エンディングノートを書いておいた方がいいと頭ではわかっているのに、いつまでも書けないのは、もしものときなんてずっと先のことと自分事になっていないからです。

エンディングノートを書き出すなら、もしものときを真剣にイメージすることがスタートです。

目的にあったエンディングノートを選んでいますか?

エンディングノートはどれも同じだと思ってエンディングノートを選んでいませんか?

エンディングノートは、大きくわけると3つのタイプがあります。

☑ もしもに備える
☑ これからの生き方を考える
☑ これまでの人生を振り返る

関連|エンディングノートはどれも同じだと思っていませんか?|3つのタイプ別レビュー

家族に面倒をかけたくないから書いておこうと買ったエンディングノートが、自分史作りに特化したものだったら書く気になりませんよね。なんとか頑張って書いたところで目的は果たせません。

これは極端な例ですが、これに近いことは大いにあります(苦笑)。

  • もしものときの家族の負担を減らしたいのか?
  • もしものときや亡くなってから家族にエンディングノートを見てもらう前提で書くのか?
  • 自分史を作りながらこれまでの自分と向き合うために書くのか? etc.

エンディングノートを書く上で、重視していることは何か?主に誰のために書くのか?を明確にすると、自分にあったエンディングノートが見つかります。

言い換えると自分の目的に合ったエンディングノートが見つからないといつまで経っても書けないでしょう。

良いエンディングノートを選んでいますか?

巷には無数のエンディングノートが溢れていますが、どうせ書くなら良いエンディングノートを選びたいと思いませんか?

エンディングノートを書きたい目的が明確になっていて、その目的にあったエンディングノートを選んでいる前提で、良いエンディングノートというのはどういうものでしょう。

  • 痒いところに手が届く項目がある
  • 紙質が良いので書いていて手が疲れない
  • ずっと先に役立てるものだから経年による劣化が少ない
  • 価格が安い etc.

いくら内容や素材などが良くても1ページも書けないではお話になりません。

そこで、良いエンディングノートを見極めるポイントをご紹介します。

  • ①プロフィールで挫折せず最後まで書くことができる
  • ②細かい解説を読まなくても直感的に書くことができる
  • ③大事なポイントを外さずに書くことができる

①プロフィールで挫折せず最後まで書くことができる

エンディングノートの多くは、最初に自身の生年月日や住所などプロフィールを書くように作られています。

意気揚々と書き始める方がほとんどだと思いますが、プロフィールのページに本籍や住民票コード、個人番号など普段気にしていないことを書くところがあると「あれどこに仕舞ってたっけ?」と探しはじめて手が止まり、いつまでもそのままになってしまうことが多いようです。

どんなに素晴らしい内容のエンディングノートでも、プロフィール止まりで最後まで書けないようなエンディングノートではまったく意味がありません。

もしもに備えることが目的なら昔の住所は事細かに書く必要はないように感じます。一方で、これまでの人生を振り返るのが目的なら記憶を辿るアプローチとしてはとても意味があると思います。

プロフィール欄が充実しているエンディングノートが多いと思うので、無理に全部を埋めようとせずに目的に応じて書けるところから書いていくのがプロフィール止まりにならないためのコツです。

②細かい解説を読まなくても直感的に書くことができる

ほとんどのエンディングノートには、具体的な書き方について解説がまとめられています。各ページに解説が散りばめられているものや、エンディングノートと解説が別冊になっているもの(書くだけで安心あなたと家族のためのエンディングノート)もあります。

解説をじっくり読んでから書けば、ひとりでもあまり悩まずに書けそうですが、解説を読むのはとにかく面倒くさい(笑)。いちいち解説を見なくても直感的にどんどん書いていけるのが良いエンディングノートと言えます。ただし、勘違いを招くことなく正確に書けるということが大前提です。

③大事なポイントを外さずに書くことができる

遺言と違ってエンディングノートに遺産分けの希望を書いたとしても法的な効果はありません。基本的なことですがあまり知られていないこういった大切なことが解説をさっと読むだけで理解できるものが良いエンディングノートです。

ただし、書き手の前提知識や理解度にも左右されるので、エンディングノート単体では限界があるだろうと感じています。各種団体が開催しているセミナーなどを活用して、大切なポイントを外さずにエンディングノートを完成させてください。

ご相談・お問合せ

司法書士・行政書士 伊藤 薫

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