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空き家を放置するデメリットと空き家を解消するためにやるべきこと

大相続時代を前に空き家が増えています

令和5年住宅・土地統計調査から空き家数の推移をみると、1993年から2023年までの30年間で約2倍になっています。

空き家が発生する原因は半数以上が相続によるものと言われているので、大相続時代を前に、家じまいは他人事ではなく自分事として考えておく必要があると言えます。

2025年には団塊の世代(1947~1949年生まれ)が75歳以上の後期高齢者になります。
そのため、近い将来、団塊の世代が所有している資産が子孫に引き継がれていく大相続時代を迎えると言われています。

所有者の高齢化や相続などをきっかけに、自宅の売却や子供が実家を売却する、いわゆる家じまいが増えています。

『家じまいに関する意識調査(https://lifull.com/news/35141/)』によると、家じまいを検討するきっかけは、「使う見込みがなく、家の維持・修繕が大変になった」が最多となっています。

また、空き家が発生する原因は半数以上が相続によるものと言われています。

『令和5年住宅・土地統計調査(2023年10月1日時点)』から空き家の現状をみてみましょう。

※本資料は総務省の公式ウェブサイト(令和5年住宅・土地統計調査 調査の結果)を参考にまとめました。

空き家の数

 ☑ 900万2千戸

2018年(848万9千戸)から、51万3千戸増加していて、空き家の数は過去最多です。

空き家の中で、使う目的のない空き家(賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家)は、385万6千戸あります。

空き家率

 ☑ 13.8%

2018年(13.6%)から0.2ポイント上昇し、空き家率(総住宅数に占める空き家の割合)も過去最高となっています。

現住居以外の住宅の所有状況

現住居以外の住宅を所有している主世帯は、475万3千世帯あります。

そして、使う目的のない空き家を所有している世帯数は、77万2千世帯あります。

※主世帯の定義
1住宅に1世帯が住んでいる場合はその世帯を「主世帯」とし、1住宅に2世帯以上住んでいる場合には、そのうちの主な世帯(家の持ち主や借り主の世帯など)を「主世帯」とした。

令和5年住宅・土地統計調査

いわゆる空き家を所有している世帯は日本の全世帯の約1.4%です。これを多いと見るのか?少ないと見るのか?何とも言えませんが、大相続時代を迎えると増えていくでしょう。

実家が空き家になってしまう理由

空き家になった実家はプラスの財産!?

プラスだけなら嬉しいのですが、相続財産にはマイナスの財産というものがあります。

プラスの財産の代表格といえば自宅をはじめとする不動産や預貯金・株式等で、マイナスの財産は借金や保証債務というところでしょうか。

現金や不動産はもらいたいけど、借金があるなら相続したくないというのが本音ですよね。

ただし、場合によっては不動産といえどもマイナスの財産になりえるし、誰も相続したくない、“負の遺産”と言っても過言ではないケースもあります。

別に、特殊な不動産の話をしているわけではありません。

相続をきっかけに、売れない・借り手がいない、家族も住まないといった理由で空き家になってしまった実家なのに、固定資産税だけは毎年払い続けないといけないとしたら、これがプラスの財産といえるでしょうか?

最近は、負動産という言葉もよく目にするようになりました。

空き家になってしまう原因は、相続

少し古い情報ですが、東洋経済「実家の片づけ」の記事には本誌独自の調査結果ということで、次のようなデータが示されていました。

実家の片づけ後に

  • 売却した人 38%
  • 賃貸に出した人 3%

売却、賃貸以外は「そのまま所有」と書かれているので、半数以上は売却や賃貸をせず、有効に活用できないままに放置されているということのようです。

このデータの通りだとすれば、相続を機に半数は空き家になる可能性があるということになります。

また、相続の名義変更をそのままにしたことがきっかけで、空き家になってしまうこともあります。

遺産分けの話し合いがまとまらないまま、おじいちゃんの名義のままで空き家になっています。

なんていうのは、相続のご相談を伺っているとときどき聞く話で、相続人が何人いるのかもわかっていない場合がほとんどです。

相続人へ名義変更ができなければ売却することができないため、そのまま空き家になってしまうことが多いようです。

考えてみれば、誰も住む予定のない実家だからこそ名義変更が後回しにしてしまっているケースは相当数ありそうですね。

使う目的がないから手続きが後回しになってしまう、名義変更ができていないから売却できない。卵が先か鶏が先かみたいな関係になってしまいます。

ただし、名義変更は済ませたものの、なかなか買い手が見つからなくて放置されているのと、相続の手続き自体を放置しているのでは大違いです。

いざ売却しよう、他人に貸そうという時にスムーズに事を進められるよう権利関係の放置は避けたいものです。

空き家になった実家はどうすればいいの?

空き家を放置するデメリット

【Aさん】
両親が亡くなり実家が空き家になりました。気持ちの整理がつかず名義変更もしないうちに早や20年。

地元は雪国なので経年劣化が早く、実家を空き家のままにしておくことが不安になってきました。

長期間空き家にしておくと、様々な悪影響が生じることで近隣の方に迷惑をかけるおそれがあります。

  • 害虫・害獣・悪臭
  • 不法投棄、不法侵入
  • 屋根・外壁の落下、倒壊 etc.

また、それだけではなく・・・

特定空家とは?

空き家をそのまま放置すると、倒壊の危険性が高いなど周囲に著しく悪影響を及ぼす「特定空家」に市区町村から認定されると、罰則が適用されることや強制撤去されることがあります。

特定空家になると

市区町村は、特定空家の所有者に適切に管理をするように助言や指導を行い、それでも改善が見られない場合は勧告や命令を行うことができます。

所有者が命令に従わない場合は50万円以下の過料が科されることや、行政代執行により空き家が解体された場合、かかった費用が請求されることになります。

空き家対策の強化

空き家対策を強化するため、2023年に空家法が改正されて、管理不全空家に対する措置が新設されました。

放置すれば特定空家になるおそれのある空き家を、市区町村が管理不全空家に認定し、管理指針に即した管理を行うことを空き家の所有者へ指導できるようになりました。

管理不全空家と特定空家の参考基準の例

参考:管理指針、管理不全空家の参考基準 国土交通省の公式サイト

管理不全空家になると

指導をしても状態が改善しない場合は、市区町村は勧告を行うことができます。

勧告を受けた管理不全空家は、特定空家と同様に住宅用地特例の対象から除外され、土地の固定資産税などの軽減措置の適用を受けることができなくなってしまいます。

まとめ

空き家問題に対する社会の関心が高まり、2023年に空家法が改正され空き家対策が強化されました。

空き家をそのまま放置しておくことは、何の解決にもなりません。

Aさんの場合は相続手続きが完了していないので、売却をするためにはまずは他の相続人と連絡を取って遺産分けの話し合いを進めることから始めることになります。

空き家を早期に解消するために

使う予定のない空き家を所有している場合は、売却する、貸す、解体するなどの方向性を決めて、早めに空き家問題の解消に動いていきましょう。

空き家の売却に関する税制や解体に関する補助金などが活用できないかも確認しましょう。

市区町村に相談

空き家が遠方にあるため、誰に相談すればいいかわからない、何から手を付ければいいのかわからないと悩んでいる方は、まずは空き家のある市区町村に相談してみましょう。

売却する場合

相続人や親族の中に有効に活用できる人がいなければ、売却することを検討しましょう。
売却する際は亡くなった方の名義のままではできないので、相続登記をする必要があります。

被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例を活用できないかを検討しましょう。

参考|No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例 国税庁のサイト

貸す場合

空き家が愛着のある実家などで当面の間、手放すつもりがなければ売却ではなく貸す方法があります。

空き家バンクという地方自治体のサイトで提供されている不動産情報を活用して、借りたい人を探す方法もあります。

空き家をリフォームしてから貸す場合は、国や地方自治体の補助金を活用できないかを検討しましょう。

空き家を解体する場合

空き家を適切に管理しなかったために通行人や近隣に損害を与えてしまうと、賠償責任を問われる可能性もあります。

土地を手放す予定がなければ、空き家の状態によっては早めに解体することを検討することも必要です。

空き家の解体について、国や市町村の補助金を活用できる可能性があります。

空き家を解体すると、土地の固定資産税が上がってしまうから解体はしたくないと考えている方もいるでしょう。

ただし、勧告を受けた管理不全空家は、特定空家と同様に住宅用地特例の対象から除外され、土地の固定資産税などの軽減措置の適用を受けることができないので、解体しないことにこだわる必要はありません。

空き家を解体することで

土地を売却したくても買い手が見つからない場合は、2023年からスタートした相続土地国庫帰属制度が活用できるかもしれません。

相続土地国庫帰属制度は建物が立っている土地は対象外ですが、空き家を解体することで売却することができない土地を手放す道が開ける可能性があります。

関連|相続したいらない土地を手放したい|相続土地国庫帰属制度について

まとめ

空き家が発生する原因は半数以上が相続によるものと言われています。

空き家になった期間が長くなるほど建物は老朽化が進むので売却することや貸すことが難しくなってしまいます。

親が亡くなってすぐは実家をどうするのかの話し合いがしにくいことが多いでしょう。早めに話し合っておくことが空き家を生まないための一番の対策です。

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司法書士・行政書士 伊藤 薫

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