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知識ゼロでも大丈夫|遺言の種類と作り方を解説します

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遺言に関係する記事を読んだり、まわりから相続の手続きが大変だったという話を聞いて・・・

  • 遺言を書いておいた方がいいのかな?
  • 書いておきたいけど書き方がよくわからないなぁ
  • エンディングノートに書いておけばいいの? etc

遺言が気になっているけどわからないことだらけで不安を感じている方に向けて、相続専門の司法書士・行政書士がまとめた記事です。わかりやすさを優先してできるだけ専門用語を使わずに書いていますが、最新の情報や相談の現場から得られた知見(相談実績1,000件以上)にもとづいていますので安心してお読みください。

遺言とは?

遺言(ゆいごん、いごん、いげん)とは、日常用語としては形式や内容にかかわらず広く故人が自らの死後のために遺した言葉や文章をいう。日常用語としてはゆいごんと読まれることが多い。このうち民法上の法制度における遺言は、死後の法律関係を定めるための最終意思の表示をいい、法律上の効力を生じせしめるためには、民法に定める方式に従わなければならないとされている(民法960条)。

ウィキペディア

遺言はウィキペディアではこのように説明されています。読み方は「ゆいごん」でも「いごん」でも好きに読んでいただいてOKです。

本記事では民法で定める方式の遺言について書いています。この章を読むことで遺言の基本的な知識とエンディングノートとの違いを知ることができます。

遺言でできること

民法で決められたルールに従えば遺言に書く内容は自由です。ただし、法的な効力を持つのは「法律で規定された事項」に限られます。遺言は遺言を書く人の一方的な意思なので、できることは以下のように限定されています。

  • 相続分の指定や遺産分割方法の指定など相続に関すること
  • 遺言執行者の指定や祭祀承継者(先祖の供養やお墓を守る人)の指定など
  • 遺贈や信託の設定など財産の処分に関すること
  • 認知・未成年後見人の指定など身分に関すること
①子供がいないので、全財産を配偶者に相続させたい ②老後の面倒をみてくれる子供に多めに相続させたい ③家族に迷惑をかけてきた子供には相続分を少なくしたい

法定相続分と異なる割合で遺産の分配ができます

①遺産の具体的な分け方を決めておいて、遺産分割協議の苦労を軽減させてあげたい(長男には自宅を長女には現金をetc) ②相続人どうしが疎遠のため、争いが生じないか心配

遺産の具体的な分配方法を決めることができます

①面倒をみてくれた息子の嫁にも遺産をあげたい ②相続人がいないので、お世話になった方に遺産をあげたい

法定相続人以外の方に財産を遺すことができます

今後、状況が変わった場合・気持ちが変わった場合には内容を見直したい

何度でも内容の取り消し、変更をすることができます

遺言の内容を確実に実現したい

意思の実現を確実にするために、信頼できる遺言執行者を自ら指定することができます

婚外子(非嫡出子)を認知しておきたい

生前だけでなく、遺言でも認知をすることができます

遺言作成の動機や心情、財産の分配方法を決めた理由などを記載したい

法律上の効力はありませんが「付言」「付記事項」として記載することができます

遺言とエンディングノートの違い

エンディングノートとは、自分の経歴や思い出、もしものときに連絡して欲しい友人の連絡先、葬儀や墓の希望、尊厳死や延命治療に関する自分の考えなどをまとめておくノートのことです。

エンディングノートの中には相続や遺産分けに関するページがあるものもあるため勘違いをしている人が多いのですが、遺産分けの希望をエンディングノートに書いても遺言の代わりにはなりません。

関連|もしものときに本当に役に立つエンディングノートの作り方

遺言の種類

自筆証書遺言のイメージ

民法が定めている遺言には種類がありますが「自筆証書遺言」、「公正証書遺言」の2つが一般的です。それぞれに書き方のルールが厳格に決められています。

  • 自筆証書遺言
  • 公正証書遺言

まずはそれぞれの特徴を把握しましょう。2つの遺言の違いを次の項目にわけて説明します。

  • 作成方法・特徴
  • 長所・短所

自筆証書遺言と公正証書遺言の作成方法・特徴

自筆証書遺言の作成方法

  • 遺言者が日付、氏名、財産の分割内容等を手書き 1)し、押印をして作成する。
  • 家庭裁判所に提出し、家庭裁判所の検認手続が必要 2)となる。

1)財産目録については、パソコンで作ったり不動産の登記事項証明書や通帳のコピーを別に添付する方法も認められています(2019年1月13日から)
2)自筆証書遺言書保管制度を利用して法務局で保管された自筆証書遺言は検認が不要です(2020年7月10日から)

公正証書遺言の作成方法

  • 遺言者が、2人以上の証人とともに公証役場 3)に出向き 4)、遺言の内容を公証人に口授し、公証人が遺言を作成する。
  • 文字を書けない方や病床の方も遺言をすることができる。
  • 遺言を作成した公証役場名、公証人名、作成年月日等がコンピューターで管理5)される。

3)「公証役場」とは、公証人が執務をするところで、全国に約300ケ所あります。公正証書の作成、私署証書や会社等の定款に対する認証等の業務を行っています

4)遺言者が病気等で公証役場に出向くことができない場合は、自宅等へ公証人に出張してもらうことも可能です

5)平成元年以降に作成された公正証書遺言はコンピューターに登録されており「遺言検索システム」で検索することができます。注)公証役場によってはそれ以前に作成されたものも登録されています。

  • 作成した公証役場名
  • 公証人名
  • 作成年月日 etc

遺言者が亡くなっている場合、相続人・受遺者は公証役場で調査を依頼することができます。相続人が請求する場合は以下のものが必要になります。

  • 被相続人の死亡を確認できる戸籍謄本等
  • 自分が相続人であることを証明する戸籍謄本等
  • 運転免許証等の相続人の本人確認資料

自筆証書遺言と公正証書遺言の長所と短所

自筆証書遺言の長所

  • 誰にも知られずに作成できるため、遺言の内容や存在を秘密にできる。
  • 自分ひとりで作れるので簡単
  • 費用がかからない 1)

自筆証書遺言の短所

  • 形式の不備や内容が不明確になりがちで、後日トラブルになりやすい1)
  • 遺言が無効になるおそれがある 1)
  • 紛失(失念)、滅失、偽造、変造、隠とくのおそれがある 1)

1)自宅で保管、貸し金庫に預けている、ご家族以外の親しい知人に預けている、司法書士・弁護士などに預けている etc自筆証書遺言は様々な場所で保管されているので紛失や隠とくが多いことが課題になっていました。

自筆証書遺言書保管制度を利用する場合、日付の記載や押印の漏れなど形式に不備がないかどうかの確認をした上で、問題のない自筆証書遺言が保管されます。3,900円の手数料がかかります(2020年7月10日から)

自筆証書遺言を法務局に預けることができます

自筆証書遺言が抱えていた課題を解決するべく遺言の書き方のルールが変わっただけでなく、法務局で自筆証書遺言を保管する新しい制度が2020年7月10日からスタートしました。自筆証書遺言保管制度を利用するための必要書類と費用です。

  • 自筆証書遺言書
  • 申請書
  • 本籍地の記載のある住民票
  • 本人確認書類(運転免許証など)
  • 手数料 3,900円(収入印紙)

今回の改正で遺言を書いた人の想いを確実に実現することができる自筆証書遺言が簡単に作れるようになれば、公正証書遺言をおすすめする割合は減っていくかもしれません。

自筆証書遺言保管制度を実際に利用してみて感じた率直な感想をまとめみました。利用を検討している方は参考にしてみてください。
関連|夫婦で遺言を書いて法務局に預けてみた|自筆証書遺言書保管制度の利用レポート

公正証書遺言の長所

  • 公証人が作成するため、形式の不備等により無効になるおそれがない
  • 原本は、公証役場で保管されるため、偽造、変造、紛失のおそれがない

未曾有の大震災だった東日本大震災のときに公証役場で保管されていた公正証書遺言の原本は破損・紛失が1つもなかったそうです(参考「東洋経済 8/6号」)。よほど厳重に保管されていたんでしょうか。この事実を知って驚くとともに、公正証書遺言をおすすめしようと思う理由になりました。

公正証書遺言の短所

  • 2人以上の証人が必要 2)
  • 費用がかかる

2)受遺者(遺言によって遺産を譲り受ける者)及びその配偶者、推定相続人等は証人になれない

遺言の作成事例

遺言に対して資産家や一部の特別な人だけが作るものというイメージを持たれているかもしれませんが、遺言を作る理由やきっかけは多岐にわたります。

参考までに当事務所で公正証書遺言を作成をサポートさせていただいた事例をご紹介します。読んでいただければ何も特別な事情がある人だけが遺言を作るわけではないことがわかっていただけると思います。

  • 一緒に遺言を作られたAさんご夫妻
  • お子さん達が納得できそうな遺言を作られたBさん
  • 障がいのあるお子さんに配慮した遺言を作られたCさん
  • 長男が事業を承継をしやすいような遺言を作られたDさん
  • 数次相続を見据えて遺言を準備されたEさん

一緒に遺言を作られたAさんご夫妻

ご夫婦一緒といっても二人で1つの遺言を作るわけではありません。

Aさんご夫妻にはお子さんがいません。お二人ともご両親は既に他界されているので配偶者と配偶者の兄弟姉妹がお互いの相続人ということになります。

家族構成を伺うと正確にはご兄弟と甥姪が相続人のようでした。しかも奥様のご兄弟とは疎遠だとか。そんな事情をお聞きするまでもなく、お子さんのいないご夫婦には遺言の作成をおすすめしています。というのもお子さんのいないご夫婦の相続で忘れられない思い出があるからです。

旦那さんが遺言を書いておかなかったばっかりに、共同相続人である旦那さんの兄弟から強硬に法定相続分を求められて最後は自宅マンションを売ることになってしまった奥様がいました。

こうなってしまったのは旦那さんの主な財産は自宅マンションだけだったこともありますが、「うちは兄弟仲がいいから大丈夫だ」と旦那さんが高を括っていたからです。とてもやりきれない想いでマンション売却の登記をさせていただきました。

血を分けた兄弟でも揉めるのに配偶者の兄弟と揉めないはずがない!というのは言い過ぎかもしれませんが、「うちは大丈夫」と自信を持って言える方は少ないんじゃないでしょうか?僕も結婚して子供ができる前に遺言を作りました。揉めるかどうかよりも相続人として手続きに関わってもらうのが煩わしいと思ったからです。お互いにです。

高齢になればなるほど兄弟姉妹が先に亡くなって甥姪が相続人になることが増えるので相続人間の関係性は薄くなるだろうし、相続人の判断能力が衰えるリスクも高まります。

その一方で兄弟姉妹には遺留分がないので遺言を作っておけば取り分を請求されることもありませんし、そもそも相続手続きに関与してもらう必要がありません。相続人である以上、何をもらわなくても遺産分割協議書を作るときに印鑑証明書を渡さないといけないので、相続手続きに関わる必要がないように遺言を書いておいてくれた方がありがたいというご兄弟が多いのではないでしょうか?

そう考えると、遺産をどう分けるかを配偶者と他の相続人で話し合って決めて欲しいといった特別な事情でもない限り(そんな人はいないと思いますが・・・)、配偶者に全財産を相続させるという遺言を書いておかない理由はないように思います。もちろん配偶者以外にも遺産をあげたい場合は、その旨をきちんと遺言に書いておけばいいだけです。

Aさんご夫妻は全ての財産を配偶者に相続させるという内容の遺言をそれぞれ作られていたので、作成から7年後に遺言の通りの相続を実現することができたのでした。もし遺言を作っていなかったら?というたらればの話をしてもしようがありませんが、もし遺言を作ってなかったら全く違う結果になってしまった気がします。

遺言作成から関わらせていただき遺言執行まで無事にやり遂げることができたので、僕自身も思い出深いお仕事の1つです。

お子さん達が納得できそうな遺言を作られたBさん

Bさんの相続人は二人のお子さんで、Bさんが作った公正証書遺言はすべての遺産をお子さん2人に2分の1ずつ相続させるという内容です。法律で決められている通りの分け方にする遺言をあえて作った理由は、遺言を書いておかないと長男さんが法定相続とは違った内容の分け方を言い出しかねないという不安からでした。

Bさんには法律で相続割合が決められている上に、それに則った遺言があれば流石に長男さんも他の分け方を言い出さないだろうという思惑がありました。念には念を入れて遺言を作成したことでBさんはやっと安心することができたようです。

障がいのあるお子さんに配慮した遺言を作られたCさん

障害のある息子さんを交えて遺産分けの話し合いをしなくても済むようにと、お子さん達のことを考えて遺言を準備されたCさん。

障害のある息子さんには他のお子さんよりも手厚く、そして渡す遺産は不動産のような何かと手続きが必要なものではなく、生活に必要になる現金を定期的に受け取ることができる資産を指定されました。また遺言執行者には信頼を寄せている長男さんを指定されたので障害のある息子さんも確実に遺産が受け継がれるような遺言を完成させて安心されていました。

数次相続を見据えて遺言を準備されたEさん

Eさんの相続人は奥様とお子さんです。Eさんが亡くなったときの相続税を少なくすることを優先するとほとんどの不動産を奥様に引き継ぐことがベストでしたが、将来的に奥様からお子さんに引き継ぐところまで総合的に比較検討した結果、奥様とお子さんにそれぞれ別の不動産を相続させる公正証書遺言を作成することになりました。

お持ちの不動産の中に奥様が相続した方が税制面で優遇される不動産がありました。当事務所では相続税について検討する必要がある場合は信頼できる友人の税理士さんと連携して最適な案を提案させていただいています。

ただし、中にはこういったケースがあります。

事件簿|間に合わなかった遺言

同居しているお子さん(Yさん)の受け取り分を多めにしたかったXさん。公正証書遺言の準備していましたが、間に合わずに遺言を作成することなく亡くなってしまいました。

これはもしかするとYさんから責められるかもしれないと思っていましたが、意外にも「これで良かったです」と言われました。お父さんの想いはありがたかったので反対できなかったけど、内心では他の兄弟と揉めたくなかったので実はYさんは困っていたそうです。

公正証書遺言の作り方

公正証書遺言作成の流れ

遺言者が2人以上の証人とともに公証役場に出向き、遺言の内容を公証人に口授し、公証人が遺言を作成します。作成日当日に公証役場に行くまでにこのような流れで準備をしておくことが一般的です。

公正証書遺言・作成の流れ図
公正証書遺言作成の流れ

登記の専門家である司法書士が公正証書遺言の作成に関与することで、将来、遺言にもとづき相続登記(土地・建物の名義変更)を行う際に安心して手続きを進めることができます。当事務所では、依頼者の方が公正証書遺言をスムーズに作成できるように、ご相談を承り、全力でサポートいたします(公正証書遺言作成支援)。

参考までに公正証書遺言を作成する際に当事務所でサポートさせていただく事項を併記しております。

  • 注1)不動産のリストアップは、権利証(登記済証・登記識別情報)、不動産の登記事項証明書、固定資産税の納税通知書、 名よせ帳をもとに行うことが考えられます。推定相続人の確認は、戸籍謄本・住民票等で行います。
  • 注2)依頼者(遺言者)が病気等で公証役場に出向くことができない場合は、自宅等へ公証人に出張してもらうことも可能です。
  • 注3)依頼者がお知り合いの方などを選んでいただくことも可能です。
  • 注4)あくまでも目安ですので、遺言内容についての想いがまとまっていて、遺産や推定相続人の確認など事前準備がお済みの場合は、 1~2週間で作成することが可能です。

ご注意ください!相続人は証人になれません

公正証書遺言を作るには証人が2人必要です。証人には財産や遺言の内容が知られてしまうので、いくら親しくても友人やご近所の方にはお願いしにくいですよね。家族や親戚など身内に証人を頼もうと思っても推定相続人やその配偶者など証人になれない人が民法で決められています。

(証人及び立会人の欠格事由)
民法第九百七十四条  次に掲げる者は、遺言の証人又は立会人となることができない。
  一  未成年者
  二  推定相続人及び受遺者並びにこれらの配偶者及び直系血族
  三  公証人の配偶者、四親等内の親族、書記及び使用人

民法

どうでしょうか?証人をお願いできそうな方が思い当たりますか?

お願いしたくても遠方に住んでいたり、中には親戚には財産が知られたくないという方もいらっしゃると思います。僕は親戚のほとんどが地元の山形県に住んでいるので山形からの2人分の交通費を考えると、やっぱり遠くの親戚よりも近くの他人なのかもと思ってしまいます。

司法書士・弁護士といった専門家に証人として立ち会いを依頼するには費用は掛かりますが、守秘義務が課せられているので内容が漏れる心配がなく安心です。

公正証書遺言作成の手続き費用

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司法書士・行政書士 伊藤 薫

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