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3分でわかる!遺産分け手続きの進め方をできるだけわかりやすく解説します

相続は、大切な方が亡くなったというのに、悲しんでばかりはいられないほど、やらなければならないことが次々に発生します。「なにから手をつければいいのかわからない」とお困りの方も多いのではないでしょうか。

中には期限がある手続きもあるため先送りにするだけでは解決しません。

何から手をつければいいのかわからない相続手続き

遺産分け手続きの進め方

相続手続きの中で、亡くなった方(被相続人)の遺産分けをどこから手をつけたらいいのか?不安を感じている方に向けて、相続専門の司法書士・行政書士がまとめた記事です。

わかりやすさを優先してできるだけ専門用語を使わずに書いていますが、最新の情報や相談の現場から得られた知見(相談実績1,000件以上)にもとづいていますので安心してお読みください。

遺言の有無による手続きの違い

遺産分け手続きは遺言の有無で大きく異なります。

  • 遺言が【ある】→原則、遺言の指定どおりに遺産を分けることになります【指定相続
  • 遺言が【ない】→法が定める基準で分けることになります【法定相続

遺言があれば、遺言にもとづいて名義変更を行うことになります。

遺言がなければ、【法定相続】は各相続人が受け取ることができる割合しか定められていないため、相続人全員で誰が何を受け取るのかについて協議をし合意をする必要があります。

この手続きを遺産分け手続きといいます。

遺言がない場合の遺産分けの流れ

遺言がない場合の遺産分け手続きは、次の流れで進めていくことが一般的です。

遺言がないと判断すれば、②の相続人の確定から順を追って進めていきます。相続人全員で遺産分割協議を行い、遺産分割協議書にもとづいて⑥の名義変更を行うことになります。

  • ①遺言の有無の確認
  • ②相続人の確定
  • ③遺産の確定
  • ④相続の承認・放棄の手続き
  • ⑤遺産分割手続き
  • ⑥相続財産の名義変更手続き
  • ⑦相続税の申告・納付
遺言の有無で異なる遺産分け手続きの流れ

遺言がないと、相続人全員で遺産分割協議をする必要があるので遺言がある場合に比べて手間と時間がかかる傾向があります。中には遺産分けの話し合いが非常に困難になるケースもあります。

次に相続人全員を把握する方法や遺産分けの話し合いではどんなことをするのかについて解説します。

①遺言の有無の確認

まずは、亡くなった方が遺言を作成していたかどうかを調べましょう。

遺産分け手続きを進める上で、遺言の有無は大きく影響してきます。集める書類だけでなく、結果も大きく変わってくるかもしれないので、可能な限り探すことをおすすめします。

遺言の探し方はこちらで詳しく解説しています。

②相続人の確定

遺産分割協議は相続人全員で行う必要がありますが、相続人全員を把握するにはどうすればいいのでしょうか?

誰が相続人になるのかは戸籍を集めて確認します。役所で亡くなった方(被相続人)の最後の戸籍を取ればいいと思われるかもしれませんが、実際には手間がかかります。

というのも結婚・離婚・養子縁組・転籍などで戸籍が新しくできたり、他の戸籍へ入ることがあるので最後の戸籍だけでは相続人全員を把握することができないからです。

そのため、相続人全員を把握するために被相続人の生まれたときから亡くなるまでの全ての戸籍が必要になります。

相続人の調べ方・戸籍の集め方は、こちらで詳しく解説しています。

関連|知識ゼロでも大丈夫|相続人の調べ方・戸籍の集め方

③遺産の確定

ひとくちに遺産といってもさまざまなものがあります。現金や預貯金、不動産はもちろん、株式などの有価証券、亡くなった方(被相続人)が債権者になっている貸付金などの債権、貴金属や骨董品などの貴重な動産など見落としがないように調査をする必要があります。

また、忘れてはならないのが借金等のマイナスの遺産です。亡くなって時間がたってから多額の借金が発覚することがあるので、しっかりと調査しておく必要があります。

遺産の調べ方は、こちらで詳しく解説しています。

関連|知識ゼロでも大丈夫|遺産の調べ方と注意しないといけないこと

④相続の承認・放棄の手続き

遺産には、プラスの遺産だけでなく、マイナスの遺産もあります。マイナスの遺産の方が多い場合もあるでしょう。

相続人は亡くなった方(被相続人)の相続財産を承継(相続)するのか?、放棄するのか?を選択することができます。

遺産を確定してその価値を把握することで、プラスとマイナスの遺産を比較し、相続(単純承認・限定承認)をするのかあるいは放棄をするのかを判断しましょう。

ただし、相続が開始したことを相続人が知った日から何もせずに3ヶ月が過ぎると、自動的にプラスの遺産もマイナスの遺産も全部相続(単純承認)したことになってしまいますので、限定承認または相続放棄をする可能性がある場合は注意しましょう。

事情によっては3ヶ月の熟慮期間を延長してもらえることがあります。

相続の承認・放棄の手続きのイメージ

⑤遺産分割手続き

ここまでくれば、遺産分けの事前準備としてこういった内容がはっきりしていると思います。

  • 相続人は誰か?
  • 遺産は何があるか?
  • 遺産はいくらか? etc
遺産分けのイメージ

法定相続は各相続人が受け取ることができる割合しか定められていないため、相続人全員で誰が何を受け取るのかについて協議をし合意をする必要があります。

この話し合いを遺産分割協議(いさんぶんかつきょうぎ)といいます。

遺産分割協議の進め方は、こちらで詳しく解説しています。

関連|知識ゼロでも大丈夫|遺産分割協議の進め方・遺産分割協議書の作り方

⑥相続財産の名義変更手続き

遺産分割協議がまとまり、誰がどの遺産を受け取るのかが決まれば、不動産は名義変更(相続登記)、預貯金なら解約(払い戻し)のように遺産分割協議書に基づき相続手続きを行います。

名義変更については、こちらで詳しく解説しています。

関連|知識ゼロでも大丈夫|名義変更の手続き・必要書類

⑦相続税の申告・納付

遺産分けの最後の手続きは相続税の納付です。実際に相続税を納めなくてはならないケースは死亡者数の数パーセントですので、必ずしも相続税を納めなければならないわけではありません。

大阪国税局の課税割合は約9%
令和元年分における被相続人数(死亡者数)は 216,094 人(前年対比 100.7%)でした。そのうち相続税の申告書の提出に係る被相続人数は 18,448 人(同 97.0%)で、その課税価格の総額は 2 兆 4,980 億円(同 92.9%)、申告税額の総額は 3,060 億円(同 87.2%)でした。(大阪国税局)

国税庁のサイト

なお相続税は相続が開始してから10ヶ月以内に申告、納付しなければいけません。

参考|相続税の仕組みの分かりやすい解説「相続税のあらまし」@国税庁のサイト

遺産分け手続きのよくある質問

Q. 父の遺言が見つかりませんどこを探せばいいですか?

同居している父から「自宅はAに相続させる」という内容の公正証書遺言を1年前に渡されたので、自宅はいずれ私のものになるとすっかり安心していたのですが・・・

葬儀の後、弟から父が亡くなる前に遺言を書き直していたという話を聞いて、自宅は本当に私がもらえるのか不安になってしまいました。遺言はどこを探せばいいですか?

もし、内容の矛盾する2つの遺言がある場合は、作成した日付が新しい遺言が有効です。

遺言の調査方法は公正証書遺言と自筆証書遺言の場合で変わってきます。

遺言の探し方|公正証書遺言の場合

公正証書遺言は、平成元年以降のものについては日本公証人連合会の遺言情報管理システムを利用して、検索することが可能です。

注)公証役場によってはそれ以前に作成されたものも登録されています。

  • 作成した公証役場名
  • 公証人名
  • 作成年月日 etc.

遺言検索の必要書類です。

☑ 遺言者が死亡した事実を証明する書類(除籍謄本等)
☑ 遺言者の相続人であることを証明する戸籍謄本
☑ 申出人の本人確認書類および印鑑登録証明書

※遺言者が亡くなる前は、遺言検索の申出は遺言者本人に限られています

遺言の探し方|法務局で保管されている自筆証書遺言の場合

自筆証書遺言書を法務局で保管する制度が2020年7月10日からスタートしました。

関連|夫婦で遺言を書いて法務局に預けてみた|自筆証書遺言書保管制度の利用レポート

2020年7月以降は自筆証書遺言が法務局で保管されている可能性があります。この制度を利用して法務局に自筆証書遺言を預けている場合は、遺言書が保管されているかどうかの確認をすることができます。

遺言の探し方|法務局で保管されていない自筆証書遺言の場合

残念ながら検索する方法がないので、亡くなった方の自宅や遺品(机の引き出し・仏壇・金庫)を探すしかありません。ご自身で保管していた場合は、通帳・自宅の権利証などと一緒に保管している可能性があります。

貸金庫に保管しているケースもありますが、貸金庫を開けるためには銀行で相続手続きをしなければならないという問題があります。

また、ご家族以外の親しい知人や司法書士・弁護士などに預けられていることもあります。

Q. 遺言がないと不動産の名義変更はどうなるの?

遺言がない場合の遺産分け手続きを、不動産(土地、建物、マンションなど)の名義変更を例に見ていきましょう。

遺言がないときは、法が定める基準で分けます。【法定相続】

でも、具体的にはどうするの?

法律で決めているのはこれだけです。

☑ 誰が相続人か
☑ 相続できる割合はどれだけか

法律で決めているのはこれだけ

まずは、亡くなった方の生まれてから亡くなるまでの全ての戸籍を集めて相続人を調べます。※配偶者・子以外が相続人になる場合は調べる戸籍は増えます

次に権利証・登記事項証明書等で亡くなった方の不動産を探します。

  • 権利証
  • 登記事項証明書
  • 納税通知書
  • 名寄帳

次に誰が何を受け取るのかを相続人全員で話し合って合意をする必要があります。この話し合いのことを遺産分割協議といいます。

もし話し合いがまとまらなければ…遺産分割調停へ。

遺言がない場合の名義変更は順序立てて進めていくことになります。

  • ①相続人の確定
  • ②遺産の確定
  • ③遺産分割手続き
  • ④名義変更

Q. 限定承認はどんな手続きですか?

限定承認は相続したプラスの遺産の中からマイナスの遺産を支払って精算するというもので、相続人が自分の財産を持ち出して支払う必要がありません。マイナスの遺産があるからといって相続放棄した後でプラスの遺産の方が多かったことが判明した場合に、悔しい思いをすることもありません。

ただし相続が開始したことを相続人が知った日から3ケ月以内に家庭裁判所に相続人全員で申述する必要がありますし、申述の際は、遺産目録を作成しなければなりませんので、手間がかかります。

また、債権者のために官報に公告をしたり、返済のために遺産を処分したりする必要があり、これらの手続きを弁護士に依頼すれば費用もかかります。

最終的にプラスとなるのか、プラスであってももろもろの費用がかかれば、ほとんど手元に残らない可能性があるので、結局はプラスマイナスを見極めて、単純承認をするのか相続放棄をするのかを選択したほうが簡単かもしれません。

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司法書士・行政書士 伊藤 薫

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