司法書士として見逃せない衝撃的な内容の記事を新聞で見つけました。
最後の登記から50年
これは全国の約10万筆の土地を調査した結果、最後の登記から50年以上が経過し、所有者が不明になっている可能性がある土地の割合が2割を超えていたというものです。ちなみに最後の登記から70年以上たった割合は9.7%、90年以上は5.6%だったそうです。
50年以上登記をしていなければ相続が発生して10~20年経過している可能性が高く、さらに相続が発生して相続人が増えてしまって、手続きを進めるのが簡単ではなくなっている可能性の高い土地が2割以上あることになります。
相続手続きといえば、まずは預貯金の解約手続きをして、それが終わってから不動産という流れが一般的じゃないでしょうか。預貯金は手続きをすれば現金が手元に入りますが不動産の場合は名義を変えたところで現金が手に入るわけじゃないので、後回しになるのは当然ですよね。
よくあるのが、亡くなった父親名義の自宅の名義変更を母親が亡くなった時にまとめて子供に変更するというもの。費用や手間を考えれば売却の予定がなければこの方法も理に叶っているのかもしれません。
売却する予定がないなど名義を変更する必要がなかったのをいいことに長い間、名義変更をほったらかしにしてしまった結果、相続人が増えてしまって手続きができなくなったというのが話題の空き家問題のひとつの原因になっているのは間違いないでしょう。
これから先、不動産が余っていくとますます売れない不動産が増える、売れない不動産の名義変更を先送りにする結果、塩漬けされて空き家になる“負動産”が確実に増えていくと思われます。
こうした状況の改善にひと役買ってくれそうな新しい制度が平成29年5月29日からスタートしました。相続人の関係図を法務省が証明してくれる「法定相続情報証明制度」というものです。
法定相続情報証明制度とは?
相続人を把握するために必要な戸籍をすべて取得して相続人の関係図を作って法務省に提出すると、法務省が内容を確認した上で公的な証明書として法定相続情報一覧図を発行してくれるという制度で不動産、預貯金、株式といった各相続手続きにこの証明書を提出することで、個別に戸籍を提出する必要がなくなるため、相続人の負担の軽減が期待されています。
この制度が浸透すれば、手続きのやり易さからすると
- ①法定相続情報証明制度(法務局)
- ②相続による不動産の名義変更(法務局)
- ③相続による預貯金の手続き(銀行等金融機関)
という相続手続きの流れを作ることができるかもしれません。
はじめに①の手続きを法務局でするなら一緒に②の不動産の名義変も済ませておこうというイメージですね。この流れを作ることができれば、名義変更をしないままに残されてしまう不動産を減らすことができるんじゃないかと期待されているわけです。
とはいえ現時点では「法定相続情報証明制度」で発行される法定相続情報一覧図は法務局でしか利用することができません。残念ながらまだ金融機関でも税務署でも使えないんですね。
現時点でどんなメリットがあるのかというと、全国の法務局で使えるので不動産を各地に所有している場合は法定相続情報一覧図を利用することで各地の法務局に戸籍を添付しなくても申請できるようになります。
法務局でしか使えなければ期待している効果はおそらく見込めないので、できるだけ早めに金融機関でも利用できるようになるといいですね(2017年6月)。
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司法書士・行政書士 伊藤 薫