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株の相続を忘れていませんか?

2016年10月1日から株式会社の役員変更の登記申請に株主のリストを添付しなければいけなくなりました。役員変更に限らず株主総会の決議が必要(株主全員の同意が必要)な登記を申請する場合には上場・非上場を問わず全ての株式会社が行わなければならず、実質手続きにひと手間増えることになります。

相続というと不動産の手続きばかりに目がいきがちですが、今回の改正は相続財産に株式が含まれていれば関わってくる内容です。会社を経営されている方、特に家族で会社を経営されている場合はどういった改正なのかを正確に把握しておく必要があります。

株主リストとはどういったもので、具体的にどんな内容を記載しなければいけないのか株主総会の決議が必要な場合を例に見ていきましょう。

はじめに、株主リストに具体的に何を書かなければいけないかというと・・・

株主の

  • 「氏名又は名称」
  • 「住所」
  • 「当該株主のそれぞれが有する株式数及び議決権数」
  • 「当該株主それぞれが有する議決権に係る当該割合」です。

ただし記載しなければいけない株主は次のうちいずれか少ない数を記載すればよいとされているので、必ずしも株主全員を記載しなければいけないわけではありません。

  1. 10名
  2. その有する議決権の数の割合をその割合の多い順に順次加算し,その加算した割合が3分の2に達するまでの人数

この点を気にされる方が多いような気がしますが、議案について誰が賛成・反対だったといった内容を記載する必要はありません。

というのも改正の背景には株主総会議事録などを偽造して虚偽の役員の変更登記を行い役員になりすますといった犯罪が後を絶たなかったので、株主総会議事録が偽造されて虚偽の登記がされることを防止するため株主リストの添付が要求されることになったからです。

そういったことから誰が賛成又は反対したといったところまでの記載は要求されていないというわけです。

また、株主の住所は現在の住所ではなく会社が把握している住所を記載すれば足りるようです。

一方で株主に相続が発生している場合はそのまま亡くなった株主を書けばいいのではなく、相続人から会社に株主が死亡した旨の届け出があった場合、さらに相続人代表として議決権を行使する者の届出があった場合というように状況に応じて、「株主(被相続人)と法定相続人全員を併記する」、「議決権行使者」などを記載する必要があります。もちろんこれは相続の手続きが完了していない場合です。

ちなみに過去に株主総会で決議をしていたものの役員変更の登記申請をしていなかったようなケースについても10月1日以降に登記申請をする場合には株主リストを添付しなければいけません。なお添付する株主リストは決議をした当時の株主に基づくリストになります。

改正のタイミングで司法書士会からこういったポスターが送られてきたので株主リストを作成する上で拠り所になる株主名簿をしっかり作っていないところも実際には多いような気がします。

株主名簿は作っていますか?

ただし、法に則って株主総会が適切に開催されてその議事録が作成されていながら株主リストが作成できないという状況は想定しにくいと法務省は考えているようです。何年も前の当時の株主を把握できていないことはありえない話ではないと思いますが、その場合は過去の確定申告書を参考にすることが有効のようですね。

株主リストに記載するのは必ずしも株主全員が対象というわけではありませんが、あの人は亡くなったから株は誰が相続したのだろうといったことや株の譲渡の状況を把握しておくこと、会社を適法に経営する上で当然のこととは思いますが、今後は登記申請の場面でも不可欠になります。

個人の相続という視点では、所有している株(特に非上場)があれば相続人にわかるように整理しておくことや相続が発生したときには株の相続手続きを怠らないことが今後はより一層求められることになるでしょう。

株主のリストについては実際に運用される中で記載方法のルールや課題が明らかになってくることだろうと思います。

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司法書士・行政書士 伊藤 薫

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