エンディングノートに遺産分けの希望を書いてはいけない。
エンディングノートに遺産分けの希望を書いたところで「遺言」としての効力はありません。
僕が書いたコクヨのエンディングノートでもこのことが明確に示されています。
にもかかわらず「遺言書について」というページがあるのは・・・
私、伊藤 薫が実際にコクヨのエンディングノートを2ヶ月半かけて書いていく中で相続専門司法書士の視点から気づいたことをまとめました。
目次【本記事の内容】
エンディングノートには遺言書の保管場所を書いておく
エンディングノートに遺産分けの希望を書いたところで「遺言」としての効力はありませんが、「遺言書について」というページがあるのはこういった内容を家族に伝えるためです。
- 遺言書を作成している?いない?
- 遺言書の種類は?
- どこに保管しているのか? etc
コクヨのエンディングノートでは、遺言書についてのページを書いたとしても遺言書を作ったと勘違いすることがないように工夫されています。
でも、よくよく考えてみたらこのエンディングノートの姉妹品で「遺言書キット」なるものが販売されているので、住み分けというか、役割分担がしっかりされているということか!と勝手に納得しました。
ふと、遺言書についての隣のページをみると「相続メモ」というタイトルで遺産の具体的な分け方についての希望を書いておくページがありました。
あれっ!思っていたのと違う
「誰に」、「何を相続させるか」の横にはそれを決めるに至った理由を書いておけるような「私の考え」という欄があるので、遺言の素案を作るのには役に立ちそうですね。
「ここに記入すると、家族の参考情報としては役立ちますが、法的な効果は発生しません」
と、注意書きにもあるように、エンディングノートは遺言書の代わりにはならないのでくれぐれもご注意ください!
あくまでも素案ということです!!
このページのタイトル通りに、「相続メモ」にとどめておかないと失敗する可能性があるということです。ご注意ください。
とにかく相続人は早めに確認しておこう
僕は自分の財産を誰にあげるのかについて自分で確実に決めておきたい人が遺言書を書いておけばいいと考えています。
とはいうものの遺言書を書いておかないとトラブルになる可能性が高いケースというものがあります。
遺言書を書いていない人が多いので、遺言書についてのページは「作成していない」にチェックして終わることが多いのでしょうが、それじゃもったいない!
エンディングノートにある家族や親族のページを書きながら、まずはこの2点を把握しておきましょう。
- 自分の相続人は誰なのか?
- 自分は誰の相続人になるのか?
これを把握した上で、遺言書を作るかどうか?
相続人の立場なら遺言書を書いてもらっておく必要はないのか?について早めに考えておくことが大切です。
親族メモには何を書いておく?
命日を書く欄の下にひっそりと「親族メモ」という項目があります。親族について家族に伝えておきたいことがあれば書いておきましょうと、書いてあります。
- 前婚での子がいる場合
- 認知した子がいる場合
- 養子がいる場合など
相続の実務では亡くなった方のお子さんを洩れなく把握することは手続きを進める上でとても重要なことです。
前婚でのお子さんを相続人と認識していない方が結構いらっしゃることはご相談のときに常々感じています。
コクヨのエンディングノートにある家系図のような親族表も前婚のことを書くようには作られていません。まあ当然かもしれませんが(汗)
だから親族表を見ながら自分の相続人について考えても前婚でのお子さんを相続人として見落としてしまうのもわからないではありません。
交換日記(例えが古い?)じゃないんだし、たとえ家族でもエンディングノートは気安く見せ合うようなものではないでしょう。
一方で日本では夫婦3組に1組が離婚しているというデータがあるようです。アメリカは2組に1組だとか。
この離婚率からすると相続人や親族関係を正確に整理しておけるように、前婚での親族関係も書いておける親族表があってもいいような気がします。
なお家族・親族の章はこのようなページで構成されています。
- 家族一覧
- 親族一覧
- 親族表 etc
家族一覧について
家族一覧のページにはこういった内容を書いておきます。
- 家族の携帯の番号
- メールアドレス
- 勤務先の情報 等
家族ってどこまで書くんでしょうね?
自分の価値観で判断してもいいんでしょうけど、住所を書く欄がそれぞれにあるので同居かどうかは問わないみたいです。
子供の頃、うちは7人家族でした。僕はサザエさんちと同じ7人家族と無邪気に喜んでいましたが。
- 両親
- 僕と妹
- 祖父母
- 曾祖母
僕の地元は三世代同居率が約25%で日本一の山形県(全国平均約9% 2005年)とはいえ、舅、姑さらに姑の母(正式な言い方って?)が同居する家で暮らす僕の母は大変な毎日だったんでしょうね。
このエンディングノートには家族6人分までしか欄がないので7人だと書ききれませんが、最近では6人家族でもかなり珍しいんでしょうね(平均世帯人員は約2.6人・2010年)
親族一覧について
家族のページの時と同じようにどこまでが親族なんだろう?と思ってしまうかもしれませんが、親族の範囲は民法で次のように定められています。
(親族の範囲)第七百二十五条 次に掲げる者は、親族とする。
民法
一 六親等内の血族
二 配偶者
三 三親等内の姻族
六親等内の血族というと、このあたりまで含まれるのでけっこう範囲が広いですよね。
- 従兄弟の孫とか
- 祖父母の兄弟の子 等
親族一覧よりは親族表の方が家系図のようにたくさん書けるように作られていますが、それでも従兄弟までしか書けません。
親族一覧にはもしものとき(入院・葬儀)に、連絡をするか?しないか?を書いておけるのですが、9人分しか欄がないのでここには確実に連絡をしてほしい人だけを書いておけばいいと思います。
早めに相続手続きをしておいた方がよいケース
実家で家系図のような親族表を書いているときに、数年前に亡くなった母の叔母の相続手続きがまだ終わってないことを耳にしました。
そうそう。古い戸籍から自分のルーツを調べたり、戸籍をもとに自分の家の「家系図」を作ることがちょっとしたブームになっているみたいですね。
関連|家系図を作ってみてわかった|遺言書を作っておいた方がよい人
母の叔母(僕からみると祖母の妹)は子供がいなかったので相続人は兄弟姉妹。
祖母の兄弟姉妹が相続の手続きを済ませておくのが理想でしたが・・・手続きをはじめる前に祖母が亡くなったため母をはじめ子供達も祖母の兄弟姉妹と一緒に相続人になってしまいました。
母達の代で手続きをしてくれたらいいのですが、手続きが完了しなければ、いずれ僕や従兄弟達が相続人として関わらなければいけなくなってしまいます。
僕たちの代になると相続人の数も爆発的に増えるし、会ったことのない人もいるでしょう。
住んでいるところもてんでばらばらで手続きが難航することは目に見えています。
こういうケースのご相談では、第3順位の相続人は兄弟姉妹なのだから、その兄弟姉妹以上は相続人にならないのでは?と疑問に思われる方が時々おられます。
分かりにくいかもしれませんので、図にすると・・・

被相続人Xさんの相続人は兄弟姉妹で、兄弟姉妹はA、B、Cさんとします。
AさんはXさんより先に亡くなっていたため、Aさんの子供であるEさんが相続人になります。これを代襲相続といいます。
これに対して、Bさんもその子供であるFさんもXさんより先に亡くなっているので、Fさんの子供であるGさんは相続人になりません。
兄弟姉妹が先に亡くなっている場合は、その子供である甥姪は相続人になりますが、孫は相続人にはならないからです。
一方で、Xさんより後に亡くなったCさんの配偶者であるDさんは相続人になります。
仮にこういう場合はDさんがXさんの相続人になることはありませんでした。
- CさんがXさんより先に亡くなっていた
- Cさんが亡くなる前の平成11年頃にC、Eさんで相続手続きを完了していた
相続の手続きを完了しないままに次の相続が発生してしまうと、本来の被相続人の兄弟姉妹以上に相続人が増え続けることになるわけです。
母たちの代で片を付けることを切に願います
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