遺産相続で配偶者を優遇する改正案の最大のポイントは?

遺産相続の際に配偶者を優遇する案を法務省が検討しているようです。なんでも以前検討されていた配偶者の法定相続分を引き上げるという案に代わるものらしいです。

この配偶者の優遇案というのは、結婚して20年以上になる夫婦で生前もしくは遺言で居住用の建物や土地を配偶者に贈与されている場合は、遺産分割をする上でこれらの建物や土地についてはあらかじめ除外することができるというものです。

現在の配偶者の法定相続分は共同相続人がいれば2分の1から4分の3まで。遺産全体に占める不動産の割合が高い現状を考えれば、配偶者が引き続き自宅で暮らすために自宅を相続すると他の財産をまったく相続できないことや自宅以外の財産がほとんどなければ遺産分割にあたって自宅を売却せざるを得ないことも十分にありえます。

今回検討されている配偶者の優遇案は、

  • 配偶者が引き続き自宅で暮らすことができるようにすること
  • さらに法定相続分に応じて配偶者が自宅以外の財産も受け取ることができるようにすること

が大きな目的といえます。 このニュースを見ていて思い出したのが司法書士になって間もない頃に遭遇したXさんの事例でした。

遺言を書いていなかったばっかりに・・・

Xさんご夫婦にはお子さんがおらず相続人は奥さんとXさんのご兄弟でした。Xさんが遺言を作っていなかったために奥さんはXさんのご兄弟から相続分を主張されて、自宅を守るために自分の貯金からご兄弟にお金を払わざるを得なかったという内容でした。

遺言を作っていなかったということで親族から自分の生活が脅かされるという現実に衝撃を受け、司法書士の世界というのはなんとも世知辛い話が身近にあるんだなぁと思った記憶があります。

遺言を作っていなかった理由は知る由もありませんが、もしかすると相続人は配偶者だけと思い込んでいた。もしくは配偶者とともに兄弟姉妹が相続人になることはわかっていたけど、まさか兄弟姉妹が相続分を主張してくるとは思っていなかったとか・・・

ここ数年の相続や遺言への関心の高まりからするとそう考える方は減っているように感じますが、10年前ならたくさんいらっしゃったのかもしれません。

Xさんご夫婦は再婚同士だったので配偶者の兄弟姉妹との関係性が薄かったことも影響していたのかもしれませんが、兄弟姉妹には遺留分(法律で定められている最低限の取り分)がないので遺言さえ書いていれば配偶者の権利を守れたと思うととても残念です。


さて今回の配偶者の優遇案ですが、これから検討されるので条件が変わる可能性もありますが生前に贈与もしくは遺言で贈与を受けていることが前提になっています。

【優遇】というよりも配偶者を【守る】という印象を受けた改正案なので、遺言があれば解決することが可能な配偶者と兄弟姉妹が相続人となる場合よりも配偶者と遺留分のある配偶者の前妻・前夫との子が相続人になる場合に効果が期待できそうです。

ただし、遺言・相続のご相談の中には、「○○に遺言を書いておいてもらわないと私が困るんです」といった、誰かが○○をしてくれないと残される人が困るという相続する側の声を聞くことが多いので、周りがやきもきしていても当のご本人は動こうとしないという現実もあります。

せっかくの改正案が実現しても活用する気がなければ絵に描いた餅。ぜひとも必要な方が活用しやすいものになればと思います。