相続(遺産分け)手続きの具体例

遺産分け

遺産分け手続きをイメージしやすいように事例を元に解説します。亡くなった方が遺言を残していなかった2つの事例を用意しました。よくある一般的なケース(A子さんの事例)と手続きが困難になりそうな少し込み入ったケース(B子さんの事例)です。

よくある質問を通して理解が深まるようにと考えてQ&A形式でまとめました。できるだけ具体的な状況をイメージしながら読んでいただければ幸いです。

A子さんの事例

先月父が亡くなり、自宅の土地と建物、預貯金が遺産として残りました。遺言書はありません。家族構成は、母と、子供は私と姉と弟の3人ですが、姉は数年前に亡くなっています。

私は両親と同居しており、今後も母と同居して面倒を見ていくつもりなので、自宅は私が取得したいと考えています。

弟は独立して家庭を持っており、2年前に父からマイホーム購入の頭金として1,000万円を出してもらっていたこともあって、私が自宅を取得することを承諾しています。

今後どのような手続きが必要になるのかわからず困っています。

Q1.父の相続人になるのは、母と私と弟ですか?

遺言書がなければ、民法が定める基準(法定相続)で分けることになります。

まず、亡くなられたお父さんの配偶者であるお母さんが相続人になります。次に、子供であるA子さんとご兄弟が相続人になります。

お姉さんはお父さんより先に亡くなられているので、お姉さんが相続するはずの相続分が、そのお子さんに受け継がれます。これを代襲(だいしゅう)相続といいます。

そうすると、お父さんの相続人は、お母さんと子供であるA子さんと弟さん、そしてお姉さんの息子さんということになります。相続分はお母さんが2分の1で、他の方は6分の1ずつとなります。

Q2.相続を承認するか放棄するか選べると聞いたのですが、何か手続きが必要ですか?何もしないでおくとどうなりますか?

相続の承認も放棄も届け出をする義務はありません

ただし相続が開始したことを相続人が知った日からなにもせずに3ヶ月が過ぎると、自動的にプラスの遺産もマイナスの遺産も全部相続したことになってしまいます。これを単純承認といいます。

もし、お父さんに多額の借金があった場合は、借金(マイナスの遺産)も相続財産のうちですから、相続の放棄をしない限り、その返済債務も相続人が受け継ぐことになります。

また、お父さん自身の借金ではなく、お父さんが頼まれて他人の借金の保証人になっていた可能性はありませんか?念のため、保証契約書などがないかお探しになってみてください。

Q3.遺産分割協議とは具体的にどういうことをするのですか?

相続人が遺産をどのように相続するかについて、民法では、遺産総額の何分のいくらかという割合でしか規定がないので、実際には誰がどれだけ、どの遺産を受け取るのかについては、法律とは別に相続人どうしの話し合いによって決めることになります。

これを遺産分割協議といいます。

本ケースであれば、お父さんの遺産である自宅の土地と建物、預貯金を「誰が」、「何を」、「いくら」受け取るかということを決めることです。なお、この遺産分割協議は相続人全員の意見が一致する必要があり、多数決ではすることができません。

Q4.不動産の名義変更はいつまでにしなければいけないのですか?

何ヶ月以内にしなければいけないといった法的な決まりはありません。しかし、不動産を売却しようとする時や不動産を担保にお金を借りる時など、名義変更(相続登記)をする必要が生じた場合に慌てないためにも、遺産分割協議がまとまり次第済ませておくことをおすすめします。

何代も前から遺産分割協議及び名義変更(相続登記)をしないで放置している場合は、相続人が非常に多くなったり、相続人どうしが疎遠だったりと遺産分割協議が難航することも考えられます。

Q5.相続税を納めなくてはいけませんか?

本ケースでは、遺産の額(課税価格)が基礎控除の額を超えていないので、相続税の申告義務も納付義務もありません。

参考資料

令和元年分における被相続人数(死亡者数)は 216,094 人(前年対比 100.7%)でした。そのうち相続税の申告書の提出に係る被相続人数は 18,448 人(同 97.0%)で、その課税価格の総額は 2 兆 4,980 億円(同 92.9%)、申告税額の総額は 3,060 億円(同 87.2%)でした。(大阪国税局)

国税庁のサイト

B子さんの事例

数ヶ月前に父が亡くなりました。遺産と言えるのは自宅の土地と建物ぐらいでしょうか。遺言書はありませんでした。

家族構成は、母と子供は私1人です。父は母とは再婚だったため、父と前妻との間にCさんという息子が1人いるようですが、まったく面識がありません。

母が高齢のため今後は同居して面倒をみていくつもりなので、自宅は私名義に変更しておきたいのですが、母は認知症の傾向があり、父が亡くなってから症状が悪くなっているようです。
今後の手続きをどのように進めていいか分からず困っています。

Q1.父の相続人になるのは、母と私ですか?

まず、亡くなられたお父さんの配偶者であるお母さんが相続人になります。次に子供であるB子さんと、お父さんと前妻との間の子供であるCさんが相続人になります。

前妻は相続人にはなりませんが、前妻との間の子供であっても子供にかわりはありません。相続分はお母さんが2分の1で、B子さんとCさんは4分の1ずつになります。

Q2.認知症の母を交えて協議できるか心配です。

有効な法律行為をするための判断能力が十分ではないと判断されると、遺産分割協議はお母さんのために成年後見人の選任を申し立てて、その後見人がお母さんに代わって遺産分割協議を行う必要があります。

成年後見人には司法書士、弁護士等の第三者を選任することや、家族がなることもできますので、B子さんがお母さんの成年後見人になることもできます。費用(成年後見人の報酬)を考えれば、家族が成年後見人になる方が負担は少ないでしょう。

ただし、もしB子さんが成年後見人になった場合、B子さんも遺産分割協議の当事者ですから、いくらお母さんに不利にならない結果であっても、遺産分割協議にお母さんの成年後見人として参加することはできません。

その場合は、遺産分割協議の当事者でない第三者を後見監督人として選任するか、特別代理人の選任を申し立てる必要があります。

Q3.自宅を売るつもりがないので困っています。

Cさんから法定相続分を請求されていますが、父の主な遺産は自宅だけで、Cさんの法定相続分に見合う遺産はありません。Cさんは、自宅を売ってその代金から4分の1をもらえればいいと言っていますが、自宅を売るつもりがないので困っています。

この場合、代償(だいしょう)分割という方法があります。例えば、B子さんが自宅を受け取るかわりに、B子さんがCさんにCさんの法定相続分に見合う金銭を支払う方法です。ただし、この方法は法定相続分に相当する資金がなければ難しいかもしれません。

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