泡盛ブログ

僕にとって泡盛の最大の魅力は「失敗も楽しもう」と思わせてくれる懐の深さです

  • 沖縄出身じゃないのになんで泡盛なの?
  • 山形なら日本酒じゃないの?
  • 全然沖縄っぽくないけど泡盛好きなの?
  • 泡盛の何がいいんですか?

ことあるごとに聞かれるこういった質問。沖縄の方から聞かれるとき、それ以外のときでは同じ問いでも意味合いは大きく違ってきます。僕が泡盛にどっぷりとハマってしまった理由について一度書いてみようと思いました。

書いてみると僕自身はじめて気づかされたことがあって、いままでもやっとしていたことがクリアになりました。はっきりいって長いのですが、お暇な方はどうぞ読んでみてください(笑)

泡盛の魅力といえば沖縄料理に限らずどんな料理とも相性がいいこと。水割り、ロックはもちろんのことカクテルなど幅広い飲み方で楽しむことができること。そして、時間の経過とともに熟成して美味しくなること。

所謂、古酒のことですが、エイジングを楽しめることが僕にとって泡盛最大の魅力です。エイジングは何も泡盛メーカーだけの専売特許ではなく、瓶熟成なら家庭でも手軽に楽しむことができます。少し手間はかかるけど、甕を用意すれば伝統的な熟成方法である「仕次ぎ」で自分の手で古酒を育てることができます。

振り返ってみると、僕が泡盛のエイジングに人一倍惹かれる理由がありました。

泡盛のエイジングに惹かれる理由

僕は昔からジーンズやブーツが好きで学生の頃は古着屋や靴屋でバイトをしていました。ジーンズにしてもブーツにしても履けば履くほど色落ちしたり皺がついたりして味が出るし、身体に馴染んでくる。新品でいかにもとっつきにくかったものが時間をかけて付き合っていくうちに馴染んできて自分だけのモノになる感じがたまらなく好きでした。

味がでてきたエヴィスのデニムとA-10グローブ

じじいになっても愛用のジーンズやブーツを履き続けたいし、そういう人生の相棒みたいなものを持ちたい。言い方を変えるとエイジング=劣化ではなくて時間とともに起こる変化を楽しんでいく、そういった感覚というかライフスタイルを大事にしたいと思って生きてきました。

とはいえ、ジーンズやブーツのエイジングを楽しんでいたのに、ある日突然、泡盛のエイジングに目覚めたというわけではありません。

大きな敗北感を味わう

ジーンズやブーツを中心にエイジングを楽しんでいましたが、20代後半になると気持ちの変化を感じるようになりました。

じじいになるまで履き続けたいと思ったところで、修理をしてもどうしても直せないダメージが出てくるといった物理的な問題もあります。それに学生の頃は人生がいつまでも今のまま続くような錯覚をしていましたが、20代後半には祖父母の死を目の当たりにして、いつまでも同じままというわけにはいかないことを痛感することになりました。

これって当然のことなんですけどね。

老いへの不安というと違和感はありますが、20代とはいえ歳を重ねるごとに、じじいになっても履き続けるということが少しずつリアルに感じられてきて歳を取ることへの拒否に近い感情もあったと思います。

同じ物を履き続けることは、見方を変えれば大きな変化を避けているともいえます。1つの価値観を大切にすることは安定しているようで、実のところは進化していないともいえますよね。

実生活では就職とともにスーツを着て働くようになり、ジーンズやブーツが日常から遠ざかったことでエイジングから気持ちが離れてしまったことも大きかったと思います。

そして、エイジングから気持ちが離れてしまう最大の理由は会社を辞めたことでした。 

  • 会社を辞めること
  • エイジングから気持ちが離れること

この2つにどんな関係があるの?と思われるかもしれません。会社を辞めることは、「同じ物を大切に使い続ける」こと、広い意味ではエイジングを大切にするこれまでのライフスタイルを手放すことと同じでした。

僕は大学で土木を専攻していました。

今考えると本当にもったいないと思いますが、大学院に進んで計6年間土木を学びました。当時はかなりの就職氷河期でしたが、大学で学んだ専門分野が活かせる建設コンサルタントという業界で第一志望の会社に入社することができました。

希望する仕事、さらには第一志望の会社に入社できたことでやる気いっぱいで大阪での社会人生活を始めたわけですが・・・理由は長くなるので割愛しますが、数年でこの会社を辞めることにしました。

同じ物を大切に使い続けること、もっと広い視点で考えると夢中になって1つのことを続けること、そんなライフスタイルがかっこいいと思ってずっと生きてきました。物だけではなく広くエイジングを大切にしてきた僕にとって、大学から数えて12年間過ごしてきた土木の業界で働くことがどうしても嫌になって、フェードアウトしまったことは敗北感でいっぱいでした。

会社を辞めてしまったので、敗北感に浸っている余裕はなく色々考えて司法書士を目指すことにしました。

人生をゼロにリセットする

これまでとはまったく畑違いの業界です。会社を辞めても同じ業界に身を置くなら「続けている」と思うこともできたかもしれませんが、一度全てをリセットするそんな強い思いで会社を辞めました。

司法書士試験の勉強どころか、まったく法律の勉強をしたことがなかったので来る日も来る日も慣れない勉強に打ち込みました。仕事をしていないので朝から晩まで勉強です。当時のことはこちらにまとめています。

関連|知識0から2年半で1万時間勉強して司法書士試験に合格した僕の勉強法

これまでの知識、経験がまったく役に立たない試験に挑戦するので、生まれ変わろうというような意気込みでした。そのくらいの覚悟がないと試験に受からないと思っていたし、実際に合格率は3%もない狭き門です。会社を辞めて勉強を始めた頃は自分がゼロにリセットされたように感じました。

いま冷静になってみれば、人生をリセットするような思いで司法書士試験に挑戦しようというのは「本当にどうかしてるぜ?」って思います(笑)。でもその時はそれしか生きる道はないくらいに思い詰めていました。可笑しな話ですが。

仕事もせずに毎日勉強だけをしていたので受験生時代はジーンズ、ブーツをよく履いていましたが、1年に1回のチャンス(試験)に365日を掛けるような生活だったので、はっきりいって格好なんてどうでもよかったのです(苦笑)

2年半勉強だけを続けて、なんとか司法書士試験に合格できた後も実務経験がそれこそゼロだったので、実務を覚えるのに必死でこれまたエイジングどころじゃありませんでした。

そして気がつけば独立へ。それこそエイジングなんて知るか!笑ってぐらい目まぐるしい毎日でした。

ある泡盛との衝撃的な出会い

いまでこそ毎日のように泡盛を楽しんでいますが(楽しみ方は飲むだけじゃないですよ!)、受験生時代は勉強漬けの毎日でアルコールを口にする日はほとんどありませんでした。

今じゃ考えられませんね(汗)

サラリーマン時代もお酒は好きでしたが泡盛を好んで飲むということはなかったです。当時良く飲んでいたのは芋焼酎でした。まだ泡盛と出逢っていなかったのかといえばそんなことはなく、初めて訪れた沖縄、石垣島で泡盛と初対面を果たしていました。記憶があいまいですが2000年頃のことです。

それ以来、司法書士の受験生時代も毎年欠かさず沖縄に行っていました。試験に落ちた年でも行きました。この勉強漬けの生活が(最低でも)もう一年あるのかと思うと、正直沖縄を楽しめるような心境じゃなかったけど、相方に誘われるままについて行きました。束の間の気分転換でしたね。

司法書士試験の二次試験の合格発表の時も沖縄にいました。二次で落ちる人はいないと聞いていたので、この時は安心しきって遊びました。阿嘉島のビーチから携帯で受験番号を確認したことを覚えています。 

事務所を開業した年も含めて毎年沖縄に行っていましたが、本格的に泡盛に興味を持つようになったのは沖縄ではなく、大阪の沖縄料理店でした。そこで石垣島の泡盛「白百合」と運命的な出会いがありました。白百合の魅力はここで改めて語るまでもないのでこちらで。

関連|土の匂いがすると噂の泡盛。白百合の噂は本当なのか??

白百合をきっかけに泡盛に興味を持つようになって泡盛マイスターの存在を知り、泡盛マイスター試験の勉強を通して古酒について深く知ることになりました。そして時間の経過とともに美味しくなるといわれる古酒の面白さを知った時に、ようやくエイジングを大事にしていた頃を思い出しました。

エイジングの魅力・面白さを久しぶりに泡盛の古酒に感じることができました。 

泡盛独特のエイジングの奥深さ

泡盛の古酒にはジーンズやブーツにはない独特の魅力がありました。ジーンズやブーツは履けば履くほどに味が出ますが、修理をしても買い換えない限り新しくなりません。

でも泡盛は違います。

仕次ぎといって熟成させている泡盛に時々、少しだけ新しい泡盛を継ぎ足すことで泡盛が活性化して美味しさが増すと言われています。

古酒を育てている五升甕

そう考えるとジーンズやブーツのエイジングは味わい深くなっていく一方で、いずれ終わりが来ますが、泡盛の古酒には限界はないように思いました。少なくとも100年物、200年物の古酒に育てることは不可能ではないようです。自分が生きている間は間違いなくずっとエイジングを楽しむことができます。

泡盛のエイジングはジーンズやブーツの宿命である「いつかはダメになる」というデメリットをカバーしていました。 

またジーンズやブーツにはサイズがあるので、いつか子や孫に引き継ぎたいと思ったところで限界がありますが泡盛にサイズはありません。甕をいくつも所有すると置き場所に困りますが(苦笑)

サイズ云々というよりも当時は子供がいなかったので、いくら大切にしたところで自分が死んだら誰も引き継いでくれないということへの寂しさもありました。だから身につけるものではない泡盛なら好きな人が引き取ってくれるだろうということも大きかったです。

古酒造りから芽生えた気持ちの変化

ジーンズやブーツのエイジングを楽しんでいた頃は「うまく育たなかったら嫌だなぁ」という思いが本当に強かったです。

うまく育つというニュアンスは伝わりにくいかもしれませんが、ジーンズであればイメージする色落ちにならなかった場合です。思い通りの結果が得られなかった場合と言う方がわかりやすいかもしれません。

泡盛も甕の蓋にカビが生えてしまって嫌な臭いがついたり、甕に問題があれば泡盛が漏れたり、甕臭といわれる臭いが泡盛についたりと上手く育たないこともあります。でも育てている泡盛がうまく育たなくても「それならそれで仕方がない、またそこから新しく育てればいい」という思いで今は泡盛に接しています。

泡盛だからというわけではなく、今ではジーンズやブーツに対してもそうだし、すべてのできごとに対して思いは同じです。以前はそう思うことができませんでした。

(使い)続けるということを強く意識しすぎてしまって、いま思えば遊びがないガチガチの状態でした(苦笑)。泡盛を甕で育てているときに蒸散で泡盛が減ってしまえばその分を足せばいいし、飲みすぎて減ってしまってもまたその分足せばいい(笑)

ゆるさというか、失敗を許してくれる大らかさというのか、泡盛が持つこの雰囲気が実にいいんですよね。

僕が考える泡盛の最大の魅力とは

会社を辞めて全くの畑違いの司法書士を目指したことで、それまでの人生をリセットする心境になりました。でもゼロからスタートすると思うと、本当にもったいないんですよね・・・。

だから、いいことも悪いことも楽しもう、そうじゃないともったいないと思うことにしました。

僕にとって泡盛の最大の魅力は、失敗も楽しもう!と思わせてくれる泡盛の懐の深さです。

あのまま会社を辞めずに働いていたら、今のように泡盛にハマることはなかったはずです。泡盛は僕に生き方を大きく変えるきっかけをくれました。

人生と泡盛は似ている

ただ寝かせておくだけでは泡盛は美味しくなりません。時々味見をして、そのときに少しだけ新しい泡盛を継ぎ足すことで泡盛が活性化して美味しくなります。

これって人生も同じじゃないでしょうか?

毎日を漫然と過ごすのではなく、時々新しいことに挑戦する。ときには失敗するかもしれないけれど、そうすることで味わい深い人生にすることができる。

司法書士試験に合格した後も何度も失敗をしていた僕は、こう思えるようになって救われました。僕は泡盛から本当に大切なことを教わりました。誰に頼まれたわけでもないのに泡盛マイスターとしていろんな活動している原点はこういうことなんです。 

最後まで読んでいただきありがとうございました<(_ _)>