泡盛ブログ

オトーリという恐ろしい泡盛の飲み方がある!?

泡盛好き・沖縄好き、中でも宮古島好きなら一度は耳にするであろうオトーリ(おとーり)という泡盛の飲み方があります。

僕自身はまだその洗礼を受けていませんが、宮古島へ旅行したときに体験された方も多いのではないでしょうか?夜のトライアスロンと恐れられたり、オトーリがきっかけで泡盛が苦手になったという話も聞くので、今日までオトーリを避けて生きてきました(笑)。

体験したことがないので本から得た情報が中心になりますが、宮古島名物オトーリについてまとめました。

オトーリとは?

オトーリとは宮古島独特の泡盛の飲み方です。飲み方は書籍によって内容がまちまちなので、もっとも信頼できそうな「おとーり 宮古の飲酒法」に紹介されている【おとーりの標準タイプ】というものを記載しておきます。

【オトーリの標準タイプ】 
親がグラスに酒を注ぎ、口上を述べた後、グラスの酒を飲み干す。この後、親はグラスに酒を注いで、そのグラスを一人一人に順序よく差し上げる。会場(車座)にいる全員が一通り終わったら、親は最後に終わった方から酒を注いで貰う。親はそのグラスを持って、協力に感謝を申し上げるとともに、「〇〇さんにつなぎます」と言ってグラスの酒を飲み干す。以下、宴会が続く限り親を変えて延々と続ける。 

おとーり 宮古の飲酒法

飲み干すときは一気に飲み干すようです。僕らの学生時代なら一気飲みはまだ馴染みがありましたが(肯定しているわけではありません)、今はパワハラ、アルハラと言われたら即アウトでしょう。時代の流れにそぐわない飲み方なのかもしれませんね。

ちなみにオトーリは神様にささげたお酒(泡盛)を少しでも多くの人で分かち合うために回し飲みにしたことが、その起源といわれています。自立しないおちょこや、底に穴が開いていて手で塞いでおかないとお酒が漏れてしまうおちょこ。こういったおちょこでもこの手の話は聞いたことがあるので、宮古島以外にも似て非なる飲み方はあるのだろうと思います。

余談ですが、「沖縄の歴史と旅」という本に「同じ沖縄でもハブのいる隣の石垣島にはオトーリの習慣はない。」と書かれていました。オトーリは、飲みすぎて酔いつぶれてしまってもハブを気にしないで済む宮古島ならではの泡盛の飲み方なのかもしれないなと思いました。

オトーリにまつわる都市伝説

  • 宮古島には「中学生のオトーリは止めましょう」という立て看板がある
  • 宮古の人は2人集まるとオトーリを回す

島なので都市伝説というよりは逸話という表現の方が適切かもしれません。そして、オトーリにまつわる有名な逸話といえばこれ。   

オトーリがきっかけになった過剰飲酒によるトラブルや未成年の飲酒による交通事故に端を発して、上野村議会でオトーリの廃止決議をしました。そして、その夜に良かった良かったと決議を祝って・・・オトーリを回したという話。 

かなりありえそうだけど(苦笑)。

本当のところはどうなんだろうと前から気になっていましたが、「沖縄島々旅日和 宮古・八重山編」に真実が書かれていました。

「その日にオトーリ回したなんて、言語道断、そんなことあるわけないだろ!」 
by当時の上野村村長・芳山弘志氏

沖縄島々旅日和 宮古・八重山編

やっぱり話が盛られていました(笑)。これが事実なら沖縄のおおらかさを表現するには、これ以上ないエピソードだったんですけどね。

「他村の人たちが面白おかしくひやかして、そういう噂が広がったんだよ」ということらしく、少し残念ですが事実とは違ったみたい。

昔は1回まわすスタイルだったものが、どんどん回数が増えてしまって夜のトライアスロンといわれるような現在のスタイルになったみたいですね。ちなみに中学生のオトーリは止めましょうという看板と、2人でもオトーリを回すという話、こちらはどうやら本当みたいです。

オトーリの専門家|オトーリ回士とは?

平成12年から宮古島安全飲酒推進協議会(任意団体)が宮古島オトーリ回士認定証を発行しています。これまでに認定された方は国県市町村の職員、宮古島トライアスロンの関係者、宮古島出身の著名人の方など。宮古島にはオトーリ憲法やオトーリ前口上大会もあるようです。

オトーリ用の泡盛とオトーリグラス

オトーリで飲む泡盛のアルコール度数は一般的に8~10度で市販されている泡盛を水で割って作ります。

こちらはオトーリに適した10度の多良川さんの「のみごろひやさっさ」。メーカーさんによるとオトーリ専用というわけではないようですがエニタイムオトーリっていう感じ。宮古島のメーカーじゃなければ何も思わないんですが、たぶんオトーリ用ですよね(笑)。

のみごろひやさっさ 10度@多良川

こちらはオトーリ用のグラスです。

  • 左|パーントゥのオトーリグラス
  • 右|菊之露の80th記念のオトーリグラス
オトーリ用のグラス

このパーントゥのオトーリグラスは相方が自分用のお土産に宮古島で買ったものです。家で使っているのを横目に何食わぬ顔をしてましたが、実はかなり羨ましいんですよね(笑)。ちなみにパーントゥというのは宮古島の泥の神様です。2018年に秋田県の男鹿(おが)のナマハゲとともにユネスコ(国連教育科学文化機関)の無形文化遺産登録が決定されて話題になりました。

オトーリではグラスに注ぐ泡盛の量は飲む人の意向を確認してから注ぎます。ここまで!と申告しやすいようにグラスには4本のラインが引かれています。

オトーリグラスの4つの目盛り

パーントゥのグラス(左)には 

  • やまかさ
  • ずみ
  • なから
  • いぴっちゃ

菊之露のグラス(右)には

  • ぷーきて
  • からっと
  • らっきー
  • すっきり

の4本の線があります。

沢山飲みたい人はやまかさ、少なめにして欲しい人はいぴっちゃと申告するための線です。菊之露のオトーリグラスは一般的な泡盛のグラスよりもひとまわり小さく、すっぽりと中に入るのでオトーリをするなら菊之露のグラスが安心です。

ひと回り小さな菊之露のオトーリグラス

いつかは体験しなければと思いながらオトーリを体験しないままに今日まで来ました。それなのになぜか菊之露のオトーリグラスは7つ持っています。

菊之露80th記念オトーリグラス

知れば知るほどに恐くなるオトーリ。だから恐いもの見たさよりも恐いが勝っていますが、そろそろオトーリの洗礼を受けることになりそうな予感が・・・。

参考文献

  • おとーり 宮古島の飲酒法 ぷからすゆうの会 2005年3月
  • 沖縄の歴史と旅 陳 舜臣 PHP研究所 2002年4月
  • 沖縄島々旅日和 宮古・八重山編 コーラルウェイ編集部 新潮社 2003年4月