公正証書遺言をおすすめする3つの理由
相続時のトラブルを防止し、確実に遺言の内容を実現するために3つの理由から公正証書遺言を作成することをおすすめしています。
- ①相続手続きがスムーズにできる
- ②未曽有の震災を乗り越えた安心感
- ③遺言の有無や作成日が検索できる
①相続手続きがスムーズにできる
遺言があると遺産分け手続きはとてもスムーズです。当然ですが、きっちりと有効な遺言が前提の話になります。
自筆証書遺言は手軽に作ることができますが、実際に有効なものは2割程度とも言われているので8割は何らかの失敗をしているのかもしれません。
金融機関によって対応は様々
イスがあるカウンターもあれば、イスがなくカウンターで立ったままのところも。
別室でお茶が出てくるところがあれば、カウンターと後ろのソファ間を行ったり来たりしないといけなかったり。
窓口での確認に時間がかかるところがあれば、窓口のやり取りはさっと済むけど、その後の手続きに時間がかかるところ。
その後の手続きが1週間くらいでサクっと終わるところや3週間以上かかるところも。
何の話かというと、相続で預金口座の解約をした時の金融機関の対応の違いです。
- ①遺言で定められた遺言執行者として
- ②相続人から委任を受けた遺産整理業務受任者として
同時期に2つの立場で預金口座の解約手続きをしていてその違いを感じました。また同じ口座の解約なのに金融機関によって対応は実に様々でした。
- 支店で何を聞いても「本部が」「本部が」って内向きなところ
- いったい何回行かないといけないの?って思うようなところ
中には自分達の確認ミスなのに、こちらに再来店を求めるところまで。こういうところの書類に手続きでお困りの方は提携している代行会社を紹介します!とか書いてあると、誰のせいで困っているの?って感じなんですけど(汗)
金融機関の対応に違いがあるのはしょうがないとして、これだけは自信をもって言えます。
有効な遺言があると手続きが早い!
補足します。
遺言執行者として預金の解約をする場合、預金を誰が引き継ぐのかは遺言の中で決められています。一方で②の相続人から委任を受けた遺産整理業務受任者というのは、亡くなった方が遺言を作っていない場合です。
遺言のある・なしで手続きの何が大きく違うかというと、遺言があれば亡くなった方の相続人が誰なのかを戸籍を辿って確認する必要がありません。
だから、遺言があったケースでは窓口の手続き(約1時間半)だけで全ての手続きが完了したところもありました(これは口座のある支店に行って手続きをしたという事情もあります)
金融機関によっては専門のセンターで対応するので、口座のある支店に行ったとしても1回ですべてが終わらないこともあります。
一方で遺言がないと、亡くなった方の生まれてから亡くなるまでの戸籍を確認して相続人が誰なのかを確認しないといけないので、確実に時間がかかってしまうわけです。
中には必要な戸籍の数が少ないケースもあると思いますが、相続人の見落としは大きなトラブルにつながるので、そうならないように丁寧に確認すれば手続きに時間がかかります。
ちなみに極端に手間のかかる金融機関はやっぱりあります。普段から何かと手間のかかるところは要注意かもしれません。特に必要がなければ、あまり使わない口座は少しずつ解約しておくのが有効です。
②未曽有の震災を乗り越えた安心感
未曾有の震災の東日本大震災でしたが公証役場で保管されていた公正証書遺言の原本は破損・紛失が1つもなかったようです。参考「東洋経済 8/6号」
よほど厳重に保管されていたんでしょうか。この事実を知って驚くとともに、公正証書遺言をおすすめしようと思う理由がまた1つ増えました。
③遺言の有無や作成日が検索できる
自筆証書遺言は様々な場所で保管されているので紛失や隠匿が多いことが課題になっています。
- 自宅等で保管
- 貸し金庫に預けている
- ご家族以外の親しい知人に預けている
- 司法書士・弁護士などに預けている etc
平成元年以降に作成された公正証書遺言はコンピューターに登録されており「遺言検索システム」で検索することができます。注)公証役場によっては、それ以前に作成されたものも登録されています。
- 作成した公証役場名
- 公証人名
- 作成年月日 etc
もし遺言者が亡くなっている場合は、相続人・受遺者は公証役場で調査を依頼することができます。相続人が請求する場合は以下のものが必要になります。
- 被相続人の死亡を確認できる戸籍謄本等
- 自分が相続人であることを証明する戸籍謄本等
- 運転免許証等の相続人の本人確認資料
コラム|Aさんの不安は解消できる?
同居しているお父さんから「自宅はAに相続させる」という内容の公正証書遺言を1年前に渡されたAさん。自宅はいずれ自分の物になるとすっかり安心していました。
ところが、正月に2つ下の弟が「この前、親父に遺言書を書いてもらった」と酔った勢いで洩らしたことで、自宅は自分が本当にもらえるのかどうか不安になってしまいました。。
内容が矛盾する2つの遺言書がある場合は、作成した日付が新しいものが有効です。
Aさんが気になっているのは、お父さんが書いた遺言書は自宅は自分がもらえるという内容のものだけなのか?他にも遺言書を書いているならどんな内容なのか?ということです。
自筆証書遺言の場合は公正証書遺言のように検索することは出来ません。公正証書遺言の「遺言検索システム」は遺言者の存命中は、遺言者本人のみが検索できます。
- 遺言書が他にあるのか?ないのか?
- 他にあれば、どんな内容なのか?
Aさんは弟さんを追及することも、お父さんに確認することも出来れば避けたいようです。当然かもしれませんが。これはお父さんが元気なうちに直接聞くのが一番かもしれませんね。