夫婦で遺言を書いて法務局に預けてみた|自筆証書遺言書保管制度
今回の改正の柱となるのが遺言書の作成促進でポイントはこの2つです。
- 自筆証書遺言の書き方のルールが緩和
- 法務局で自筆証書遺言を保管する制度がスタート
目次【本記事の内容】
- 自筆証書遺言が作りやすくなりました。
- 自筆証書遺言書保管制度とは?
- 夫婦で遺言を書いて法務局に預けてみた
- ┗ まずは法務局に予約を入れました。
- ┗ 申請書と遺言書を書き終えました
- ┗ 申請日にやったこと・掛かった時間
- 保管制度を利用してみての感想
- 人生にも余白が必要だ。
自筆証書遺言が作りやすくなりました。
自筆証書遺言は、全文を自分で手書きしなければいけませんでしたが、改正により財産目録についてはパソコンで作ったり登記事項証明書や通帳のコピーを添付する方法も認められることになりました(2019年1月13日から)。
- 財産の目録をパソコンで作成→OK
- 登記事項証明書・通帳のコピーをつける→OK
ご注意ください!
遺言書の全文をパソコンで作成することはできません。あくまでも財産目録だけです。また財産の目録にも署名・押印をする必要があります。
自筆証書遺言書保管制度とは?
改正の背景と保管制度の概要をご紹介します。※わかりやすさを優先して、できるだけ専門用語を使わずに書いています。
改正の背景
自筆証書遺言は仏壇や金庫で保管されることが多く、なくしたり書いたことを忘れてしまったり、また相続人によって隠されたり改ざんされたりと、自筆証書遺言が適切に保管されていなかったことで相続トラブルが起きることが多かった。
保管制度の概要
自筆証書遺言を法務局で保管するサービスがスタートしました。遺言書原本だけでなく画像情報としても保管されます。
自筆証書遺言の場合、家庭裁判所で検認という手続きが必要で公正証書遺言に比べて手間と時間がかかりましたが、法務局で保管された自筆証書遺言は検認が不要になります。
日付の記載や押印の漏れなど形式に不備がないかどうかの確認をした上で、問題がない遺言書のみ保管してもらえます。
ただし、遺言の内容については確認されないので、実現したい内容がきちんと書かれているのかは法務局任せではなく十分に注意をする必要があります。
参考「法務局における自筆証書遺言書保管制度について」法務省のサイト
夫婦で遺言を書いて法務局に預けてみた
自筆証書遺言書保管制度を利用して夫婦揃って法務局に遺言書を預けました。
自筆証書遺言書保管制度を利用した理由
- 検認の必要がなく使い勝手が良さそうだったから
- 自分で使ってみると制度の善し悪しがよくわかるから
- ライブ配信のネタになるから(笑)
この保管制度を利用すると自筆証書遺言であっても検認をする必要がなくなるのが大きなメリットだと感じていました。

公正証書遺言と自筆証書遺言の違い
「公正証書遺言」と「自筆証書遺言」の違いを①作成方法・特徴、②長所・短所の項目に分けて説明します。自筆証書遺言の作成方法及び法務局での保管制度に関する改正点も踏まえてお伝えします。
僕は年齢の割には子供が小さいことや、年々本人確認が厳しくなるので、遺言書を書いて相方を遺言執行者に指定しておいた方が、もしものときに安心だなと考えていました。
コロナ禍をきっかけに家族全員でマイナンバーカードを作りましたが、親権者であっても子供のカードは受け取れないらしく、お子さんを連れて来てくださいと言われたことも影響しています。
相続の手続きに相続人全員の同意が求められた場合、個人事業主の僕は個人で契約しているものが多いので未成年の子供の分まで求められると手間が掛かると考えてのことです。
遺産相続以外で実際にどこまで求められるのか?は、わかりませんけど。
またコロナ禍の2020年5月半ばからfacebookでライブ配信を始めました。勢いで始めたため日々配信のネタを探しているので、遺言を書くこともそのネタにしようと思いました。さらにライブ配信の中で法務局に遺言書を預けると宣言すると、強制力になるのでやるやる詐欺にならずに済むという効果を期待しました。
まずは法務局に予約を入れました。
仕事なら前倒しで動けるのですが(自分なりの評価です)、自分のことになると全然進みません。とりあえず着手しようと申請に必要な住民票を取得しただけで、そこで止まってしまいました。。
保管制度を利用する際の必要書類など
- 自筆証書遺言書
- 申請書
- 本籍地の記載のある住民票
- 本人確認書類(運転免許証など)
- 手数料 3,900円(収入印紙)
ケツを決めないといつまで経ってもできないと思ったので、申請日を先に予約することにしました。
この保管制度を利用する場合、遺言者本人が法務局に行く必要があります。預けるのが僕一人だけ、もしくは相方の代理人として僕が申請できるなら簡単だったのですが、相方と一緒に法務局に行ける日を考えていたらずるずると延びてしまいました。
例年お盆は山形の実家に帰省しているのですが、コロナ禍で帰省を諦めたので8月13日の朝一に法務局を予約しました。
保管制度を利用することができる法務局はどこでも良いわけではなく、管轄が決まっています。
保管制度を利用できる法務局
- 遺言者の住所地、本籍地
- 遺言者が所有する不動産の所在地
申請書と遺言書を書き終えました
申請日を決めてからは早かったです。期限が決まるとそこに向けて準備をするだけなので迷いもないし言い訳もできません。
申請書は法務局のサイトからPDFデータをダウンロードして作成しました。PDFデータ上で入力できるように作られているので、はじめはとっつきにくかったのですがすぐに慣れました。
預けるのは自筆証書遺言なので手書きをする必要がありますが、前述のように財産目録をパソコンで作成することや不動産の登記事項証明書などを活用できるように変わっています。
今回は預金口座など財産を具体的に記載しないシンプルな内容で作成したので、1枚の用紙に収まりました。とはいえ手で文章を書く機会が減っているので、書き終えたときはなんともいえない達成感を味わうことができました(^^)
ちなみに子供の遺留分は無視した内容です。子供達が遺留分を気にする頃までには書き直す前提で書きました。

遺留分を無視して書いた遺言書の怖さ。
遺言書のせいで他の兄弟から自宅を差し押さえられてしまったXさん。悲惨すぎる相続が起きた背景には2つの大きな事情がありましたが、遺留分を無視して書かれた遺言書の怖さを目の当りにすることになりました。遺言書が火種にならないように遺言書を書く上で最低限押さえておきたい遺留分の基本的な内容をお伝えします。
申請日にやったこと・掛かった時間
おひとり1時間を見ておいてください
予約の電話のときにこう言われたので、トータルで2時間位はかかると覚悟していました。
そうは言っても早めに終わるだろうと思いたかったのですが、法務局もまだ慣れていないのでしょうね、予約の電話だけで約20分かかったので腹を括りました(笑)

予約していた9時からまずは必要書類のチェックです。
二人別々でしたがチェックは二人合わせて20分くらいで済みました。ここで収入印紙を貼って申請するのですが、ここからはひたすら待ち時間です。
遺言は余白が大切です。
自分のことだとダメですね。失敗をしてもネタにしてしまおうという前提があるので(笑)、詰めが甘い。
遺言書の余白部分をあんなにきっちり確認されるとは思いませんでした。点と括弧が余白の部分に掛かっていたので、書き直しを覚悟して申請しました(汗)
個人的な備忘録です
- 遺言書|余白をしっかり確認する!
- 遺言書|1/1のようにページ数を入れる!
- 申請書|受遺者にチェックを入れるのは相続人以外の場合のみ
余白問題はギリギリOKでした!

10時50分にはこの画像を投稿できたので、10時40分頃には保管証を貰えたと思います。9時からなので2人で約1時間40分で終わりました。
手続きが完了するまで法務局で待つ必要はありませんが、その日のうちに保管証を受け取る必要があります。申請時に引き換え用の番号札が貰えます。
手続きが完了したときに法務局から貰えるのは、この保管証のみです。これはカラーコピーなので原本はもう少し濃いです。

遺言書の写しはもらえないので、事前にコピーを取ってから法務局に預けることをおすすめします!
保管制度を利用してみての感想
僕は普段、公正証書遺言作成のサポートをさせていただいているので公正証書遺言と比較してしまいますが、使い勝手は悪くないんじゃないかなと思いました。
全体を通しての感想です。
- 公正証書遺言と比べるとコストが安い
- 遺言書の内容については確認してもらえないので要注意!
- 住所等が変わったら法務局に連絡する必要があるのは手間
公正証書遺言の場合は遺産の価格や財産をあげたい人の数などで公証人の手数料が変わりますが、保管制度を利用する場合は一律、収入印紙代3,900円のみです。
例えば、総額3,000万円の財産を妻に2,000万円、子1人に1,000万円のように相続させる場合の公証人手数料は53,000円です。
※ 財産の額と相続人(受遺者)の数によって異なります。
※公正証書4枚の場合、正・謄本代2,000円を含みます。
申請時に自筆証書遺言として有効かどうか形式的なチェックは法務局がしてくれますが、遺言の内容については確認の対象外です。
この点をきちんと理解した上で保管制度を利用するようにしてくださいね。
引っ越しで住所が変わった場合など、変更届出が必要になる点は手間だと感じました。これは申請書の中で「死亡時の通知を希望する」を選んだからかもしれません。
なお遺言者だけではなく遺言執行者や受遺者についても同じように変更の届出が必要になるようです。
変更届出が必要な事項
- 遺言者の氏名、住所・本籍、電話番号
- 遺言者の戸籍の筆頭者の氏名 etc
人生にも余白が必要だ。
この日は法務局に遺言書を預けたら市役所に家族全員分のマイナンバーカードを受け取りに行く予定でした。
予定よりも早く終わったのに、子供の身分証明書を忘れてしまって一回家に戻ったら市役所の予約時間がギリギリになってしまいました。法務局にも子供達を連れて行ったので、子供達が完全に飽きてしまわないうちに午前中で用事を終えることができたのは良かったです。
とはいっても猛暑の中、法務局に行って約1時間半法務局で過ごすのはまあまあの負担でした。
いまのところ大きな病気をしているわけでもなく、差し迫った状況で遺言書を書いたわけではないのでこの程度の肉体的な負担で済みました。
でも、いまのうちに書いておかないと間に合わないといった状況で遺言書を書くのは心身ともに相当な負担になるのは想像に難くありません。コロナ禍で先が見えないと感じたことも夫婦揃って遺言書を書くきっかけになりました。
予約時間に遅れる程度なら大事には至らないと思いますが、今回の経験は余白や余裕をもって行動することの大切さが身に沁みました。