【相続クイズ】遺言書を書いておいた方がよい人は?

遺言を作ろう

遺言書を書いておかなくても特に問題が起きないご家庭が大部分だろうと認識していますが、遺言書を書いておかないと危険だなと思うケースもあります。具体的な事例を取り上げて、遺言を書いておいた方が良いと思う理由を解説します。

目次【本記事の内容】

突然ですが相続クイズです。

この中で遺言書を書いておかないと危険(問題が起こりそう)だと思うケースはどれでしょう?

  • 【ケース①】愛人との間に子供がいる
  • 【ケース②】再婚しているが前妻・前夫との間に子供がいる
  • 【ケース③】内縁の妻・夫がいる
  • 【ケース④】亡くなった子供の妻・夫が親の面倒を見てくれている
  • 【ケース⑤】兄弟の仲が悪い・疎遠
  • 【ケース⑥】子供がいない etc

正解は①から⑥の全部です。

①から③は迷うことなく遺言書を書いておいた方がいいと思う人が多いかもしれませんね。

④は養子縁組をしておかなければ子供の妻・夫は相続人にはならないので、財産をあげたければ遺言書を書いておく必要があります。

⑤は親の相続の場合、相続人である子供達の仲が悪いということだと揉める可能性は高いでしょう。遺言書があっても揉めるような気もしますが。

⑥は一見すると、相続人は配偶者だけで問題は起こらないように思うかもしれませんが、子供がいない場合の相続人はこうなります。

  • ①配偶者と亡くなった方の両親もしくは祖父母
  • ②配偶者と亡くなった方の兄弟姉妹

両親もしくは祖父母(尊属といいます)が亡くなっていれば、兄弟姉妹が相続人になります。

どうでしょう?問題は起こらなそうですか?

配偶者の両親や兄弟姉妹とも仲良くやっているので私は大丈夫と考える人も多いかもしれませんが、配偶者あってこその関係でしょうし、相続はお金の話という一面もあります。

そもそも揉めるかどうか以前に、家族の相続の話に他人が入ってくるような感じがしませんか?

お子さんがいない方は絶対に遺言書を書いておくべきだと思います。特に財産はありませんでしたが(苦笑)、僕も子供が生まれる前から遺言書を書いていました。

取り上げた①から⑥のケースは一般的に問題が起こる可能性が高いというだけで、遺言書を書いておかなくても特に問題なく手続きができる場合がほとんどかもしれません。

思い込みで判断しない、考えることを諦めない。大事なことは正しい知識をもとに遺言書を書くかどうかを決めることです。

突然異母兄弟が現れた【ケース②】

父が亡くなって数カ月したころ、突然父の子供と名乗る男性から連絡がありました。その男性は、父と前妻との間の子供だそうで、私とは異母兄弟の間柄ということになります。
私には、父と母が再婚だったことも初耳でしたが、男性は「自分にも父の遺産を受け継ぐ権利はある」と主張しているため、話し合いは簡単にはまとまりそうにはありません。

父の死後異母兄弟が現れた

別れた夫・妻との間の子供に限らず、遺言で非嫡出子を認知することもできます。

突然の告白で家族を困惑させてしまうことは仕方がないと思いますが、少なくとも残された家族にわだかまりを残さないように、各相続人に配慮しつつ、それぞれの遺留分を確保できるような内容の遺言を準備しておくことが良いでしょう。

終活は平凡過ぎるくらいでいい【ケース③】

ある雑誌の「らしさのある葬儀」という記事で、俳優の故宇津井 健さんのドラマチックなエピソードが紹介されていました。

亡くなったその日に婚姻届を提出。

こんな劇的な終活が明らかになった。・・・中略・・・病床で相手の女性に「僕の妻として、お葬式の喪主をしてほしい」と言い残したという。

お相手の女性とは事実婚状態だったそうです。事実婚では相続人にならないので、婚姻届には自分の妻として財産を受け取って欲しいというメッセージが込められていたのでしょうか?

間に合わないことを想定して、相手の女性に財産を遺贈する内容の遺言を事前に準備されていたのかもしれません。

いずれにせよ、なかなか真似のできないドラマチックなエンディングだなと感心してしまいました。最期までスターですよね。

比較するのは適切ではないかもしれませんが、もし婚姻ではなく養子縁組だった場合。

相続税の計算にあたって、相続人の数に応じた基礎控除があるので、相続人が増えれば課税遺産総額が少なくなり相続税額が減少します。ただし、国税庁のホームページを見ると次のような記載があります。

法定相続人の数に含める被相続人の養子の数は、一定数に制限されています。
(1)被相続人に実の子供がいる場合 一人までです。
(2)被相続人に実の子供がいない場合 二人までです。 
ただし、養子の数を法定相続人の数に含めることで相続税の負担を不当に減少させる結果となると認められる場合、その原因となる養子の数は、上記(1)又は(2)の養子の数に含めることはできません。 

参考:No.4170 相続人の中に養子がいるとき

なんだか気になることが書いてありますよね。

例えば、被相続人が亡くなる直前に養子縁組をしたことが「相続税の負担を不当に減少させる結果となる」と認められる場合には、相続人の数に応じた基礎控除の計算にその養子を含めることができないということです。

あくまでも相続税の計算に関してだけで、養子縁組自体が否定されるという意味ではありませんが、宇津井式のドラマチックなやり方だと養子縁組に関しては誤解を招くことがあるかもしれません。

ドラマチックというよりも間一髪と言った方が適切かもしれないので、前もって遺言を書いておく方がベターだと思います。終活や相続対策はむしろ平凡すぎるくらいでちょうどいいのかもしれません。

私はなにも相続できないの?

養子といえばこの手の話はよく聞きます。

私の母は、私が小さい頃に義父(Jさん)と再婚しました。私は、義父を実の父のように思い母が亡くなった後も病気の義父と同居して、看病してきました。
ところが、義父が亡くなってから相続手続きのために戸籍を取り寄せてみたところ、義父と私は養子縁組をしていなかったために、戸籍上はまったくつながりがなく、全ての財産は、法定相続人である義父の姪が相続することになりました。

私はなにも相続できないの?

長年親子のように生活をしていたとしても、養子縁組をしていなければ夫と妻の連れ子、妻と夫の連れ子には戸籍上のつながりはありませんので、その連れ子は相続人とはなりません。

相続を考えるのであれば、子連れで再婚をしたらなるべく早くに、自分と血がつながらない子の養子縁組をしておくことが必要です。もちろん遺言書で法定相続人以外の方に財産を遺すことも出来ます。

相続を機に不公平感を解消したい【ケース④】

  • マイホームの頭金を出してもらった
  • 同居して親の面倒をみてきた
  • 介護をした etc

親子の間には様々な支援があることも多いと思います。

相続人が子供だけなら、原則は各相続人が同じ相続割合で相続することになりますが、こういった支援を元に各相続人が相続割合を変更する主張をしだすと、話し合いは簡単にはまとまらないでしょう。

また、介護を長年してきた場合は、負担が大きいことから感情的になりやすく、些細なことでトラブルになりかねません。完全に解消することはできなくても、相続人が納得しやすい内容の遺言を準備しておくことは有効だと思います。

兄が行方不明で手続きができない【ケース⑤】

先月父が亡くなったため、相続手続きのために兄と連絡を取ろうとしましたが、兄とはもう5年以上音信不通でしたので、連絡がつかず、どこに住んでいるのかも分かりません。
父の口座から母の生活費をおろそうとしても、金融機関から相続人全員の押印等が求められるため、それすら出来ません。

兄が行方不明で手続きができない

相続人の中に行方の分からない方や連絡がつかない方がいても、その方を除外して相続手続きを進めることはできません。

どうしても見つからない場合は、その方のために不在者財産管理人の選任を家庭裁判所に申し立てて、遺産分割協議は不在者財産管理人と行わなければなりません。

しかも、行方不明の相続人の不利になるような遺産分割協議を行うことはできず、原則はその方の法定相続分を確保するような内容の遺産分割をすることになります。相続人の中に何年も音信不通の方がいる場合、このような遺言を作成しておくと安心です。

  • 遺留分がある相続人であれば、将来連絡がとれるようになって他の相続人に相続分を要求されても不都合のないように、最低限の遺留分を確保した内容の遺言
  • 遺留分のない相続人であれば、その方を除外した相続内容の遺言

相続人が海外に住んでいる

相続人が遺産をどのように相続するかについて、民法では、遺産総額の何分のいくらかという割合でしか規定がないので、 実際に誰がどの遺産を受け取るのかについては、法律とは別に相続人全員で遺産分けの話し合い(遺産分割協議)をする必要があります。

この遺産分割協議は相続人全員の意見が一致する必要があり、多数決ではすることはできません。

必ずしも集まらなければならないということはありませんが、相続人が海外に住んでいる場合は遺産分割協議に非常に時間と手間がかかることも考えられるので、手続きに時間がかかりそうなケースは遺言書を作っておくことが有効です。

相続人が海外に住んでいる

高齢の母が認知症で手続きができない

父が亡くなりました。遺言書がなかったため相続人である母と私と弟で遺産分割協議をしなければいけませんが、母は高齢のため数年前から認知症の疑いがあり、手続きを進めることができません。

母が認知症で手続きができない

こうした問題を回避するためには、遺産を子供に相続させる内容の遺言書を準備しておくことが有効でした。

お母さんが認知症のため遺産分割協議をするための判断能力・意思能力が十分でないと判断されれば、成年後見制度を利用して遺産分割協議をはじめ各手続きを進める必要があります。こういったケースは年々増加しています。

妻に全財産を遺したつもりが・・・【ケース⑥】

私たち夫婦には子供がいません。両親が早くに亡くなっていたため、親せき付き合いもあまりなく、私にもしものことがあった時には、特に準備をしておかなくても自宅をはじめ財産はすべて残された妻のものになると思っていました。

ところが、私の死後、妻は法定相続人である私の姪から法定相続分を要求されて困っています。今のところ他の相続人である私の兄や甥からは、相続分の要求はありませんが、私名義の預金を引き出すためには、金融機関から相続人全員の押印等が求められるため、相続手続きはすんなりとはいかなさそうです。

財産はすべて妻のものになると思っていたのに。。

Cさんのこのケースでは、いくら疎遠であっても兄弟姉妹(甥・姪)も法定相続人になります。兄弟姉妹には遺留分がないため「妻に全財産を相続させる」という内容の遺言を作っておけば、全ての財産を奥さんに遺すことが出来ました。

子供のいない高齢者の相続

急速な高齢化によって、亡くなる方の多くが高齢者になっています。

相続人の高齢化問題

子供がいない場合の法定相続人は、配偶者と直系尊属(親や祖父母)になります。ご高齢の方が亡くなられた場合は、直系尊属(親や祖父母)は既に亡くなっていることが多いので兄弟姉妹が相続人になるケースがほとんどでしょう。

もし被相続人より先に亡くなっている兄弟姉妹がいれば、その方の子供が相続人になります(代襲相続)

こうした状況では相続人どうしが疎遠だったり、人間関係が複雑な場合も多く、遺産分割協議が難航したり、トラブルに発展する原因になったり、そのまま放置されるおそれがあります。

コラム|この養子縁組で得をするのは誰?

先日、司法書士会の相続電話相談の当番に行ってきました。1件相談が終わり受話器を置いたとたんに、すぐまた次の電話が鳴るという感じで、それはもうひっきりなしに電話がかかってきました。

2月・3月は相続のご相談が増える時期ですが、最近の相続への感心の高まりを痛感するような忙しさでした。


相続関連のニュースで気になったのが「相続税の節税を目的にした養子縁組は有効か、無効かが争われた裁判」です。相続税の節税を目的にした養子縁組というのは富裕層では一般的に行われているのでいまさら感もありました。

はじめは国と相続人間の争いかなと思いましたが、ニュースや裁判例をじっくり読むと争っているのは国と相続人ではなく、相続人同士でした。

節税できるなら相続人全員にメリットがありそうなのに相続人間で争いになるのは、なぜなのか?・・・

養子縁組で誰が得をするのか?

被相続人(亡くなった方)には3人の子供がいました。そして長男の子供と被相続人が養子縁組をしていて、二人の妹がこの養子縁組の有効性を争うという裁判でした。

そもそも。養子縁組をするとなぜ節税効果があるのかというと、相続人が増えることで相続人の人数による基礎控除の額を増やすことができるからです。

一方で、被相続人の相続税額を減らすと同時に各相続人の法定相続分は減ってしまいます。

ということは、全体として節税になっても兄弟姉妹の家族単位でみると取り分に差が出ることになります。ようするに養子縁組で相続人が1人増えた分を補えるほどの節税効果は期待できないということなんですね。

こう聞くと仮に3人の子供にそれぞれ子供がいたなら3人の子供達がそれぞれ自分の子供を被相続人の養子にすれば良かったのではないか?というアイディアが浮ぶかもしれません。

しかし、実子がいる場合、養子は1人、実子がいなければ養子は2人しか相続人の人数に応じた基礎控除の対象にならないので、残念ながら養子を3人にしても3人分の節税効果は期待できません。

それぞれが養子縁組をせずとも遺産分割協議の中で兄弟姉妹間の取り分を調整する方法もあるわけですが、もはやそういうことができる状況ではなくなってしまったんでしょう。

まわりの理解・協力なくしてひとりが主導する節税対策は、まわりから良くやったと評価されることはなく、出し抜かれたという思いが生まれることがほとんどかもしれません。

被相続人の亡くなった時期からすると法定相続人ひとりあたりの基礎控除額は1,000万円ですが、最高裁までの裁判費用などを考えると、実質的な節税効果はどのくらいあったのか非常に気になるところです。

相続人のひとりが勝手に進める節税対策は結果的にはあまり効果を生まないばかりか、兄弟姉妹の関係が修復できない状況になってしまうこともあることが浮き彫りになった事例だと感じました。

子供が1人でその配偶者と親(被相続人)とが養子縁組をするケースなら揉める可能性は低いのかなと思いますが、夫婦間の関係が悪化すればまた違った問題が起きる可能性があるわけで節税対策は本当に難しいですね。

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