泡盛ブログ

リモフェスのテイスティングレポートまとめ

泡盛ファンの有志によってオンラインで開催されている沖縄発の泡盛イベント、島酒リモフェス。

僭越ながら島酒リモフェスでは過去3回テイスティングコメンテーターを担当させていただきました。オンラインイベントという性質上、時間の制約があって伝えきれなかった僕が担当したお酒の魅力をまとめました。

第2回 島酒リモフェス

第2回 島酒リモフェス

瑞泉酒造の6銘柄をテイスティング

第2回 島酒リモフェスのテイスティングコメンテーターとして瑞泉酒造さんを担当させていただきました。1銘柄もしくは2銘柄のメーカーさんがほとんどの中、瑞泉酒造さんはなんと6銘柄!

  • 瑞泉 粗ろ過
  • 蔵出し古酒
  • 御酒 14年古酒
  • おもろ 18年古酒
  • 梅酒原酒
  • 69度

数が多いとテイスティングは大変ですが、嬉しい悲鳴というのはこういうときに使うんでしょうね。

瑞泉酒造@第2回 島酒リモフェス

とにかくわくわくしながら飲ませていただきました。このような機会をいただけたことに本当に感謝しています。

今回は甘い香りや甘味よりも甕香などの複雑な香りや味わいに着目してみました。6銘柄の飲み比べの中での感想なので、絶対的なものではなく相対的な感想になっています。古酒はすべて注いで15分間くらい経ってからストレートでテイスティングしました。

蔵出し古酒 40度

  • 繊細かつとても複雑さを感じる。非常に奥行きを感じさせられた古酒。
  • 甘い香りは甘酒様、甕香だと思うが米ぬかや干草を思わせる香りを感じる。
  • 夜中にテイスティングしていたが翌朝グラスに甘い香りが一番残っていた。
  • ホタルイカのお寿司、魚介の珍味、炭火で炙った厚揚げ、イタミ六十などと合わせてみたい。

瑞泉 粗ろ過 44度

  • 旨味が際立っていて、こってり・濃厚という表現がしっくりくる。蔵出し原酒と比較するとわかりやすい古酒。
  • キャラメル・カスタードを思わせる甘く香ばしい香り。後半に柑橘系の香りをふわっと感じた。
  • 力強さを感じる古酒なので豆腐よう、ブルーチーズ、いかの塩辛、スパイスカレーと合わせてみたい

御酒 14年古酒 40度

  • 瑞泉菌の焼失からの復活のストーリーだけで酔えるお酒。プロジェクトXで取り上げて欲しい
  • 「焦がした砂糖と蜂蜜を思わせる甘い香りに、なめらかな舌触りとアルコール感が調和した古酒」という頂いたメモに激しく同意。
  • ほくほくした焼芋様の甘味。皮つきの芋なので甘く苦みもあるようなイメージ。
  • 御酒(30度)にやわらかいイメージを持っていたが雰囲気が違った。蔵出しと比較しても力強さを感じる。持っていた御酒は大事にしすぎて瓶熟が進んでしまったかも?

梅酒原酒 26度

  • 上品・上質・エレガントという表現が似合う甘い香り
  • 口に含むと甘すぎず、酸味・苦味も感じる。原酒ならではのワイルドな雰囲気を感じる。初めて飲む味わいで面白い。
  • 原酒7:ソーダ3のソーダ割りにすると甘味・酸味が際立つ、それでいてすっぱりしているのでごくごくいける。

69度

  • パーシャルショットで味わうと甘味と苦味が口の中で一気に爆発するイメージ。嫌いじゃない!むしろ好き(^^♪
  • 69度 8:ソーダ3のソーダ割りにすると一気に甘味が増す。 

おもろ18年古酒 39度

  • 鼻に抜ける香りは熟成した穀物香。こういうのが白梅香かざというのかなと思った
  • アタックはなめらかできめ細かな舌触り
  • 待ちきれずに、注いで5分くらいで口に含むと甘苦かった
  • 一般的に古酒を表現するには向かないと認識しているが、透明感がある、清々しいという印象を持った(あくまでも6銘柄の比較の中での表現です)
  • 度数は高いが身体にすぅーと入ってくるイメージ。口の中に旨味が広がるが瑞々しくて飲み飽きない。
  • 坂口 謹一郎博士が名酒とは?と問われて「のどにさわりなく水のごとく飲める酒」と答えたという記事を読んだことがあったが、このおもろのようなお酒を表現したかったのかもしれないと思った。
  • どんな肴と合わせたいか?ではなく、おもろだけをゆっくり楽しみたいと思った。

瑞泉酒造の森田さんと出演した第2回島酒リモフェス(2日目)の動画はこちらからご覧いただけます。

コロナ禍なので自宅から出演しました。配信の裏側はこんな感じでした。

島酒リモフェス出演中

第3回 島酒リモフェス

第3回島 酒リモフェス

請福酒造のやいまとイムゲーをテイスティング

第3回 島酒リモフェスのYouTubeライブでは2日目の請福酒造さんのテイスティングコメンテーターを担当させていただきました。

  • やいま30度・減圧蒸留
  • イムゲー25度
やいまとイムゲー@請福酒造

やいまは八重山産ひとめぼれ100%で造られた泡盛です。このひとめぼれは「かけはし」というお米で造られた泡盛、南雪と関りがあるというストーリーを頭に入れてから飲むと5割増しで美味しく感じると思います。イムゲーについても同じく一世紀ぶりに蘇るまでのストーリーを知ると感じ方は全く違うと思います。

2銘柄ともにストレート、前割りして冷蔵庫で冷やして、オンザロックの3種類の飲み方を試してみました。やいまはオンザロック、イムゲーは前割りが特に気に入りました。

やいまの香りは清涼感がありながらミルキーな印象。アタックは中庸ですが飲むと喉のあたりが熱く感じるような力強さがあります。詰口年月日は2018年2月で瓶熟3年だったことも関係していると思いますが、熟したりんご(焼いたりんご)の様な熟成感を感じました。

メロンの皮付近の様なほのかな酸味、ビターキャラメルのような苦味もあり甘味酸味苦味のバランスがいいです。にんにくを効かせた豚の照り焼き、四川風の麻婆豆腐と合わせてみたいと思いました。

イムゲーはわかりやすく言うと芋焼酎と黒糖焼酎の様な香り。オレンジの様な柑橘系の華やかな香りを感じます。甘味酸味と比べて苦味は穏やかです。 

前割りにしても華やかで上品な印象の香りをしっかり感じました。刺身、今回読み直した「沖縄上手な旅ごはん」に出てきたグルクンの刺身やグルクンで作る久米島かまぼこ製造所のかまぼこと合わせてみたいと思いました。オンザロックは甘味が印象的だったのでピリ辛のもつ鍋と合わせてみたいです。オンザロックは25度なのも手伝ってくいくい飲めます。

請福酒造の座安さんと出演した第3回島酒リモフェス(2日目)の動画はこちらからご覧いただけます。

かけはしで造る南雪が気になる

沖縄上手な旅ごはん@さとなお

「沖縄上手な旅ごはん(さとなお/文春文庫)」に書いてあったのは目から鱗の美味しいもの・面白そうなことだらけ。

  • 美ら海のウニってのが気になるし
  • 小浜島でタコ取り・モズク採りもやってみたい
  • 宮古島で島豆腐作りも体験したい!

そして、それを肴に泡盛が飲みたーい(笑)。

この本で知った岩手県と石垣市の交流から生まれた泡盛 南雪(みなみゆき)がものすごく気になります。1993年の冷夏で米消滅の危機に陥った岩手県、それを助けた石垣市。この2つの地域の絆から生まれた米「かけはし」で造った泡盛が南雪なんだそう。

こんな感じで書いてしまえば2、3行なんですが、著者曰く書けば一冊の本が書けるぐらいの感動のエピソードがてんこ盛りみたいです。是非読んでみたいですね。というか飲んでみたいですね(笑)。

この本(出版は2005年)は泡盛マイスターの先輩からいただいたもので、情報がちと古いため南雪はもう手に入らないかもしれませんね。そうなると余計に気になる。(2015年3月24日)

zoomオンライン飲み会で盛り上がる

ライブ配信の自分の出番が終わった後は16時からzoomオンライン飲み会に参加しました。オンライン飲み会に参加される酒造所の泡盛を集めた試飲セット付の参加権(zoomリモ飲みセット)を購入していました。

zoomリモ飲みセット4月11日@第3回島酒リモフェス

酒造所の方や全国の泡盛ファンのみなさんと同じ泡盛を飲みながら一体感を感じながら3時間以上ゆんたくで盛り上がりました。印象的だった話題をまとめました。

  • イムゲーは商品名ではなく、ジャンル・カテゴリー
  • イムゲー復活のきっかけはSDGs
  • 創業100年を超える酒造所は11社(2021年4月現在)
  • 「時間を守りましょう」という看板が沖縄県庁にある
  • 食べ飲み放題2千円のおでん専門店がある
  • 牛乳割りは北海道ではカウボーイ割りと言われている
  • 凍らせたシークワーサーを氷代わりにする etc

第5回 島酒リモフェス

第5回島 酒リモフェス

第5回島酒リモフェスのテイスティングコメンテーターとして美しき古里を担当させていただきました。テイスティングのテーマは泡盛の温度。温度というのはアルコール分の%ではなく℃のことです、念のため。

美しき古里@今帰仁酒造

きっかけとなったのはKuraMasterというフランス人のための日本酒コンテストです。2021年から焼酎・泡盛部門がスタートして栄えある最高位のプラチナ賞を受賞されたのが今帰仁酒造さんの美しき古里なのです。

KuraMasterについて調べてみると14℃の状態でワイングラスで審査するようです。明確に書かれていなかったのですが恐らくストレートでしょう。

ここで着目したのが14℃という温度。泡盛の飲み方はいろいろ試してきましたが温度を意識したことがなかったのと、冬季のテイスティング勉強会では冷えた泡盛は香りが立ちにくく難しかった印象があるので14℃というのはどうなんだろう?と疑問に思ったからです。

美しき古里を温度を変えて飲み比べ

温度を意識して飲んでみると楽しくなってしまって最終的に5段階の温度で飲み比べました。

  • 3.5℃|オンザロック
  • 6℃|冷蔵庫から取り出してすぐ
  • 14℃|KuraMaster審査基準
  • 23.5℃|常温(室温)
  • 33℃|人肌燗

まずは14℃に冷やすべくグラスに注いでラップをした状態で冷蔵庫で冷やしました。取り出して計ってみると6℃。思っていたよりも冷たくなっています。しばらく室内で放置して14℃にすることができました。はやる気持ちを抑えてようやく口に含みます。

これが絶妙な温度でとても美味しいのです。参考までにKuraMaster2021審査委員長のコメントを紹介しますがとても納得できる評価だと思いました。

爽やかな白い花の香りに、海のミネラル香がほどよく漂う楽しい香り。この複雑さと丸さ、そして熟成を感じさせる甘味とコクが心地よいです。

KuraMaster2021審査委員長のコメント

5段階の比較による感想をまとめました。

  • 3.5℃|香りが立ちにくくお酒が縮こまっている印象。キレはいい。氷が融ける過程で味がまろやかに変化する美味しさは捨てがたい。
  • 6℃|綿菓子やラムネのような甘味を感じるが苦味が強い。温度が上昇していく過程の味わいの変化が面白い。
  • 14℃|甘味苦味をしっかり感じるきりっとした印象。泡盛の表情がよく見える絶妙な温度。違和感なく身体にすぅーと入ってくる。この飲み方は飲まれる(笑)
  • 23.5℃|白い花、しょうが、お味噌などのニュアンスの香りを感じる。香りは掴みやすい。味わいは甘味は強いがアルコール感がある。言い換えると飲みごたえがある。
  • 33℃|アタックは柔らかい。苦味が強く辛口でどっしりとした印象。温度が上がるとアルコール感は増す。飲んだ後で常温を飲むとほっとするくらいに重たい。だめというわけではなく味噌おでんやどて焼きのようなこってり濃厚なものに合いそう。 
オンザロックの3.5℃と冷蔵庫から取り出してすぐの6℃

KuraMasterというのはフランス人のためのコンテストなのでできるだけ思考をフランスに向けようと、フランス料理と言えばで思いついたエスカルゴバターとチーズをあわせてみました。

エスカルゴバターと水割り(1:1なのでアルコール分15%)をあわせてみたところエスカルゴバターの味わいに負けてしまって物足りなく感じたので今回はストレートのみにしました。 

ちなみに美しき古里の水割り(氷なしの常温)はほのかな甘みが心地よく柔らかな印象です。日本人の感覚では食中酒にぴったりなんですがエスカルゴバターのパンチ力に負けてしまって釣り合いませんでした。

23.5℃|常温(室温)

泡盛のお湯割りはイメージがわかないかもしれませんが沖縄でも意外に飲まれています。沖縄県外の泡盛ファンは寒い時期は飲む人は結構いるんじゃないでしょうか。今帰仁酒造さんの動画にあったようにお湯割りも考えましたが水割り同様の理由で今回はお湯割りではなくそのまま温めることにしました。

いわゆる熱燗ですが熱燗といっても温度は30度くらいから55度くらいまで幅が広いです。何度の熱燗にしようかなと思ったときに思いついたのは常温(室温)との温度差です。僕が14℃をとても美味しいと感じたのは室温とのー7℃の差が理由かもしれないという仮説を立てて、室温+7℃に温めてみました。温度で言うと33℃くらい熱燗の分類で言うと人肌燗35℃になります。

エスカルゴバター、コンテチーズと

エスカルゴバター

このエスカルゴバターは内臓は取り除かれていますが、なかなかの野性味あふれる味わい。サザエなら肝込みの味わいに近いと思います。

パセリとニンニクのみじん切りを練りこんだエスカルゴバターは美味しいのですが、濃厚なので数を食べると水割りでは圧倒されてしまいます。その点、14℃のストレートは口の中がさっぱりするので食べ飽きることなく美味しくいただくことができました。

常温のストレートとエスカルゴバターを塗ったトーストの組合せを試してみたのですが、食パンなのが関係していると思いますが常温では重く感じました。やっぱりバゲットがしっくりきました。

エスカルゴバターと美しき古里

コンテチーズはマイルドで食べやすい6ヶ月熟成を選んだのですが食べなれていないのでとっつきにくい。

特に外側の固い部分は風味が濃いです。例えるなら子供の頃に豚小屋で嗅いだ豚の飼料の匂い。幼稚園の頃だったと記憶していますが祖父の実家で豚を飼っていて巨大な豚の迫力と匂いに恐怖を感じたことが印象に残っています。ようはコンテチーズも水割りには荷が重いということです。

この2つだけでは何とも言えないので、いつか本格的なフレンチと美しき古里をはじめいろいろな泡盛をあわせてみたいですね。

エスカルゴ@グランマルシェ

ちなみにエスカルゴを入手するのは苦労しました。通販ならありますが量も多いし送料もかかります。近所で入手しようと置いてそうなお店に10軒くらい電話をしてやっと見つけることができました。クリスマスの時期しか扱ってないんですよというお店もありました。エスカルゴはクリスマスのご馳走なんでしょうか?

エスカルゴを探している時に思ったのは泡盛も同じだろうということです。飲んでみたいと思っても入手しにくいとたぶんたどり着けない。特に海外に泡盛を広げるためには入手しやすさがポイントになると思いました。

最後にKuraMasterの審査基準をご紹介します。

  • 『香りに対して、複雑で多彩なものを体験できること』
  • 『原料の香りや味わいがあり、それを上手く生かしているかどうか』
  • 『味も単調にならず、深みやコクもあり、キラリと光る作り手の個性がわかるようなところが発見できるか』

KuraMasterで評価の高かった美しき古里は、14℃のストレートで飲むのも美味しい飲み方の1つなのは間違いないと感じました。美しき古里を飲んだことがある人もない人もぜひ14℃に調整して味わってみてください!

今回のテイスティングで泡盛の温度に着目したことで新しい風が吹いたような感じがします。僕の中で泡盛の楽しみ方が1つ増えました。このような機会を作っていただいた島酒リモフェスの実行委員のみなさんと今帰仁酒造様に感謝しております。ありがとうございました。