一本の線が明暗を分けた遺言書

赤い斜線が引かれた遺言は有効か?無効か?

全面に赤いボールペンで斜線が引かれた遺言(自筆証書遺言)は、遺言者が遺言の内容を撤回する意思があったのか否かを巡って、長男と妹が争った裁判で最高裁の判決が出ました。

遺言の内容は長男に財産の大半を相続させるというものだったので、お父さんの遺した遺言が有効か無効になるのかでは、兄妹の相続財産の取り分は大きく違う結果になります。

赤いボールペンで斜線が引かれた遺言は・・・「無効」と判断されました。
新聞記事でも取り上げられたので目にされた方も多いかもしれませんね。

全面に赤いボールペンで斜線を引いているのだから撤回する意思表示と考えるのが一般的な感覚かもしれませんが、何故争いになるのかというと、民法では遺言の撤回は、焼却、破り捨てるといった、故意に『破棄』したときと定められているので斜線を引くことが『破棄』にあたるのかという点がポイントになります。

一方で、自筆証書遺言を訂正するには変更した箇所を特定して変更した旨を書いた上で署名と押印が必要になるので、赤い斜線が引かれているだけの今回のケースでは変更に当たるのかという点が2つ目のポイントです。

結論からいえば、形式的なことよりも、赤い斜線を引いたという行為を遺言者が遺言の内容を撤回する意思があったと重く評価して最高裁は無効と判断したということになります。

遺言を書いたお父さんは2002年に亡くなっているので、亡くなってすぐに揉め事が起きたとしたら、最高裁で判決が出るまで実に13年。これだけの年月を裁判に費やすのは相当なエネルギーが要りますよね。お父さんも一本の線のせいでここまでの揉め事に進展するとはまさか思いもしなかったでしょう。

ただし、そもそも遺言は長男に相当手厚い内容なので、それを考えると赤い斜線が引かれていなかったとしても、すんなり事が進んだかどうかはわかりませんが、やっぱり遺言を作るなら公正証書遺言に限ると改めて感じる判決でした。

というのも、公正証書遺言の原本は公証役場で厳重に保管されているので、遺言が破棄されたり、紛失してしまうこともないからです。