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泡盛マイスターとは?
泡盛マイスターというのは、泡盛の知識、テイスティングスキルや泡盛と沖縄料理との組合せなどに精通している者に与えられる沖縄県知事認証の資格です。簡単に言うとワインでの「ソムリエ」が泡盛では「泡盛マイスター」になります。
泡盛マイスターは平成16年から誕生していますが、平成19年に泡盛マイスターが民間資格から沖縄県知事が認証する制度になりました。平成19年度の認証者が多いのはそういう経緯があるからです。
国内の泡盛マイスターは611人で、沖縄県内は飲食店や泡盛メーカーのスタッフの方が多いです。
- 沖縄県内512人、県外99人(2018年11月)
泡盛マイスター協会創立十周年記念誌には泡盛マイスター協会の歴史や都道府県別の人数が載っています。大阪には僕を含めて泡盛マイスターは数名しかいません。滋賀から鹿児島まであわせても10人。大阪でも講座や試験を受けられるようにしないと関西圏の泡盛マイスターの増加は期待できないと思います。
平成24年度に認証された僕は泡盛マイスターの中ではまだまだひよっこ。泡盛で例えるなら新しめの古酒みたいなものなので自己研鑽に励んでいます。
泡盛マイスターになるには?
筆記試験と実技試験の両方に合格すると泡盛マイスターになることができます。僕は筆記→実技という順番で合格しましたが、順番に決まりはありません。僕が合格した年は本格焼酎&泡盛の日の11月1日に認証書授与式が沖縄で開催されました。
大阪では泡盛マイスター協会主催の研修会はありませんが、僕が事務局を務める泡盛テイスティングの勉強会(大阪泡盛の会)では課題泡盛を購入して実技試験に挑戦するメンバーをサポートをしています。
そして、数年前には大阪初の女性泡盛マイスターとしてメンバーのSさんが合格されました。非公式ながら試験対策のサポートが大阪でもできることの1つの証になったのが嬉しいです。
僕が受験した当時の情報なので変更点はあると思いますが、勉強法や心構えなど参考にしていただければと思いまとめました。
筆記試験
これは僕が受験した当時の筆記試験のテキストです。全部で厚さ4.5センチにもなる9冊のテキストが物語っているように出題範囲はかなり広いです。対策講座と試験は沖縄と東京でのみで開催されていたので、関西在住の僕は筆記試験の対策講座に参加するのは諦めてテキストと過去問を使って独学で筆記試験の勉強をしました。
実技試験
筆記試験は過去問中心に独学でも合格することができましたが、実技試験は泡盛マイスター協会のルール・作法があるため独学じゃ相当難しいと聞いていたので、沖縄・東京で開催されていた実技試験の対策講座に通いました。
ど素人が馴れないテイスティングをそれなりにこなせるようになるのはやっぱり大変でした。また実技試験は冬場の風邪が流行る時期に開催されるので鼻水・鼻づまりなど鼻にくるとテイスティングにもろに影響します。勉強中は体調管理に気を使っていたので、泡盛を飲んでいても試験のことを考えてしまって、ちっとも美味しくない。←嘘です(笑)。
実技試験といえば、試験本番で遅刻してしまってダッシュで会場に入ってハァー、ハァーいいながら試験の説明を聞いた苦い思い出があります。
講習会で何度も沖縄・東京へ行っていたのですが、どんだけお金使うねん!って最後の最後に我に返って前泊のホテル代をケチって当日飛行機で移動したのが遅刻の原因です。間に合わなかったらどうなってたんでしょうね・・・怖っ(苦笑)。
ここまでに掛かった金額を考えると、相方に落ちたとはとてもじゃないけど言えない状況だったので、合格がわかったときはかなりホッとしました。講師の先生方のご指導と一緒に受講していた同期の皆さんの励ましのおかげです。また関西在住の先輩マイスターお二人からの激励も心強かったです。この場を借りてお礼申し上げます。
課題泡盛は30銘柄
実技試験の対策講座を受講したとしてもそれだけで合格するのは難しいので、自宅練習用に泡盛マイスター協会が指定する課題泡盛を購入しました。その数なんと30銘柄。二合瓶が中心でしたがなかなかの量でした。これだけあると思わず並べてみたくなってやってしまいました。
- 第1フレームは二合瓶
- 第2フレームは三合瓶中心
- 第3フレームは四合瓶
僕が挑戦した平成23年度の課題泡盛は30銘柄でしたが、平成26年度は5銘柄増えて35銘柄になっています。この中から4銘柄が出題されるのは変わりませんが年々大変になっているということです。
平成26年度の課題泡盛を見ていると入手しにくい「宮之鶴」があったり、他の課題と比べて2倍以上いいお値段の「春雨マイルド」があったりと全て揃えるのも大変です。また「八重干瀬(やえびし)」をはじめまだ飲んだことのない4銘柄も含まれていました。
2つのリストを照らし合わせると約半分が変わっていました。変わっていないものを実技試験の定番と考えてそこを中心に勉強をはじめるのが良さそうです。
認証書授与式
季節外れの夏休みを取って11月1日に沖縄で開催された泡盛マイスター認証書授与式に参加しました。参加の条件だった泡盛マイスターバッヂはギリギリでしたがなんとか間に合いました。裏には認証番号入りで僕は403(シーサー)でした(笑)。
平日なので沖縄県外から授与式に参加していたのは僕を含めて3人。参加できなかった人には認証書が郵送されたと思います。県外参加者のMさんが地元のケーブルテレビの取材を受けているのを他人事だとのほほんとしていたら次は僕の番でした。
- 「泡盛マイスターを受験しようと思ったきっかけは?」
- 「お薦めの泡盛は?」
- 「お薦めの飲み方は?」
この日の沖縄はスーツでもちょうどいいぐらいに涼しかったのにインタビュー終了時には考えられない量の脇汗をかいていました。カメラが回っているとこんなにもろれつが回らなくなるとは。。
沖縄のケーブルテレビなので放送されたのか、カットされたのか知るすべはありませんが、前もって言っといてくれたらと悔やまれます。
実技試験|泡盛テイスティングで心掛けていること
僕が泡盛のテイスティングをするときに心がけていることはこの2つです。
- ①泡盛の良い面を見ること
- ②感覚的よりも正確な表現で伝えること
実技試験の勉強をしているときは①しかできていなかったと思いますが、合格後に始めた泡盛のテイスティング勉強会ではできるだけ正確に表現することを心掛けています。
テイスティングに人付き合いの本質を想う
テイスティングの本質について僕が語れるようなものは何もありません。ありませんが単に「うまい」「まずい」というのはもってのほかだし、「好き」「嫌い」というのも違うのはわかります。
泡盛も人間で長所・短所があるので、短所を見つけてそこを突いてやろうという気持ちではなく、個性や特性を知り長所(良い面)を見つけて、そこを伸ばして・引き出してあげるような気持ちでテイスティングすることが重要だと泡盛マイスターの講習会で教わりました。
仮にマイナスの面であってもダメ出しにならないように表現に気を使うというテクニックもあります。泡盛に限らず人付き合いにも応用できそうですよね。いや~泡盛テイスティングって深いなぁと思わず唸ってしまいました。
ただし、銘柄当て(の練習)をするときは少し違ってきます。バニラ香りが強い、苦味が強い、ゴム臭が強いなど良くも悪くも特徴的な部分に目を向けた方が判別しやすいので、そこにフォーカスします。これはあくまでも例外的なものです。
正確に表現する努力を怠らない
濡れた犬、猫のおしっこといったアーティステックな(適切かどうかわかりませんが)テイスティングの表現はカッコいいですよね。思わず飲んでみたいという気持ちを掻き立てられる表現が必要なのもよくわかります。でも実際に飲んだ時にしっくりくることって少ないんじゃないでしょうか。
他には「握力のある」「オリエンタルな」とか、泡盛マイスターのテキストにも載っているし味わいのある表現だと思いますが、やっぱり伝わりにくいですよね。
自分のボキャブラリーの少なさを正当化したいわけじゃなくて、僕たち泡盛マイスターは泡盛の香りや味わいをできるだけ正しく、受け手に伝わりやすく伝えるのが本来の役割だろうと思っています。
相手の頭の中でイメージできるものを使って表現しないと正確に伝わりませんからね。泡盛フレーバーホイールが作られたのもそういうことじゃないですか。
そう考えると僕たち泡盛マイスターは香りを正しく認識していないと話にならないってことです。まずは泡盛の代表的な香りを把握するためのトレーニングが必要だろうと考えています。
本物で確認するのがベターなのはわかっていますが、勉強会で効率的に学ぶことができるようにテイスティング勉強会で活用しているのが香りサンプルです。
はじめは化学成分だったのですが、ローズマリー・クローブ・レモングラスなどより身近な香りサンプルになって非常にわかりやすくなりました。泡盛マイスターの先輩で香りのプロフェッショナルのIさんに提供していただきました。ありがとうございます。
テイスティング勉強会は泡盛初心者の方も参加されるので、自分が泡盛マイスターということを意識しすぎて格好つけて耳ざわりの良い言葉遊びに走らないように気をつけています(苦笑)。
口に含んですぐに吐き出すのは(スピットでしたっけ?)、お酒に対する冒涜じゃないのかと思ったり、やっぱり飲み込んで喉ごしを感じないとわからないんじゃないかと悩んだこともありました。テイスティングの数をこなそうとすると、飲み込むと酔ってくるので、テイスティングを楽しむのか?正確にテイスティングしたいのかで吐き出す・飲み込むは使い分けたらいいと思います。
参考|泡盛の香りサンプル・トレーニングキット
ビニールの袋を開けると泡盛の香りとともに一見すると本のような箱が出てきました。
箱から内箱を取り出すとさらに泡盛の香りが広がって、お取り扱い説明書も一緒に出てきました。
箱を開くと中には小瓶が24本。
ここまでくれば、なんとなくイメージできますか?
これは泡盛の代表的な香りを液体化したもので泡盛マイスター協会と稲畑香料さんが共同で開発した泡盛の香りサンプル・トレーニングキットです。イソ・アミルアルコールからのマルトールまで泡盛の香りを構成する代表的な24種類の化学成分が揃っています。
この香りサンプルの存在は以前から知っていましたが、この度ご縁があって僕のところにやってきました。貴重な泡盛の香りサンプルを譲り受けたことで身の引き締まる思いです。ありがとうございました。
開発の経緯などの詳しい話は袋の中に入っていた琉球新報のコピーとお取り扱い説明書に書いてありますが、泡盛の香りの特徴を物質名と関連付けて覚えやすくするために作られたのがこちらの泡盛の香りサンプルなんですね。
化学成分とその香りの特徴を頭の中で整理できていなかったために、どうしても感覚的に香り(味も)を表現してしまっていたので、香りサンプルとの出会いにかなり興奮しています。これを機に泡盛テイスティングの勉強会(大阪泡盛の会)では「泡盛の香りサンプル」を毎回1つずつテイスティングすることにしました。記念すべき第1回は「イソ・アミルアルコール」です。
ただし、一抹の不安もありました。というのも香りサンプルが発売から9年経っているので、もしかすると劣化しているかもしれないと伺っていたからです。
素人の僕には劣化しているのかどうかが全くわからないので、家で試すことなく勉強会に持ち込みました。勉強会に持って行けば、メンバーにこのサンプルを開発されたご本人がいらっしゃるので判断してもらえるというわけです。
結果は・・・劣化してました~(泣)。
作られたご本人がおっしゃるので安心して書きますが、体臭のような臭いです。ストレートに言ってしまえば足の匂いですね(笑)。専門的にいうと酸化して吉草酸になっているそうです。
この日は1日外出していたので香りサンプルを持ち歩く時に泡盛のいい香りを全身から発散させてしまうかもしれないと思い、漏れないように瓶が割れないようにと袋を二重にしたり緩衝材で包んだりしていましたが、大事に大事に足の臭いがする小瓶を抱えて一日を過ごしていたのかと思うと笑えます。
家で漏れていないか確認した時に瓶が明らかに異臭を放っていたので、嫌な予感はしてたんですけどね。
ちなみに足の臭いは容器の外側から漂う匂いです。念のために蓋を開けて中身も確認してもらいましたが、いずれにせよ酸化してしまっているようでした。中身はマッキーの匂いがしました、ゼブラの油性マーカーのマッキーです。いい匂いと感じる人が少なからずいるあのペンですね。
香りサンプルの取扱説明書によると、イソ・アミルアルコールは薬品的な香り、アルコール様の香り、甘い芳香、バナナの甘い香りを想起させるらしいので、わからないでもないのですがより刺激的に変化していました。密閉されていてもさすがに9年という年月に勝てなかったようです。
次回まで新しくイソ・アミルアルコールの香りサンプルを準備していただけることになったので、お楽しみは次回に持ち越しです。
余談ですが、相方が言うにはこの取扱説明書からはパン粉の匂いがするらしいです。うそやろ~と確かめてみたら本当にパン粉。ここまで的確に香りを例えられるとなんか悔しいけど、かなり的を得た表現なので機会があればたくさんの方に実際に確認して欲しいです(笑)。
泡盛マイスターは酒豪しかなれないの?
「泡盛マイスターなんです」と言うとかなりの確率で「凄いですねぇ。お酒強いんですねぇ~」と感心されるのですが、いやいや泡盛マイスターはそういう資格じゃないですからっ!
お酒が飲めなくてもなれます。
泡盛は強い酒というイメージが前提にあるので、泡盛が好き・詳しいということは相当飲めるはずだから「泡盛マイスター」と聞くと、それはもうむちゃくちゃお酒が強いんだろうなという想像が働くんでしょうけど、お酒が強いかどうかは合格判定にはまったく関係ありません。
筆記試験と実技試験があって実技にはテイスティングという科目がありますが、試験の時は基本的に口に含むだけで吐き出しています。普通に飲んでいる人もいるみたいですが(苦笑)。
泡盛を口に含むので未成年は受験できませんが、練習でも試験でも特に飲む必要はないので泡盛マイスターはお酒が飲めなくても取れる資格です。
僕は酒が強いのか?遺伝子検査をしてみた。
正直なところ若かりし頃は「自分は酒が強いのでは?」と勘違いしたときもありました。今となっては僕の周りの泡盛好きはお酒が強い人がとても多いので自分なんて大したことないなぁと自覚しています。
泡盛マイスターの僕は果たして酒が強いのか?強くないのか?相対的じゃなくて絶対的にどうなのか?そんな疑問が湧いてきました。
過去を振り返れば数々の失態に年々弱くなっているなぁと痛感する今日この頃。そもそも強かったのが弱くなったのか?もしかしたら強くないのに単に若さで乗り越えていたのが年齢とともに乗り越えられなくなったのでは?という疑問すら湧いてきました。
そんなときに遺伝子の型を調べることで体質的にアルコールに強いかどうかが分かるという、ジーンライフという会社のアルコール代謝関連遺伝子検査キットを見つけてしまいました。偶然にも新生活キャンペーンかなにかで通常5,250円のところが今ならスペシャル価格の2,980円!
いつやるの? 今でしょ!
すっかり使い倒された感がありますが、1度このフレーズを使いたかったもので、すみません(苦笑)。
申込みからほどなくして、こんな箱が送られてきました。
かなり大きな箱の割に中身はこれだけ。
口の中をこの綿棒状のものでコシコシして同意書と一緒に返送すると、アルコールの耐性が3段階(強い・やや強い・弱い)で解析され、その結果に応じたシリコンバンドが送られてくるという仕組みです。これは使用前の画像なのでご安心ください。
ジーンライフからアルコール代謝関連遺伝子検査の結果が送られてきました。
開けると、中には検査結果を表すシリコンバンドがっ!!
色はグリーン、そしてバンドに刻まれた文字は「*1/*1」
シリコンバンドには、Don’t let me drinkの文字が刻まれています。
それからtoo much!!も。
バンドに込められたメッセージは「私にあまりお酒をすすめないでください!」ということはやっぱり弱かったか。。
過去の数々の失態もアルコールに弱かったゆえと納得。飲めないのに今まで無理してきたんだ、お疲れ自分と言ってあげたいとなんともいえない心境の中でこの紙を見ていると・・・
他の色のバンドにはこう書いてあるようです。
- 黄|お酒は2杯が限界です!
- 赤|私はお酒がまったく飲めません
ということは、遺伝子型が「*1/*1」はアルコールの耐性が強いということになります。
「なんだ、やっぱり強いんじゃねぇの!!」となると、過去の失態は単なる飲みすぎによるものでした(爆)。
アルコールに「強い」というのは「弱い」よりは良さそうな気もしますが、「強い」方がアルコール依存症になるリスクが高まるので気を付けなければいけないんだそう。このバンドは自分に対する戒めとして飲む時に持ち歩こうと思います。
ちなみに日本人の6割弱は遺伝子型が「*1/*1」みたいです。
残りの4割は強くないってことになるはずですよね。遺伝子の型が生まれ育った地域とどこまで関係するのかわかりませんが、高校の同窓会や山形県人会の飲み会でのみなさんの飲みっぷりを拝見する限り、どうしても4割とは思えない。酒処山形恐るべし!