マイナス財産は遺産分割不要!?

遺産分け

遺産分割というと、不動産は誰がもらうとか、預貯金は誰がもらうとか、どうしてもプラスの財産をどう分けるのかということに目がいきますが、忘れちゃいけないのがマイナスの財産です。

また最近は不動産といってもマイナスの財産になりえるし、誰も相続したくない、いわば“負の遺産”と言わざるを得ないようなケースがあるようです。

マイナスの財産はどう分けるの?

例えば、お父さんが亡くなり相続人は二人の息子だけという場合で、お父さんの遺産といえば、自宅(プラスの財産)と自宅を購入するために借りたローン(マイナスの財産)だけだったとしましょう。

話し合いの結果、自宅は、お父さんと同居していた長男がもらうことになり、もちろん、残ったローンも長男が引き継ぐということになりました。

その内容をしっかり遺産分割協議書にして、自宅の名義も長男に変えて、揉め事もなく相続手続きも済んだと安心していたのですが・・・

ある日、次男あてに金融機関(債権者)から自宅のローンの支払いについて、お知らせが届きました。内容は、ローンの支払いが滞っているので、次男に支払いを請求するというものでした。どうやら長男は、事情があってここ何ヶ月かローンの支払いが出来なくなっていたようです。

次男は、金融機関に遺産分割協議書を見せて、「自分は自宅はもらわなかったし、ローンだって兄貴が引き受けたんだから、自分には関係ない」と主張できるでしょうか?

ローン(借金)のようなマイナスの財産は、相続人の意思で誰が引き継ぐのか決めることは有効ですが、金融機関(債権者)にそれを主張することができません。

いいかえると、借金のようなマイナスの財産は、法定相続人が法定相続分に従って、法律上当然に借金を引き継ぎます。

今回の例では、仮にローンの残金が2,000万円であれば、相続人である二人の息子は当然に、それぞれ1,000万円のローンを引き継ぐというわけです。

どうしてかというと、遺産分割協議で意図的に特定の相続人に全ての借金を相続させて、その相続人が自己破産をしてしまうと、お金を貸している金融機関(債権者)は困ってしまうため、債権者を守るような仕組みになっているからです。

ただし、実際には、金融機関(債権者)の同意があれば、法定相続と異なる遺産分割も可能なので、免責的債務引受といった方法で、特定の相続人だけが借金を引き受けることもできます。

ローンを引き継いだ長男が問題なく支払いを続けていれば、金融機関から次男が支払いを請求されることはなかったわけですが、無事に済んだと思った遺産分割協議が、思わぬところで落とし穴にならないように対策を取られることをお薦めします。

実家が負の遺産になる!?

プラスだけなら嬉しいのですが、相続財産にはマイナスの財産というものがあります。

プラスの財産の代表格といえば自宅をはじめとする不動産や預貯金・株式等で、マイナスの財産は借金や保証債務というところでしょうか。不動産はもらいたいけど、借金があるなら相続したくないと思うのが本音ですよね。

ただし、場合によっては不動産といえどもマイナスの財産になりえるし、誰も相続したくない、いわば“負の遺産”と言っても過言ではないケースもあるようです。

なにも特殊な不動産の話をしているわけではありません。相続をきっかけに、売れない・借り手がいない・家族は誰も住まないといった理由で空き家になってしまった実家は、利益と呼べるものは何もないのに固定資産税は毎年払わなければいけない。

これがプラスの財産といえるのでしょうか?

これまでは空き家でも建物が立っていれば、特例があり固定資産税が優遇されていましたが「空家等対策の推進に関する特別措置法」が施行されたことで、例えば建物の倒壊や保安上危険になるおそれがあると「特例空家等」に認定され、修理や取り壊しに従わなければ優遇措置を受けられなくなります。

修繕維持費や解体費といった費用が掛かるならいっそのこと手放したいけど買い手がみつからない。こんな不動産がプラスの財産とはいえませんよね。

これは他人ごとと安易に考えて済む問題ではなさそうです。総務省の調査によると全国の空き家の総数は約820万戸(平成25年10月1日時点)ですが、空き家の中で別荘や賃貸用、売却用の住宅を除いても約318万戸あります。

また空き家が増える一方で、新しい住宅もどんどん供給されているわけで、実家(我が家)は売れる、借り手が見つかる、ずっと住むから大丈夫と自信を持って言える方はどのぐらいいるのでしょうか(僕の山形の実家なんかはかなり心配ですね)。

空き家にならないためにはその不動産に価値・魅力があることは重要ですが、相続の手続きをそのままにしたことがきっかけで空き家になってしまうこともあります。

相続の話し合いがまとまらないまま、おじいちゃんの名義のままで空き家になっている。なんていうのは相続のご相談を伺っているとよくある話で、相続人が何人いるのかも把握できていないことが多いです。

相続人へ名義変更ができなければ売却することができないため、そのまま空き家になってしまうようなケースですね。

空き家にしないための努力は必要ですが、既に空き家になってしまい解決が難しいと感じておられる方は、空き家の解体費用に対する自治体の補助制度や金融機関のローンなどがあるようなので活用を検討されてはいかがでしょう。

人気記事 夫婦で遺言を書いて法務局に預けてみた|自筆証書遺言書保管制度