介護のページは本音で書こう。ただし押し付けにならないように。

エンディングノートの書き方のポイント

もしものときに家族が知りたいのは、あなたの本音です。

あなたの希望がわからないために、家族が揉めるきっかけにならないように、エンディングノートには本音を書いておきましょう。

私、伊藤 薫が実際にコクヨのエンディングノートを2ヶ月半かけて書いていく中で相続専門司法書士の視点から気づいたことをまとめました。

目次【本記事の内容】

エンディングノートは本音で書こう

「認知症や寝たきりになった時、介護をお願いしたい人や場所は?」といった介護の希望を書くページがあります。

こんな選択肢が多いと思います。

  • 自宅で家族に介護をお願いしたい
  • 自宅で、プロのヘルパーなどに手伝ってもらいながら家族と過ごしたい
  • 介護施設や病院に入れて欲しい
  • 家族・親族の判断に任せる

家族に負担をかけたくないと考えて、家族・親族の判断にまかせるを選びたくなる気持ちはよくわかります。

でもエンディングノートには、あなたの【本音】を書いてください。

エンディングノートに書いた内容が活躍できるのは、書いた人の緊急時もしくは亡くなった後です。

その時に家族が本当に知りたいのは、こうして欲しいというあなたの本音だからです。

亡くなった後まで悩み・葛藤されているご家族を成年後見人として見てきました。

  • 胃ろうをして良かったのか?
  • 胃ろうはしない方が良かったのか?

もし胃ろうについてのお母様の希望がエンディングノートに書いてあれば、どれだけご家族の救いになっただろうと思ったことがあります。

また、家族といえども価値観は違うので、安易に「家族・親族の判断に任せる」を選ぶと家族が揉める火種になります。

もちろん、エンディングノートを書いておくよりも本音を直接話しておく方がよいのは間違いないでしょう。

希望が押し付けにならないように

特別養護老人ホーム、老人保健施設、軽費老人ホーム・・・、介護施設は名前を聞いただけではどこが違うのか分かりにくいですね。

要介護度に応じて入所できるところがあれば、要介護度に関係なく入所できるところもありますし、介護保険の適用があるところ・ないところもあって様々。

介護施設以外には有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅もあるので、高齢になった時、介護が必要になった時、いろいろあってどこで生活したいか自分の希望を決めることさえも難しい問題かもしれませんね。

エンディングノートの中には、介護を受けたい場所として、具体的に施設・病院の名前まで書いておくことができるものもあります。また、具体的にこの施設でというところまでは書かないまでも希望する施設の種類までは書いておくことができるものもあります。

単に「施設で」「病院で」ではなく、具体的な希望を書いておくには、ある程度の予備知識がないと適切に選択することはできないかもしれません。

特別養護老人ホームに入れる条件は、2015年の4月から「要介護度1以上」から「要介護度3以上」に変更されています。

法改正まで予測して選ぶなんてことは到底不可能です。

ということは、具体的な施設名や施設の種類を安易に書いてしまうと、希望を叶えてあげることができなかったと家族が悔やむことがあるかもしれません。

具体的に希望を書くなら入所するのにかかる費用を調べておく、さらにはその費用を備えておくことも必要になりそうですね。

エンディングノートに介護に必要な費用をどう捻出するのかを書いておく欄がありました。僕はこの中から当然のように「特に用意していない」にチェックしました。

  • 預金から
  • 保険で
  • 特に用意していない

あくまでも希望を書いておくノートとはいえ、我ながら将来必要になるお金について真剣に考えようと思いました(汗)

もしもの時に自分の希望が家族への押し付けにならないように、気をつけたいものですね。

生活の質を保つために好き嫌いを書いておこう

エンディングノートに食べ物の好みを書いておくのは、介護が必要になったときに生活の質とも訳されるQOL (クオリティ オブ ライフ)を意識してのことです。

介護が必要になったときに、必ずしも家族や周りの方があなたの食べ物や好みや趣味嗜好を代弁してくれるとは限りません。

我々司法書士が第三者の成年後見人に選ばれるようなケースでは、ご本人さん(被後見人)のことを施設や病院の方や行政の担当者から伺うことが多いので、十分な情報が得られることの方が少ないかもしれません。

食べ物の好みを書いておいた方が良い理由

介護についてのページは見開きで2ページで大きくこういった項目が並んでいます。

  • 介護に対する希望を書いておくページ
  • 自分自身の食べ物や洋服の好み、趣味や苦手なものについて書いておくページ

食べ物の好みなんてどうでもいいことと思われるかもしれませんが、僕の成年後見人(法定後見)としての経験から言わせてもらうと、ここは大事なのでしっかり書いておくべきです。

というのも。

家庭裁判所で成年後見人に選任されて、ご本人さん(被後見人)と初めてお会いする時に全く意思疎通がとれない方もいらっしゃいます。

ご家族からご本人についてお話をうかがえればよいのですが、ひとり暮らしだったりするとこういったことがまったくわからない場合もあります。

  • どのような人生を歩んでこられたのか?
  • 食べ物や洋服の好みや苦手なもの

この辺の好みを成年後見人なり、施設の方などが十分理解しているのと理解していないのでは、これからの生活の質がだいぶ変わってくると思います。

例えば・・・

  • 栄養のバランスを考えて毎日食卓に並ぶメニューに大嫌いな食材がふんだんに使われている
  • 寒くないようにと着せてくれたタートルネックがチクチクして不愉快で極まりない etc

ドッグセラピーは精神的安定や運動機能回復効果が期待できるとは思いますが、過去に噛まれたことがあって近くにいるのも我慢できないという人にとっては死活問題かもしれません。

朝食のお粥をほとんど食べなかったAさんは、ご家族からパン派だと聞いてパン粥にしたらたくさん召し上がるようになりました。こういうことがあります。

些細なことかもしれませんが、自分で意思表示できなくてもこういった情報がしっかり書いてあるエンディングノートがあれば、家族ではない第三者の成年後見人でも簡単に知ることができます。

僕は嫌いなものがほとんどありませんが、パクチーだけはほんと勘弁してほしいです。だから誰が見てもわかるように「パクチーが嫌い、特にあの臭いが嫌だ!」としっかり書いておきました。

成年後見制度の基本を理解してから書こう

エンディングノートは一度書いても気持ちが変われば、何度でも内容を書き直すことができます。

ただし、前提となる最低限の知識がないままにエンディングノートを書いているとしたらそれは自分の意思を正しく表示したことにはなりません。

法定後見と任意後見、2つの後見制度の基本的な違いを理解していますか?

法定後見の申立書に後見人の候補者を書く欄がありますが、必ずしも候補者が後見人に選ばれるわけではないことを知っていますか?

法定後見と任意後見の違い

「自分で財産の管理ができなくなった時に管理をお願いしたい人」を書いておく欄があります。

ようするに認知症などで判断能力が低下したときは、誰に成年後見人をお願いしたいかということです。

現在のような本格的な高齢社会では、同じ世代(旦那さんや奥さん、兄弟姉妹など)に成年後見人をお願いすることは、ほとんど現実的ではないと思います。

かといって子供世代はどうかといえば、仕事で忙しくて成年後見人としての仕事にまでなかなか手が回らないというのが現実ではないでしょうか。

僕は家族の負担を考えると、たとえ費用がかかるとしても成年後見人は家族以外の第三者(もちろん信頼できる方に)にお願いしたいと思います。

管理をお願いしたい人についても希望を書いておけばいいわけですが、法定後見の場合は家庭裁判所が成年後見人を選任するため、必ずしも希望どおりになるわけではありません。

ちなみに第三者というのは、司法書士や弁護士、行政書士といった士業が成年後見人の担い手として存在しています。

例えば、公益社団法人成年後見センター・リーガルサポートという成年後見制度の普及と成年後見人の育成・普及のために設立された司法書士の組織があって、約8,400名(2018年12月)が会員になっています。

僕もリーガル・サポートの会員です。研修や会議などで他の会員の方の成年後見業務に取り組む姿勢を垣間見ることがあります。

たとえ報酬が見込めないケースや対応がかなり難しいケースであったとしても成年後見人の業務に真摯に取り組まれている方がとても多いことに毎回驚かされます。 できればそんな人に成年後見人になってもらえたら安心だし、家族も喜んでくれるような気がします。  

また「財産の管理をお願いしたい人について」という欄があります。

同じような項目がありましたねが、それには自分で財産の管理ができないときにという条件がついていました。

この条件があったとしても同じような印象を受けますが、おそらく条件がついているものは「法定後見」についての希望で、条件のないものは「任意後見」についての希望のことだと思います。

法定と任意でいったい何が違うの?と思われる方がほとんどかもしれません。

簡単にいうと、成年後見制度には「法定後見」と「任意後見」の2種類あります。

  • 法定後見|既に判断能力が衰えている方の為に、家庭裁判所が後見人等の適切な保護者を選ぶ制度です
  • 任意後見|元気なうちに、将来、自分の判断能力が衰えた時に備えてあらかじめ保護者(後見人)を選んでおくというものです

財産の管理をお願いしたい人について(任意)は、管理をお願いしたい人の名前をここに書いておけばひと安心というものではなく、元気なうちにその方とどんなことをお願いするのかを公正証書で契約しておく必要があります。

成年後見人(法定後見)の候補者について

先に少し触れましたが、「法定後見」の申立ての書類に成年後見人の候補者を書くことができますが、必ずしも候補者が選ばれるわけではありません。

家族が候補者であっても家族の間に相続トラブルのような紛争がある場合や、候補者が本人の財産を勝手に使っている場合などは、候補者以外の司法書士、弁護士といった第三者が選ばれることがあります。

また、成年後見人の事務を監督する権限がある専門家の後見監督人が選任される場合や後見人が1人ではなく複数選ばれることもあります。

例えば、子供である自分が成年後見人になれば第三者が選ばれる場合と違って成年後見人の報酬はかからないわけですが、自分が選ばれないこともあるということを覚えておいてくださいね。

コラム|介護費用を受け取れる住宅ローン

親の介護が必要になった時に、一時金を受け取れる保障がついた住宅ローンが三菱(東京)UFJ銀行から販売されています。

突然、親の介護をしなければいけなくなったら?

どうしたらいいのかと頭が真っ白になって、会社を辞めないといけないかもしれない・・・と思ってしまう方が多いのではないでしょうか。

そうならないように93日の休業が認められたり、年5日の介護休暇をとれるような法律が整備されています。でもこれは会社員を対象にしたもので、自営業者にはこのような保証はありません。

総務省の調査によると、親などの介護をしながら働いている人は約290万人(2012年)いるそうです。

また介護経験のある人が介護をしていた平均的な期間は4年9ヶ月ということを新聞記事で読みました。4年以上と聞くと93日の休業制度では足りないだろうなと思ってしまいます。

この住宅ローンは、親が「要介護3」以上と認定されると一時金として100万円を受け取れるもので、保険料は親の年齢に応じて上がるようです。

平均的な介護期間が4年以上と聞くと100万円というのは少ないような気もしますが、住宅ローンの返済中ならだいぶ助かりますよね。

相当なニーズがありそうです。

コラム|痩せている男性の方が・・・

「へぇ~、そうなん意外~」と思った新聞記事があったのでご紹介します。

どんな内容かというと、こういうことでした。

高齢になると、痩せている男性の方が太っている男性と比べて、介護が必要になるリスクが約2倍高い

東京都健康長寿医療センター研究所の調査結果

太っている人の方が痩せている人に比べて、普段から膝や腰にかかる負担は大きそうですよね。

メタボリックシンドロームは生活習慣病の予備軍といわれるように、そもそも太っているより痩せている方が健康的なイメージがあったので(あくまでもイメージですが)、なんかしっくりこない。

新聞記事なので概要しかわからないのですが、高齢というのを仮に後期高齢者と考えると、40歳から74歳まではメタボを気にしながら太り過ぎないように生活して、75歳からは痩せすぎないように栄養をしっかりとらなくちゃいけないということのようです。

この調査では「痩せている」、「太っている」という指標はBMIです。

BMIが高い、イコール「メタボ」というわけじゃないのかもしれませんが、なんか釈然としません。

ちなみに、女性の場合は男性のような差はなかったよう。

男性は高齢になると太りすぎないように意識しながらも、必要な栄養が不足しないような食生活を意識しないといけないということみたいですね。

勉強になりました(^^)

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