もしものときに本当に役に立つエンディングノートの作り方

もしもに備えるという目的でエンディングノートを書く上で押さえておきたいポイントがあります。ここを理解してから書かないと効果は期待できません。相続専門司法書士が本当に役に立つエンディングノートを作るために知っておいて欲しいことをお伝えします。

成年後見人としてもしものときを目の当たりにした経験、自分でエンディングノートを書いて感じたこと、義母が遺してくれたエンディングノートを活用した実体験などをもとにまとめました。

成年後見人の経験からわかった本当に大切な3つのこと

成年後見人の仕事はご本人が亡くなるまで続きます。最期のときから大切なことを学ばせてもらいました。エンディングノートの大切さを痛感したのは成年後見人としての経験が原体験になっています。「もしものとき」にあなたとご家族が後悔しないために知っておいて欲しいことをご紹介します。

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コクヨのエンディングノートを真剣に全ページ書いてみた

コクヨのエンディングノート「もしもの時に役立つノート」を最初から最後まで書いていく過程で、相続の専門家としてまた人生の折り返し地点を迎えた一人として感じたこと、相続の専門家として気になったことやエンディングノートにまつわるエピソードなどを綴ったレポートです。

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お義母さんが遺してくれたエンディングノートと大切なもの

エンディングノートの必要性や活用法について発信してきましたが遺されたエンディングノートを手にしたのははじめてでした。葬儀やその後の手続きで義母のエンディングノートはとても役に立っていたと思いますが、途中から義母と話をしながらエンディングノートを書いていた相方にエンディングノートに対する想いを聞いてみました。

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本当に役に立つエンディングノートを作るための9箇条

  • ①書きにくいからこそ医療と介護のページから書こう
  • ②エンディングノートは本音で書こう
  • ③必要最小限の言葉の意味を理解してから書こう
  • ④正確な情報を元に書こう
  • ⑤個人情報は書きすぎない
  • ⑥遺言書の有無や保管場所を書いておこう
  • ⑦見た目や形式にこだわらない
  • ⑧定期的に見直して情報の鮮度を保とう
  • ⑨エンディングノートを書くことはスタートです

①書きにくいからこそ医療と介護のページから書こう

人生の締めくくりに!と意気込むと書いておきたいことが多くなるのは仕方がありませんが、エンディングノートは全部のページを書こうとするとまず書けません。エンディングノートは書く項目が多いので、全体像を目の当たりにしてこんなにあるんだと引いてしまって、氏名・住所、生年月日あたりで止まってしまう人が多いようです(苦笑)

エンディングノートが活躍するのは書いた人の緊急時や亡くなった後です。

胃ろうをして良かったのか?しない方が良かったのか?と、亡くなった後まで悩み・葛藤されているご家族を成年後見人として見てきました。もしエンディングノートに胃ろうについてのお母様の希望が書いてあれば、どれだけご家族の救いになっただろうと思いました。

エンディングノートを書くことで、もしものときの家族の負担を少しでも軽くしたいなら負担の大きな項目から書き始めましょう。もしものときに家族が最も知りたい、かつ本人にしかわからないところからです。優先順位が高いのは医療や介護のページ、中でも胃ろうをして欲しいのか?など延命治療の希望から書き始めるのをおすすめします。

②エンディングノートは本音で書こう

「認知症や寝たきりになった時、介護をお願いしたい人や場所は?」といった介護の希望を書くページがエンディングノートにはあります。

  • 自宅で家族に介護をお願いしたい
  • 自宅で、プロのヘルパーなどに手伝ってもらいながら家族と過ごしたい
  • 介護施設や病院に入れて欲しい
  • 家族・親族の判断に任せる

家族に負担をかけたくないと考えて家族・親族の判断に任せるを選びたくなる気持ちはよくわかります。でも本人の希望・気持ちがわからなければ、

  • お父さんは自宅で介護をしてほしいはず
  • お父さんは施設で過ごしたいはず etc

お父さんはこうして欲しいはずとそれぞれが自分勝手に言い出します。当たり前ですが家族といえども価値観が違うので介護の方針をめぐって家族が揉めてしまうことがあります。さらに遺産分けにまでその影響が及ぶこともあります。安易に家族・親族の判断に任せるを選ぶと家族が揉める火種になります。

もしものときに家族が知りたいのは、こうして欲しいというあなたの本音です。エンディングノートにはあなたの本音を書いてください。もちろん、エンディングノートを書いておくよりも本音を直接伝えておいた方がよいのは間違いありません。

③必要最小限の言葉の意味を理解してから書こう

エンディングノートは、一度書いても気持ちが変われば何度でも内容を書き直すことができます。ただし前提となる最低限の知識がないままにエンディングノートを書いているとしたら、それは自分の意思を正しく表したことにはなりません。

エンディングノートの医療のページには馴染みのない単語が沢山出てきますが、なんとなく言葉のイメージだけで記入してしまっていませんか?

  • リビングウイル
  • 胃ろう
  • 尊厳死 etc

リビングウイルの意味を知っていますか?

エンディングノートにはリビングウイル、尊厳死などのあまり馴染みのない言葉が沢山出てきます。言葉のイメージだけでなんとなく記入してしまっていませんか?リビングウイルとは?日本尊厳死協会の会費や入会方法について簡潔にまとめました。

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また成年後見はどうでしょう?任意後見と法定後見の違いは理解できていますか?本当に役に立つエンディングノートを作るためには必要最小限の言葉の意味を理解しておく必要があります。

成年後見制度の基本を理解しよう

法定後見と任意後見、2つの後見制度の基本的な違いを理解していますか?違いを理解しないままでエンディングノートを書いたとしても自分の意思を正しく表示したことにはなりません。また成年後見制度を利用するにはエンディングノートを書いておくだけでは足りません。

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④正確な情報を元に書こう

せっかくエンディングノートを書くんです。正確な情報を書いておくのは当然ですよね。資産のページは通帳や証券を手元に準備して書きましょう。こういった書類を準備する過程でほとんど使っていない口座に気づいて解約したり、整理をするきっかけになります。

中でも複数の不動産をお持ちの方は権利証(登記識別情報)や納税通知書、登記事項証明書を準備しましょう。納税通知書だけではなく登記事項証明書もです。自宅ならどう書いても家族には伝わると思いますが、自宅以外の不動産、特に相続した田舎の土地など家族の中で自分しか把握していない不動産は所在・地番を正確に書いておきましょう。

⑤個人情報は書きすぎない

空欄を正確な情報で埋めながら書き進めていくのは爽快な気分です。情報をまとめていくと、このエンディングノートを見ればすべてわかるようにしておきたいという欲が沸いてきます。具体的には暗証番号やパスワードもまとめて書いておいたら便利だろうと思ってしまうわけです。

資産のページはあまりに詳しく書きすぎるとエンディングノートが個人情報の塊になってしまうので危険です。家族が口座や不動産の存在を漏れなく把握できる程度の情報にとどめておくのが無難です。

詳しく書きすぎないようにしつつも、自分にしかわからないことを書いておくことも大切です。

  • 借金の保証人になっている
  • 前婚での子供がいる etc

他にも色々あると思いますが、保証人になっているかどうかは自分しか知らないことの代表格かもしれません。前婚で子供がいることは保証人とは違って資産の情報と関連性が低いと思うかもしれませんが、こと相続に関してはとても重要です。

前もってわかっているのと知らないのでは対応は大きく変わってきます。直接話しておくことができればそれにこしたことはありませんが、伝えにくければエンディングノートに書いておくのも1つの方法でしょう。

⑥遺言書の有無や保管場所を書いておこう

エンディングノートに遺産分けの希望を書いたところで「遺言書」としての効力はありません。にもかかわらず「遺言書について」というページがあるのは、遺言書を作成しているのか?保管場所は?を伝えるためです。遺言書を書いていない人が多いので「作成していない」にチェックして終わることがほとんどかもしれませんが、それじゃもったいない。

僕は自分の財産を誰にあげるのかについて自分で確実に決めておきたい人が遺言書を書いておけばいいと考えています。とはいうものの遺言書を書いておかないとトラブルになる可能性が高いケースがあります。エンディングノート(家族や親族のページ)を書きながら、まずはこの2点を把握しておきましょう。

  • 自分の相続人は誰なのか?
  • 自分は誰の相続人になるのか?

これを把握した上で、遺言書を作るかどうか?相続人の立場なら遺言書を書いてもらっておく必要はないのか?について早めに考えておくことが大切です。

【相続クイズ】遺言書を書いておいた方がよい人は?

取り上げた6つのケースは問題が起こる可能性が高いというだけで、遺言書を書いておかなくても問題なく手続きができる場合がほとんどかもしれません。大事なことは思い込みで判断しないこと、考えることを面倒くさがらないこと。正しい知識をもとに遺言書を書くかどうかを決めることです。

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⑦見た目や形式にこだわらない

エンディングノートを書くぞ!と意気込んで書かなくても必要なときに書き留めておくノートがあって、結果的にエンディングノートに書いておきたい情報がそこに整理されていくのであれば、それが普通のノートでもまったく問題ありません。エンディングノートの見た目なんてどうでもいいということ。大事なのはその中身です。

見た目は普通のノート。でも中身は完璧なエンディングノートでした。

親戚の葬儀のときに父親が冠婚葬祭についてメモしていたノートを見せてくれました。見た目は100均で売っているような普通のノートでしたが、パラパラと見せてくれた中身は完璧すぎるエンディングノートでした。見た目なんてどうでもいい話で大切なのはやっぱり中身です。

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また、エンディングノートというネーミングなので当たり前のように紙媒体をイメージしますが、ネットバンキングやSNSがライフラインになっている現在では、ノート(紙)だけで完結させるのは少し無理があるかもしれません。ノートだから手書きをするものと思いこんで、それが書けない理由になっているとしたらもったいないです。必要な時に必要な情報が確認できるならパソコンなどを活用しても問題ありません。

⑧定期的に見直して情報の鮮度を保とう

体調や心境、交友関係などすべてが時間とともに少しずつ変化していくものです。エンディングノートに限ったことではありませんが、一度書いたところで時間とともに書いた内容はどんどん古くなっていきます。だから定期的に見直して情報を更新しましょう。

自宅の防災用品の点検をしたときに古くなっていた非常食や防災グッズを買い直したのですが、賞味期限・使用期限が5年というものが多かったですね。毎年、見直すのがベストだとしても忘れてしまって2,3年経ってしまう人が多いのでしょう。それでも期限が切れてしまわないように、余裕を持たせて5年にしているんだろうと実体験として感じました。

エンディングノートも定期的に見直さないと意味がありません。理想を言えば年に1度、誕生日や年末年始に見直すのが良いタイミングだと思います。最近は出さないという方も増えてきましたが、年賀状のリストなら毎年見直すだろうと思うので、緊急時の連絡先とあわせて12月に見直すのはいかがでしょう?

⑨エンディングノートを書くことはスタートです

書いておきたいと思ってもほとんどの人が書けていないのがエンディングノートの現実です。だから、もし書くことができたらそこで満足するのは本当にもったいないです。書くだけで十分なんてことはほとんどないからです。

亡くなった後の手続きのように、入院や施設の入所手続きなど必要なときには自分ではできないこともありますが、葬儀やお墓の準備は前もって契約しておけるので自分の思い通りに準備しておくことができます。考え方次第ではエンディングノートに書いておくよりも自分でやってしまう方が早いし確実です。

書き終えることがエンディングノートのゴールではありません。書いておきたいほど気になっていることを実現するために、エンディングノートを書くことをきっかけにして行動を起こしましょう。エンディングノートを書くことはスタートです。