素朴な疑問に効くコラム

コラム


  • 相続はチャンス!?
  • 教育資金贈与信託の利用がすごいことに!
  • 相続が自分事になってますか?
  • “秘密”にしたいのは何故ですか?
  • 株の相続を忘れていませんか? 10月1日から「株主リスト」が必要になりました
  • 組織の断捨離!?取締役は一人でもいいんです!
  • 判例が変わって“預貯金も”遺産分割の対象になりました!
  • 「空き家問題の救世主になるのか!? 法定相続情報証明制度」
  • 捨てたい負動産
  • 引継いだ家業はプラスの財産かマイナスの財産か!?
  • 実家が空き家になってしまう理由

相続はチャンス!?

相続アドバイザー養成講座で、「相続はチャンス」というフレーズを耳にした時に、「なにが?」「なんで?」と思いましたが、 講師の説明を聞いていて納得しました。

財産の大部分が現金なら、相続人間で分けるのも簡単だし、相続税も現金で一括納付できます。

ですが、多額の相続税が課税される資産家の方というのは、財産に不動産の占める割合が非常に高く、現金と違って、遺産分割も不動産の場合は手間がかかることや不動産を売却して、納付期限(10ヶ月)までに納税資金を確保するには、相場よりかなり安く売らなければならないないことも多いのではないでしょうか。

僕のような庶民感覚では、タイミングを見ながら不動産を売って現金に換えておけばいいんじゃないのと簡単に考えてしまいますが、なんでもないときに、土地を売ると、ご近所や一族からどうなふうに思われるか分からないし、先祖代々受け継いできた土地を自分の代で手放したくないという思いもあって資産家の方には、土地を売りたくてもなかなか売りにくい事情があるようです。

ところが、相続がきっかけであれば、「相続税を支払うために土地を手放すしかなかった」と理由がハッキリしているので、まわりにも納得してもらえるし、堂々と土地が売れるとのこと。

まわりに気兼ねなく売れるという他にも、相続税申告期限から3年以内に売却するのであれば、「相続税の取得費加算の特例」といって、相続で取得した土地(建物)に対する相続税の金額を取得費に加えることができ、売却時の譲渡益に対する所得税、住民税を抑えることが出来るメリットもあります。

土地持ちの資産家の方にとって、相続は”土地を売る”チャンスであり、土地を売って、財産のうち現金の割合を増やしておけば、将来の遺産分割対策にもなるし、納税資金対策にもなるというお話でした。

教育資金贈与信託の利用がすごいことに!

信託協会のまとめによると「教育資金贈与信託」の贈与額が6月末までに5千億円を超えたという記事を読みました。

やっぱり、あるところにはあるものですね。

相続税のかからない世帯で利用が多かったことが、贈与額が大幅に増える要因だったとのことです。

教育資金一括贈与の非課税制度を利用するには、孫名義の専用口座を作り、お金を引き出すには授業料等の領収書を持っていってという手続きが必要なので、孫は教育資金以外に自由にお金を使うことができません(当然に孫の親である子供も)

だから、あげる方にしてみると何に使われたかわからないままに無くなってしまうことがなく安心してあげることができるという事情があるのかもしれません。

ちなみに教育費というのは、授業料以外にも教材費や留学費用(渡航費は×)も対象になります。それから500万円以内であれば、塾や習い事の費用、通信教育費、キャンプなどの体験活動費もオーケーなんだそうです。

また、30歳までに使いきれないと残額に贈与税が課税されるというルールもあります。

先ほどの総額(5,193億円)と件数(76,851件)から贈与の平均額を計算してみると約680万円。相続税対策なら最大の1,500万まで利用することが多いように思いますが、このことからも相続税対策ばかりじゃないことが伺えますね。

うちの場合はとりあえず今年買ったキャンプ用品代に援助して欲しい(笑)

相続が自分事になってますか?

相続税の改正(基礎控除の縮小)から1年が過ぎましたが、巷では相続“税”対策の話題にはことかかないですね。新聞、雑誌にドラマまで、よく目にするのは生命保険の非課税枠の活用、賃貸マンションの建築・・・、さらには養子縁組まで。

養子縁組というのは、相続税の基礎控除には3,000万円の定額分と相続人あたり600万円という控除枠があるので、養子縁組をして相続人の数を増やすことで基礎控除額を増やして相続税を減額する対策のことです。

孫を養子にされているのは見かけますが、ある記事では長男の妻を養子にする節税対策が紹介されていました。

『節税』という点にフォーカスすれば有力な対策かもしれませんが、僕は税務の専門家ではないので、どうしてもメリットよりもリスクの方が気になってしまいます。

養子縁組は単に節税だけにとどまらない怖さがあるのが難しいところです。孫はともかく、長男の妻というのは被相続人からすれば血縁上は他人ですよね。何を言いたいのかというと、長男夫婦の仲が良いということが前提になるとは思いますが、悪くなったらどうするんでしょうか?

相続人間で遺産分割の話し合いをしているのか、離婚の財産分与の話しをしているのか分からなくなりそうですよね。

「そうなったら離縁すればいいんじゃないの?」
「そんな先のことまで考えていたら相続税対策なんてできないよ!」

こういった反論が出そうですね。

同居して尽くしてくれたお嫁さんにも財産をあげたいから養子縁組をする、こういう思いが先にあって、養子縁組した結果が『節税』にもなるというのが理想じゃないでしょうか。

これまでは相続って自分事じゃなくて、どこか他人事な方が多かったんじゃないかなと感じます。だから突然直面すると慌ててしまう。相続税がこれほど話題になるのは相続税の改正で、自分事になり始めた方が多いからかもしれません。

でも相続税がかかると全ての財産が取られてしまうような誤解をされて、心配そうに合同相談会に相談に来られる方がおられます。税理士さんの説明で相続税の計算方法を理解されることで誤解が解消され安心して帰られるのですが、世間全体で相続対策、相続対策って不安を煽るのはどうかなと思ってしまいます。

必要以上に相続、相続と言い過ぎるのも良くないですねと、自戒を込めて書いておきます。

“秘密”にしたいのは何故ですか?

あるセミナーで、「秘密証書遺言というのは、どんなものなんですか?」というご質問をいただきました。

「秘密証書遺言というのは、自筆証書遺言と公正証書遺言の中間的なもので・・・遺言を作った事実はきちんと残しておきたいけれど、遺言の内容自体は秘密にしておきたい時に作るものです」とお答えしたところ・・・

「そうなんですね」と言っていただいたものの、いまひとつ腑に落ちていないご様子。その場はそれで終わったのですが、僕も不完全燃焼な感じが否めなかったので、この機会に整理してみようと思った次第です。

自筆証書遺言との違いは、秘密証書遺言は自書しなくても、他人に書いてもらってもプリントしたものでも良いという点。

また、証人の立会いの元、公証役場で作成するのは公正証書遺言と同じですが、公証役場に残るのは遺言を作成したという事実のみで、遺言の内容までは記録保管されません。それゆえに、遺言を紛失してしまう可能性もあるので、亡くなった後でその遺言の内容が確実に実現されるのかどうかは不安が残ります。

秘密証書遺言は、公証人は遺言の存在のみを確認するだけで遺言の内容そのものを確認しないため、自分ひとりで作った遺言がはたして法律的に有効なものなのか?亡くなるまでわかりません。

そもそも「秘密」という点に着目するなら、自筆証書遺言であれば自分ひとりで誰にも知られずに作れるわけで、秘密にしたいという部分だけで考えれば自筆証書遺言に軍配が上ります。

ちなみに、どのぐらい秘密証書遺言が利用されているのかというと・・・年間100件前後だそう。利用されるのは非常にレアなケースだろうと推測できますが、僕も回答しながら、こんな時にというイメージが湧かなかったので、もやもやが残ってしまったというわけです。

もし、こんな事情があるから秘密証書遺言を作りたい、こんな理由で作成しましたという方がいらっしゃいましたら、後学のためにお話を聞かせていただければ幸いです。

株の相続を忘れていませんか? 10月1日から「株主リスト」が必要になりました

2016年10月1日から株式会社の役員変更の登記申請に株主のリストを添付しなければいけなくなりました。役員変更に限らず株主総会の決議が必要(株主全員の同意が必要)な登記を申請する場合には上場・非上場を問わず全ての株式会社が行わなければならず、実質は手続きにひと手間増えることになります。

相続というと不動産の手続きばかりに目がいきがちですが、今回の改正は相続財産に株式が含まれていれば関わってくる内容です。会社を経営されている方、特に家族で会社を経営されている場合はどういった改正なのかを正確に把握しておく必要があります。

株主リストとはどういったもので、具体的にどんな内容を記載しなければいけないのか株主総会の決議が必要な場合を例に見ていきましょう。


はじめに、株主リストに具体的に何を書かなければいけないかというと・・・

株主の

  • 「氏名又は名称」
  • 「住所」
  • 「当該株主のそれぞれが有する株式数及び議決権数」
  • 「当該株主それぞれが有する議決権に係る当該割合」です。

ただし記載しなければいけない株主は次のうちいずれか少ない数を記載すればよいとされているので、必ずしも株主全員を記載しなければいけないわけではありません。

  1. 10名
  2. その有する議決権の数の割合をその割合の多い順に順次加算し,その加算した割合が3分の2に達するまでの人数

この点を気にされる方が多いような気がしますが、議案について誰が賛成・反対だったといった内容を記載する必要はありません。というのも改正の背景には株主総会議事録などを偽造して虚偽の役員の変更登記を行い役員になりすますといった犯罪が後を絶たなかったので、株主総会議事録が偽造されて虚偽の登記がされることを防止するため株主リストの添付が要求されることになったからです。

そういったことから誰が賛成又は反対したといったところまでの記載は要求されていないというわけです。

また、株主の住所は現在の住所ではなく会社が把握している住所を記載すれば足りるようです。一方で株主に相続が発生している場合はそのまま亡くなった株主を書けばいいのではなく、相続人から会社に株主が死亡した旨の届け出があった場合、さらに相続人代表として議決権を行使する者の届出があった場合というように状況に応じて、「株主(被相続人)と法定相続人全員を併記する」、「議決権行使者」などを記載する必要があります。もちろんこれは相続の手続きが完了していない場合です。

ちなみに過去に株主総会で決議をしていたものの役員変更の登記申請をしていなかったようなケースについても10月1日以降に登記申請をする場合には株主リストを添付しなければいけません。なお添付する株主リストは決議をした当時の株主に基づくリストになります。

改正のタイミングで司法書士会からこういったポスターが送られてきたので株主リストを作成する上で拠り所になる株主名簿をしっかり作っていないところも実際には多いような気がします。

株主名簿は作っていますか?

ただし、法に則って株主総会が適切に開催されてその議事録が作成されていながら株主リストが作成できないという状況は想定しにくいと法務省は考えているようです。何年も前の当時の株主を把握できていないことはありえない話ではないと思いますが、その場合は過去の確定申告書を参考にすることが有効のようですね。

株主リストに記載するのは必ずしも株主全員が対象というわけではありませんが、あの人は亡くなったから株は誰が相続したのだろうといったことや株の譲渡の状況を把握しておくこと、会社を適法に経営する上で当然のこととは思いますが、今後は登記申請の場面でも不可欠になります。

個人の相続という視点では、所有している株(特に非上場)があれば相続人にわかるように整理しておくことや相続が発生したときには株の相続手続きを怠らないことが今後はより一層求められることになるでしょう。

株主のリストについては実際に運用される中で記載方法のルールや課題が明らかになってくることだろうと思います。

組織の断捨離!?取締役は一人でもいいんです!

会長が亡くなったことがきっかけで私が所属していたある会が解散することになりました。副会長や事務局もいるそれなりに大きな会だったので驚きましたが、実情は会長ひとりで運営されていたのかもしれません。

会長から後任を託された方もいらっしゃったようですが、もしかすると新しい体制での副会長や事務局のなり手が見つからなかったのでしょうか。詳細はわかりませんがなんとも寂しいことです。

時期を同じくして会社を経営されている方から取締役である父親が亡くなったけれど取締役になってくれる人が見つからない。さらに監査役に就任していただいていた知人からも病気を理由に辞任したいと言われて困っているという話を伺いました。

なんだか会の解散の話と似ているなと感じました。その方は株式会社には取締役が3人必要で加えて監査役も必要だと思い込んでいたようですが実はそんなことはありません。


平成18年5月1日施行の会社法により非公開会社(株式の譲渡制限がある会社)の場合には、原則として取締役会を設置する必要がなくなりました。

その社長もここ最近新しく作った会社の場合は取締役が一人でもいいということはご存知だったようです。ただし何十年も前に設立している自分の会社の場合はそれができるのかどうか?またできるとしても親から引き継いだ会社の組織を変えることへの迷いもあったようでした。

現在は取締役会を設置するかしないかは自由です。ただし取締役会を廃止することに伴いメリット・デメリットがあることも事実ですのでその点について簡単に整理してみます。

取締役会を廃止することによるメリット

  • 取締役を1人にすることができる。監査役も廃止すれば役員報酬の負担を大きく減らすことができる。
  • 定時株主総会の招集通知に計算書類等の提供が不要になる
  • 株主総会の招集通知の期間を1週間未満にすることができる

取締役会を廃止することによるデメリット

  • 取締役会で決議ができた事項についても原則として株主総会での決議が必要になる
  • 取締役会設置会社と比べて体外的な信用度が低下するため融資や取引において不利になる恐れがある
  • 株式公開をするときには改めて取締役会を設置する必要がある

取締役会があっても実際のところは代表取締役ひとりで切り盛りしている会社も多いのではないでしょうか?仮に株主の数が多ければ何か決議をしようとするたびに株主総会を開催しなければいけないのではかなりの負担になりますが、株主が代表取締役のみであれば手続き上も迅速に会社経営をすることができるようになります。

これからの日本は2030年には年間160万人が亡くなる多死社会を迎えるといわれています。人が亡くなれば大なり小なり必ず起こるのが相続の問題。取締役会のある会社で年老いたご両親や友人・知人さらには先代の繋がりで役員をお願いしている方がいるということはよくある話です。

財産の相続対策とは違い『人』が主になることなので話を切り出しにくいのも十分理解できるのですが、例えば現在の取締役が亡くなったタイミングで考えようではなく、機動的に会社や会を運営していくためには実情に合わせて組織(機関)・体制を見直しておくこと、さらには余裕を持って準備しておくことが大切ではないでしょうか。

判例が変わって“預貯金も”遺産分割の対象になりました!

「預貯金も遺産分割の対象」

新聞等でこんな見出しを目にされた方も多いのではないでしょうか?どう思われましたか?一般的な感覚としてはどうなんでしょうね?

「遺産って預金しかないんだから当然、遺産分割をするよね?」、「え!今までは対象じゃなかったの?」という感覚じゃないでしょうか。

過去の最高裁判決で「預貯金などの分けることができる債権(預金債権)は相続分に応じて分割される」とされていたため、実は預貯金は遺産分割の対象ではなかったというわけです。

そこで遺産分割協議が完了する前でも銀行に自分の相続分に応じた預金を引き出したいといえば応じてもらえたということなんです。ただし、そうはいっても相続分と異なる遺言が存在する可能性もあるため実際のところはすんなり応じてくれる金融機関は少なかったのではないかと思いますが、どうなんでしょうね?

新聞記事では今回の裁判は相続人のうちの一人がもう一人の相続人に預貯金も遺産分割の対象となるということを争ったという内容で、どうして最高裁までと思っていましたが判決を読むとその理由が良くわかりました。

預貯金を遺産分割の対象にするかしないかで相続できる金額が約2,000万円変わってくるからなんです。

どんなケースだったのか?

養子縁組、代襲相続が絡んでいるようですが相続人は被相続人(亡くなった方)からみると甥姪にあたる二人です。

なぜ約2,000万円の差が出てしまうのかというと仮に相続人をAさん、もう一人の相続人をBさんとすると、Bさん(厳密には被相続人よりも先に亡くなったBさんの親)は生前に贈与(約5,500万円)を受けていたので、約4,000万円の預貯金が遺産分割の対象とならず法定相続分通りとなってしまうと、Aさんの取り分は約2,000万円、Bさんは約7,500(5,500+2,000)万円となってしまいます。

もし預貯金も遺産分割の対象となれば、生前に贈与されていた約5,500万円(特別受益)について相続財産に持ち戻すという考え方ができるので生前贈与を含めた全体を遺産分割の対象とするとAさんは約4,000万円の預貯金全てを相続できる可能性があるケースだったようです。

仮に相続財産が預貯金ではなく不動産であれば遺産分割の対象になるので、どうして預貯金は対象にならなかったのか?というのが一般的な感覚じゃないでしょうか。

「預貯金も遺産分割の対象になる」ということにとどまらずに、例えば長男に多めに財産を遺してあげたいと思って生前に贈与をしていても「特別受益の持ち戻し」という相続人間の不公平感をなくすためのルールがあるということを頭に入れておく必要がありそうですね(2017年2月)

「空き家問題の救世主になるのか!? 法定相続情報証明制度」

司法書士として見逃せない衝撃的な内容の記事を新聞で見つけました。

最後の登記から50年以上が2割

これは全国の約10万筆の土地を調査した結果、最後の登記から50年以上が経過し、所有者が不明になっている可能性がある土地の割合が2割を超えていたというものです。ちなみに最後の登記から70年以上たった割合は9.7%、90年以上は5.6%だったそうです。

50年以上登記をしていなければ相続が発生して10~20年経過している可能性が高く、さらに相続が発生して相続人が増えてしまって、手続きを進めるのが簡単ではなくなっている可能性の高い土地が2割以上あることになります。

相続手続きといえば、まずは預貯金の解約手続きをして、それが終わってから不動産という流れが一般的じゃないでしょうか。預貯金は手続きをすれば現金が手元に入りますが不動産の場合は名義を変えたところで現金が手に入るわけじゃないので後回しになるのは当然ですよね。

よくあるのが、亡くなった父親名義の自宅の名義変更を母親が亡くなった時にまとめて子供に変更するというもの。費用や手間を考えれば売却の予定がなければこの方法も理に叶っているのかもしれません。

売却する予定がないなど名義を変更する必要がなかったのをいいことに長い間、名義変更をほったらかしにしてしまった結果、相続人が増えてしまって手続きができなくなったというのが話題の空き家問題のひとつの原因になっているのは間違いないでしょう。

これから先、不動産が余っていくとますます売れない不動産が増える、売れない不動産の名義変更を先送りにする結果、塩漬けされて空き家になる“負動産”が確実に増えていくと思われます。

こうした状況の改善にひと役買ってくれそうな新しい制度が平成29年5月29日からスタートしました。相続人の関係図を法務省が証明してくれる「法定相続情報証明制度」というものです。

法定相続情報証明制度とは?

相続人を把握するために必要な戸籍をすべて取得して相続人の関係図を作って法務省に提出すると、法務省が内容を確認した上で公的な証明書として法定相続情報一覧図を発行してくれるという制度で不動産、預貯金、株式といった各相続手続きにこの証明書を提出することで、個別に戸籍を提出する必要がなくなるため、相続人の負担の軽減が期待されています。

この制度が浸透すれば、手続きのやり易さからすると

  1. ①法定相続情報証明制度(法務局)
  2. ②相続による不動産の名義変更(法務局)
  3. ③相続による預貯金の手続き(銀行等金融機関)

という相続手続きの流れを作ることができるかもしれません。

はじめに①の手続きを法務局でするなら一緒に②の不動産の名義変も済ませておこうというイメージですね。この流れを作ることができれば、名義変更をしないままに残されてしまう不動産を減らすことができるんじゃないかと期待されているわけです。

とはいえ現時点では「法定相続情報証明制度」で発行される法定相続情報一覧図は法務局でしか利用することができません。残念ながらまだ金融機関でも税務署でも使えないんですね。

現時点でどんなメリットがあるのかというと、全国の法務局で使えるので不動産を各地に所有している場合は法定相続情報一覧図を利用することで各地の法務局に戸籍を添付しなくても申請できるようになります。

法務局でしか使えなければ期待している効果はおそらく見込めないので、できるだけ早めに金融機関でも利用できるようになるといいですね(2017年6月)

捨てたい負動産

不動産と聞くとまっさきに「不動産王」「不労所得」という言葉が頭に浮んで、「憧れ」や「羨望」などついついそんな感情を持ってしまいがちですが、みなさんはそんなことはありませんか?

不動産に対してそういったイメージを待たれる方もいると思いますが、実際には貸すことも売ることもできないのに固定資産税だけがかかっているような不動産もあります。

誰もが羨むどころか、誰も欲しがらないような不動産もあるわけで、最近では“負”動産なんていう言葉を目にするようになりました。

司法書士を対象にしたアンケートによると

  • 5割の司法書士がいらなくなった土地を自治体に寄付したいという相談を受けたことがある
  • 不動産の相続放棄について相談を受けた司法書士は4割

という結果からわかるように、“負”動産を持て余している現実が垣間見えてきます。

相談される方の中には、仮に土地を捨てることができるなら捨ててしまいたいという方もいらっしゃると思います。

現実に捨てることはできないので、名義変更や管理をせずに放置されてしまう土地がたくさんあって「所有者不明の土地が○○よりも広い」という調査結果が出ました。

さて○○には何が入るでしょう?

所有者不明土地問題研究会の推計によると、所有者が分からなくなっている可能性のある土地が約410万ヘクタールあって、なんと九州の面積よりも広いという結果が出たようです。

誰も住まなくなった田舎にある実家や先祖代々受け継いだ山林が名義変更をされずに放置されているのかもしれませんね。

先の司法書士へのアンケート調査によると「一部の不動産について相続登記をしないよう依頼された司法書士が4割」という回答があり、相続登記をしない理由の中には相続人が多数になって

  • 遺産分割協議が困難
  • 相続人を探す費用がかかる

という理由が多かったようです。

確かに相続手続きを放置していた場合、相続人を把握するために大量に戸籍を取得することになったり、その戸籍を読み解くのはかなり大変なので、費用が高額になってしまうのには致し方ない部分があります。

余談ですがAIの普及で将来なくなる仕事が話題になったりして危機感が煽られていますが、正直なところAIが戸籍を読み解いて相続人を調べてくれたら司法書士としてはすごく楽になります。

AIを活用すれば、役所に死亡届を出しに行けば誰が相続人なのか一覧で出してくれることもいずれは可能になるかもしれません。AIに仕事を奪われると考えると前向きな発想は浮ばないけれど、どうしようもなく面倒なことをAIに任せることができると思えば明るい未来が待っているような気がします。

相続人が誰かという情報を法務局や金融機関もオンラインで共有できれば、相続の名義変更や預金の払い戻し請求がネットで簡単に出来るようになったりするかもしれません。

既に始まった法定相続情報証明制度はその前身と考えることもできそうですね。いろいろ考えると相続の名義変更をするのに司法書士はいらなくなるかもしれませんね(苦笑)

ところで、良いか悪いかはともかく、誰も住んでいないような土地であれば放置できるとしても、現実に誰かが住んでいるにも関わらず名義変更がされず長い間そのままになってしまう場合もあります。

  • 建物が老朽化したので建て替えたいが土地の名義変更ができないためにローンが組めない
  • 誰も住まなくなったので売却したいが相続人が多すぎて手続きが進められない

といったご相談もあるので、単なる自らの怠慢で塩漬けしてしまい“負”動産にするようなことはないよう気をつけないといけませんね。

引継いだ家業はプラスの財産かマイナスの財産か!?

家業を継いだものの赤字続きだから今の商売をやめて新しい商売を始めようか、そんな選択を迫られることもこのご時世では珍しくありませんよね。例えば祖父の代から印刷業を営まれていたXさんが多死社会の到来を見込んで遺品整理業を始めることにしたようなケースをイメージしてみてください。

印刷業と遺品整理では全くの畑違いなので、そもそも遺品整理業のノウハウがなければ難しいというのは容易に想像できます。それに遺品整理の会社の名前が「○○印刷株式会社」じゃピンとこない。それに心機一転、会社名(商号)を変えたいというニーズもあるでしょう。

また不要な物を処分するだけではなく、買い取りをするなら古物商の免許を取らないといけないし、その前提として「中古○○の売買」を会社の目的に加えるなど登記を変更しておかなければいけないということもでてきます。

中にはこれを機に取締役会や監査役も廃止して役員は自分ひとりで再出発したいといったニーズもあると思います。新規事業を始めようとすると会社の登記だけをみてもそのままでは始めることが難しい場合がほとんどかもしれません。

登記の内容をいろいろ変更する手間を考えていたらイチから新しい会社を作った方が早いんじゃないの?なんて思ってしまいますが、既に株式会社がある場合で新規事業を行うケースについて登記を中心とした手続きをまとめてみました。


株式会社は資本金1円から作ることができますが、登録免許税や定款認証の費用などで最低でも20万円以上かかります。一方で既にある会社の取締役会や監査役を廃止すること、商号や目的を変更する場合も変更する内容に応じて登録免許税が必要になります。

既にある会社の資本金がそれなりに大きくて、もし会社の見栄えを気にするなら既にある会社を活用するという選択肢も十分にあります。中には引継いだ会社がそのまま新規事業を行った方が税務上のメリットが大きいケースもあるでしょう。

会社をたたむつもりだったので

しばらく事業をやっていなかったために登記も長い間ほったらかしだったり、むしろ会社をたたもうと解散の決議をしてその登記がされている場合があるかもしれません。

解散の決議をしていたらその会社で新規事業を行うことはできないと思われるかもしれませんが、そんなことはありません。解散の登記がされていても清算手続きが完了していなければ会社を継続することも可能です。

まずは既にある会社の登記内容や会社の状況を正確に把握した上で、新規で会社を作る場合と既にある会社の登記を整える場合の手間と費用を比べて判断するのが賢明と言えるでしょう。

相続した資産価値のない土地や建物を“負”動産といったりするようですが、家業も同じようなことが言えそうですね。ただし使い方によってはうまく活用できる場合もありそうです。

銀行の本業が赤字になる時代がやってくる!?

余談ですが口座開設をしてくれる若者を獲得するために地方銀行がカフェをオープンしたという新聞記事を読んでいると、さらっとこんなことが書いてあって驚きました。

「金融庁は25年3月期には全国の地銀の6割が本業で赤字になると試算している」

あくまでもさらっと書いてあったので、「どこまでが本業なのか?」「どういった条件での試算なのか?」詳細はわかりませんが銀行が本業で赤字になる時代が来るなんてこと想像したことがありますか?ないですよね?

といいながらATMなどの手数料が売上のほとんどを占めるセブン銀行があるくらいなので、いわれてみれば納得できる試算結果です。

銀行でさえ事業の見直し、方向転換を迫られる時代であれば中小企業の場合その必要性は銀行の比ではないはず。

・・・と他人事のようなことを言っていますが、事業の方向転換を迫られているのは僕ら士業の方が切実な気がする今日この頃。ネットに情報が溢れている時代なので登記や相続など手数料を払って司法書士に依頼せずに自分で調べてやってみようという方が確実に増えているように感じます。

実家が空き家になってしまう理由

実家の片づけというのは家の中の荷物の整理整頓的な片づけにとどまらず、実家に誰も住まない場合は・・・

  • 残された親の荷物の整理
  • 相続
  • 空き家管理
  • 売却 etc

売却までの一連の手続き全てを「実家の片づけ」として紹介されていると物が多すぎて家の中が片付かないなんていうのは、初歩的な課題だということを思い知らされます。

一連の手続きの中に「空き家管理」がありますが、日本に空き家がどのくらいあるのかご存知でしょうか?

なんと!約820万戸もの空き家があるそうです!

総住宅に占める割合は13.5%!(2013年・住宅・土地統計調査/総務省)

こんなに空き家があるなら不動産の価格が下がってもおかしくないわけですが、そこは需要と供給にギャップがあるわけで・・・「人口の減少」と「空き家の増加」というのは相関するイメージがあるので、やはり地方での空き家率が高いのは想像できます。

東洋経済の記事では空き家の増加は地方だけの問題ではなく、今後は首都圏近郊の都市部でも深刻化するとも。団塊の世代が80代を迎える頃には、なんと全体の空き家率が23.7%になるという予測もあるようです。15年後には空き家だらけの住宅地、マンションがあちこちに出現するということですかね。。

また記事には本誌独自の調査結果ということで、次のようなデータが示されていました。

実家の片づけ後に

  • 売却した人 38%
  • 賃貸に出した人 3%

売却、賃貸以外は「そのまま所有」と書かれているので、半数以上は売却や賃貸をせず、有効に活用できないままに放置されているということのようです。このデータの通りだとすれば、相続を機に半数は空き家になる可能性があるということになります。

ところで、空き家の何が問題かというと、ひとつは空き家のままで放置されると老朽化による倒壊の危険や火災の不安が考えられます。有効活用が難しく、老朽化がかなり進んでいるようなら、建物を取り壊すという手がありますが、更地にしてしまうと固定資産税が上がることに・・・

記事によると、富山市では「居住の実績がなく、住居の用に堪えない建物は、住宅特例の対象から外し、更地と同じ固定資産税を課す」という取り組みをしているようです。ただし固定資産税だけではなく、取り壊し費用の負担も放置につながる要因だと思うので、どの程度の効果があるのかわかりません。

他にも気になったのが、放置されている空き家は相続の手続きが済んでいるのか?ということです。建物の場合は老朽化が進めば相続の手続き以前に取り壊すこともあるのかもしれませんが、土地はそうはいきません。

考えてみれば、誰も住む予定のない実家の名義変更だけに、後回しにしてしまっているケースがかなりありそうですね。

相続の手続きは済ませたものの、なかなか買い手が見つからなくて放置されているのと、相続の手続き自体を放置しているのでは大違いです。いざ売却しよう、他人に貸そうという時にスムーズに事を進められるよう権利関係の放置は避けたいものですね。

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