施設入所からまだ数週間なのに・・・成年後見人の経験からわかった本当に大切な3つのこと

エンディングノートの大切さを僕が痛感しているのは成年後見人としての経験が原体験になっています。

  • 施設入所からまだ数週間なのに・・・
  • 胃ろうをしないということは・・・
  • 自分は大丈夫という勘違い。etc

施設入所からまだ数週間なのに・・・

認知症のAさんは奥様がご病気で突然亡くなってしまい、ひとりでは自宅で暮らすことができなくて、行政の計らいで通所型の施設に特別に泊まれるようにしてもらって生活されていました。

当然週に3日とかでは間に合わないので毎日です。

本来は通っていく施設に毎日泊まってもいいというかなりの特別対応で生活されていました。

とはいうものの。いつまでもそのままというわけにはいきません。

だから僕が成年後見人に選ばれたのは、安心安全に暮らせる施設をAさんに代わって探して入所の契約をするためでした。

すぐに探しはじめましたが、成年後見人といってもあてもコネも特別なものは何もありません。

Aさんは沢山の財産をお持ちではなかったのでご自宅と同じ市内にある特別養護老人ホームすべてに申し込み書を送りました。

申し込みといっても空きが出たら順番に連絡をもらえるという程度のものです。

しばらくしてある施設から「空きがでたのでどうですか?」という連絡がありました。

予想よりもかなり早い連絡だったので、Aさんはついてるなぁと思ってしまうくらいでした。

そこからは早かったですね。

とんとん拍子にいろいろなことが進み、ある施設に入所することができました。

お世話になっていた通所型の施設や行政の関係者もほっとされているのがよくわかりました。

僕はこのために選任されたようなものなのでひとまずは肩の荷をおろした心境でした。


入所されて数週間たった頃。

そろそろ1ヶ月になるなぁ。Aさんのお顔でも見に行こうかな?

そんなことを思っていた矢先でした。施設から突然連絡がありました。

Aさんの容態が急変したのですぐに来てください!

認知症でしたが、急に深刻な事態になるご様子はなかったのであわてて施設に向かいました。

施設に着くと、Aさんはベッドで寝ておられましたが特別理由がないのに、こんなに急激に変わってしまうのか?と僕は驚きを隠せませんでした。

慌てて飛び出してきたので一度事務所に帰ろうと事務所に向かっている途中で携帯がなりました。

Aさんが亡くなったという知らせでした。

この施設に僕が決めなければこんなにも早くAさんが亡くなることはなかったんじゃないか。

僕の仕事はAさんに代わって安心安全に暮らせる施設を探すことだったのにここじゃまったく逆じゃないか。

そんなことを考えました。

そう思う一方で。

僕は家族ではなく第三者の後見人です。まさか自分がAさんの介護することはできません。

申込みをした施設から空きが出たという連絡があればそのまま入所の手続きをすることが適切だし、職務を全うしたという自信はあります。

それでも、もしあの施設に申し込みをしてなければ・・・とやっぱり考えてしまうんです。

それと、こうも思いました。

Aさんは最期のときをどこで過ごしたかったんだろう?

僕がAさんとはじめてお会いしたのは成年後見の申し立てのときなので、そのときにAさんに直接聞くのでは遅いです。

元気なときのAさんの気持ちを知ろうと思えば僕と出会うよりも前にエンディングノートなどに希望を書いておいてもらう。

これしか方法はありません。

成年後見人の仕事を始めるにあたってご自宅で通帳や重要な財産を確認するのですが残念ながらAさんのエンディングノートを見つけることができませんでした。

Aさんが最期のときをどこで過ごしたかったのかはわかりません。

Aさんのことで想像したのは、もし自分の親だったらどうだろう?
ということです。

○自分の手で介護をしてあげれば良かった。
○費用が掛かっても他の施設を探せば良かった。

きっと、もっとああすれば良かったと考えたはずです。

家族だけに選択肢が多い分だけ余計に後悔の気持ちでいっぱいになるのは目に見えています。

Aさんの最期のときを目の当たりにしたことで、エンディングノートを両親に書いて欲しいという思いは切実なものになりました。


胃ろうをしないということは

Bさんは胃ろうをされていました。

胃ろうをすることを決めたのはお子さんです。Bさんが希望していたかどうかはわかりません。

でも胃ろうをしないということは長くは生きられない。

そういうことです。

Bさんが元気なうちに胃ろうをしないという話ができていて、家族もそれに納得している。そうじゃなければ胃ろうをすることになる。

これが現実じゃないでしょうか。

Bさんは娘さんが会いにきても娘だとわかりません。でも胃ろうをされているので長生きされています。

だから娘さんはことある毎に僕に聞いてこられます。こんな状況で長生きできていることは母にとって幸せなんでしょうか?

もちろんBさんが幸せかどうかは僕にはわかりません。

僕の母方の祖母もそうでした。胃ろうをしていた祖母は僕の4人の祖父母の中で一番長生きでした。

Bさんとさほど状況の変わらなかった祖母が幸せだったのかはわかりません。

幸せかどうかなんて本人にしかわかりませんよね。

Bさんや祖母が胃ろうをして長生きしたいと思っていたら、幸せでしょうし、もし胃ろうを望んでいなかったとすれば幸せじゃない。

そう思いませんか?

元気なときに本人がどう考えていたのか確認しようのない今となっては誰にもわかりようがない。

だから娘さんにお母さんが幸せかどうか?問われてもいつも返事に困っていました。

Bさんや祖母のことで思うのはAさんと同じようにエンディングノートを残しておいて欲しかったということ。

なんですが・・・

もしBさんがエンディングノートを残していて、そこに胃ろうをして長生きしたい。もしそう書いてあれば娘さんがどれだけ救われたか。

ただし逆のことが書いてあった場合。

Bさんは胃ろうを望んでいなかったけど、してしまった。これは非常に怖い。怖すぎる。

セミナーで参加者の反応をみていると延命治療をしてほしくないという方が多いので、こっちの結果が起きてしまうことが多いと思います。

だからもうわかりますよね。

エンディングノートを書いておくことが残された家族の負担を軽くすることにつながること。

そして書いておくだけでは足りなくて家族や大切な人とその内容を早めに共有しておかないとまったく意味がない。

良かれと思ってした延命治療を本人が希望していなかったとしたら、それは悲劇ですよね。

でも本人の希望はわかっていても親に一分一秒でも長生きして欲しいと思ってしまうのもまた子供の想いなんですよね。

だから延命治療の希望をエンディングノートにしっかり書いておいたとしても叶うかどうかは本当に難しいのが現実のようです。

関連記事:延命治療はしたくない。でもそこに立ちはだかる3つの壁

 

Bさんがお元気なときは娘さんとの関係は本当にいろいろあったみたいです。娘さんから聞いたお話なのでどこまで真実なのかはわかりませんが。

でも月1回のペースでお二人にお会いしていると本当にそんなことがあったのか?と思ってしまうほどでした。

介護の時間は親子の立場が逆転しているかのようで娘さんのBさんに対する感情が変わって行くのが手にとるようにわかりました。

だから介護の日々というのは親子の過去の関係を修復してくれる不思議な時間だと確信しました。

もう少し早かったらと思うのは僕のエゴでしょうか。


自分は大丈夫。

元気なときはみなさんこう思うんです。

○まだ元気だから大丈夫

○まだ若いから大丈夫

○家族がいるから大丈夫

僕だってそう思います。だから自戒を込めて書いています。

僕が成年後見人に選ばれたとき、Cさんはまだ40代で未成年の娘さんと暮らしていました。

まだお若いのになんで?と思わずにはいられませんでしたが、判断能力が衰えてしまったのは加齢によるものではなくご病気の影響です。

まだまだ若いから自分は大丈夫と思っていても、もしものときは突然やって来るということをまざまざと見せ付けられました。

○まだ元気だから大丈夫

○まだ若いから大丈夫

○家族がいるから大丈夫

Cさんがそう思っていたのかわかりませんが、エンディングノートは当然のように残されてはいませんでした。

奥さんがいるから大丈夫とAさんが思っていたかどうかはわかりません。

でも奥様がご病気で先に亡くならなければAさんの最期のときは違っていたかもしれません。

成年後見人の経験を通して本当に大切なことをたくさん学ばせてもらうことができました。

いつやってくるかわからないもしものときに家族と自分自身が後悔しないために大切なことはこの3つです。

○介護や延命治療の希望はエンディングノートに書いておく

○書いておくだけでなく家族や大切な人にはっきりと伝えておく

○自分は大丈夫と思考停止にならないようにする

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私、相続専門司法書士の伊藤 薫が実際にコクヨのエンディングノートを書いたレポートです(2012年)

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